昨日実施された衆院山口県2区の補欠選挙は民主党候補の平岡氏が圧勝した。お年寄りが岸信介・佐藤栄作の二人の首相を生んだ保守王国の地盤を崩したという。争点の道路政策、消えた年金記録に加え、後期高齢者医療制度が決定的な役割を果たしたという。
読売新聞によると山口2区は全国でも有権者に占める高齢者の割合が高く、同社の出口調査では有権者が最も重視すると答えた政策は「年金・医療」だったという。新聞各社は保守王国のお年寄りが保守離れして民主党を勝利させたと伝えている。
私も高年齢の有権者の民意が選挙結果を左右したと思う。だが何か違和感が残る。
お年寄りが大勢を決め、それに迎合する政治家やメディアがいる国に未来があるだろうかと思う。TV報道は高齢者の苦情を大々的に取り上げているが、全体像が見えない。急速に増加する高齢者の医療費を国家としてどう対応するか、限られた原資の中で優先順位を決めて誰が負担するか全国民レベルで考えるという姿勢が感じられない。
連日報じられている米国大統領選では若者が積極的に参加し、「変化」を合言葉に新しいトレンドを作り出している。若者が政治を変える原動力になっている。一方日本では高齢者が政治を変えている。若者が立ち上がって高齢者を含む政治を変えようというならまだ救いがあるのだが。
もう一つの違和感は評論家・新聞・自治体首長・与野党等の言う事と、世論調査や選挙結果が示す民意にズレを感じることだ。
最も典型的なのが、より生活者に近いはずの自治体首長が強く主張する道路暫定税維持が、世論調査や選挙結果が示す民意では支持されていないことだ。「中央から地方へ」という声があるが、自治体が民意を吸収する仕組みがあるのか重要な問題提起がされたと認識すべきだ。
福田首相が追い込まれて日銀総裁候補や道路特定財源の一般財源化を打ち出したとき主要新聞は大手を広げて支持し、民主党が協議に入るべきと説いた。実は私も一般財源化提案に乗るべきと主張した。だが、今のところ民意はそれほど明確でもないように見える。メディアを含めた我国のメインストリームに対する信頼感が傷ついている為ではないかと感じる。
もっと単純な理由かもしれない。福田首相にビジョンが感じられず、問題が起こると皮肉屋で他人事のような発言をし、官僚の作文(的)説明で事態が悪化したころで踏み込んだ新提案をするが、最早手遅れで評価されないという悪循環を繰り返すため民意が「じれている」のかもしれない。■