かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ライブドア・ショックがもたらしたもの(続)

2006-02-28 20:02:10 | 社会・経済

1ヶ月前にこの題名で問題点を整理して以来、事件を構成する基本事実の変化は殆ど無い。その後の出来事は脚注みたいなことばかりで本質に迫るものはない。しかし脚注であっても私には非常に日本的な現象として興味を引かれる事があるので論評したい。

1)心の旅路に出た日本メディア

偽メール騒ぎにより民主党は痛烈なダメージを受け大騒ぎは依然進行中だが、基本的には1ヶ月経っても事態はそれ程変化していない。一般のメディアの論調は底流で何故こういうことが起こったかを仕組みや法整備の問題として徹底的に検証するのではなく、何故こういうことを起こしたのか心の問題・自分探しの方向に向かっていると感じる。

韓国の幹細胞論文捏造スキャンダル発覚時のメディアと国民の反応と多少似てなくもない。こういう自省的なアプローチが日本人も好きである。かつての「一億層ざんげ」が良い例である。儒教の影響を受けた東アジア諸国に共通して精神を上位におく民族の特徴かも知れない。そういう私もこうやって日本人論を展開している。

この内側に向かう日本人の特性がルール作りを遅らせ不完全なものにする要因になると私は心配する。エンロン、ワールドコム事件後の米国は詳細かつ徹底してシステムの問題を論じ続け、いい加減な法改正は許さないというコンセンサスが出来上がった。今回日本も「全員反省して清く正しく生きましょう」で終わってはいけない。

キーワードは「信頼」である。市場とそれに参加するプレイヤーは誰に対しても公平かつ透明であることが信頼をえて証券が売買される大前提である。米国が法改正を短期間で徹底してやったのは、市場は世界からの投資で成り立っており絶対的な信頼を保てないと崩壊すると考えたからだ。日本市場も海外からの投資の比率が高まり、外人売りが続くと直ちに市場は低落するなど米国と同じ動機付けが十分出来ているはずなのだが。

メディアが揃って心の旅路に出かけるのはマスターベーションのような極めて不健康なものを感じる。ある種の職場放棄とさえ私は思う。エンロン事件後の報道・立法行政・業界の動きを時系列で追って日米のあり様を比較すると非常に良い研究テーマになると思う。

2)手口は陳腐な錬金術だった

今後捜査がどう展開するか分からないが、今までの報道を見る限り指摘されている罪状はIT企業特有なものでなくエンロンが使った飛ばし等の手口による粉飾決算である。ITという化粧をしているけど手口は創造的(?)ではなかった。構造改革の副産物として生まれた極端な拝金主義的な見方もあるが、この手の詐欺行為はいつの世にもあった。法令が整備された80年代以前に罪に問われず短期間に財を成す手口であった。

3)団塊世代と団塊ジュニアが責められた

 一連の不祥事を起こしているのは団塊ジュニアで彼らには「公」の概念が希薄である、親である団塊世代が戦争に追いやった「公」を悪、「個」を善と教えた戦後教育の影響を受け、団塊ジュニアは引継いで「私利」に最大の価値をおく世代になったとの寺島実氏のコメントが目を引いた。(おいおい俺たちのせいかよ、しかし、思い当たる節が無いでもない。)私は子供の頃から「国の為何々する」というのは憚られる雰囲気があり、調査では外国に比べ常に公に貢献する比率が低かったと記憶している。かといって「宇宙船地球号」的世界観もなかった。しかし、それが原因と決め付けるのは一方的に過ぎるとも思う。

4)市場の乱高下は未熟な個人投資家の狼狽か

 このところ外国投資が売り越に転じ、個人投資家が方向感を失い右往左往していると専門家は批判している。企業業績や将来性とは関係なくリアルタイムの相場変動だけに注目した中小株の短期取引が原因と報じられている。日本の個人投資家は同じニュースを見て同じように反応しがちで振れが大きくなるとも言われている。一般論として、毅然として自分の考えを貫く人達がある比率でいるコミュニティはトータルとして落ち着き健全になるという説が、均質的な日本の新しい個人投資家には当てはまらない、まだ未成熟だということだろう。私には説得性のある理屈のように聞こえる。

5)個人投資家の広がり

 ライブドアの株を買った人達はごく近い身の回りの親族や友人にもいることがわかり驚いた。強制捜査の3日前に売ってしっかり利益確定した人、売り時を見失い未だに株券を抱えたままの人、様々である。共通していたのはライブドアの名前と度重なる株式分割で手頃な価格で買えたという事で、何れも小口株で大損してないのが救いである。ゼロ金利のもと銀行預金に満足していない余剰資金のはけ口として株式投資人口が着実に増えている事を実感した。

6)グレイゾーンへの広がりは特捜部次第

民主党の堀江メール追及は実にお粗末な結果に終りつつある。先々週までテレビは野口社長自殺の謎、闇の社会や政治家への資金還流の可能性について連日報じていたが、民主党の自爆後、報道機関の腰が引けて来たように感じる。噂だけで報道する危険を感じて、情報提供者も含め一歩後退したようだ。結局のところ今後資金洗浄・還流・脱税・インサイダー取引等の巨悪を表舞台に引き出せるかどうかは特捜部の捜査にかかっている。ディプスロート風に言うとフォロウ・ザ・マネー(金の流れを追え)だろう。■

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする