◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「心肺停止状態もその後回復」って?

2010-08-22 08:52:50 | 気になる言葉、具体例
                                   心肺停止?
 「消火活動に23万人以上動員も火の勢いは衰えず」というテロップを見て、そういえば、このごろ「○○も△△」というテロップをけっこう見るなぁと思っていたのですが、これはどうですか、「一時心肺停止状態もその後回復」、ちょっと変じゃないですか?
 「も」は「するけれども」という意味で、「23万人以上動員も火の勢いは衰えず」は「23万人以上動員したけれども火の勢いは衰えない」という意味になります。ちょっと古いというか、硬いというか、一般の人はあまり使わない表現ですが、「状態も」は違和感があります。「一時心肺停止もその後回復」もしくは「一時心肺停止状態に陥るもその後回復」ではないでしょうかね。
 小倉智昭は「押しも押されもせぬ」を「押しも押されぬ」とはっきり言っているので、実は小倉智昭が感染源だったのだと今は考えていますが、それで、ふと「一時心肺停止状態も」が頭に浮かびました。ひょっとして、「押しも押されぬ」が広まった結果としてこういう言い方が頻出するようになったのではないでしょうか。
 「押しも押されもせぬ」の「も」は副助詞で、「押し」「も」「押され」「も」と並べています。つまり、押すことも押されることもないということで、だからこそ「だれもが認めている」という意味になるわけです。一方、「押しも押されぬ」の「も」は接続助詞です。です、というより、と言うほかない。( ̄~ ̄)もちろん、日本語に対していいかげんな小倉本人が助詞や意味の違いなど意識するはずもありませんから、本人の知らないところで誤りが定着して変化したのですよ。
 接続助詞の「も」は、「ても」「するけれども」という意味で、「押し」「も」「押されぬ」、押しても(押すことはあっても)押されない、押すけれども押されない、つまり、「押さない」が「押す」に変わったわけです。本来の「押しも押されもせぬ」が堂々たるナンバーワンだとしたら、「押しも押されぬ」は、先手必勝、押される前に押して敵を倒し、ぎりぎりその地位を守っている、近づくと押されるから危なくて近づけない、孤独なナンバーワンです。
 「押しも押されぬ」がちょいちょい聞こえてきて、俳優もナレーターもテロップもみんな「押しも押されぬ」になって、とにかく「も」を付けて「○○も△△」と書けば「○○、しかし、△△」という意味になるという感覚が広まり、「動員も」からさらに進んで「状態も」といった使い方までされるようになった、と私は考えます。

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