このところブログネタ欠乏症の私が、突如脈絡も無く思いついた「秘境」ネタを一席。
近年「秘境」という言葉を聞いても、何故そこが秘境なのか素朴に疑問に思うようになった。私にとって秘境とは、何か神秘的で人里から遠く離れ、そこに近づいていく細道を辿っていくに連れドキドキ感が増してくるようなところだ。子供の頃読んだ不老長寿の国シャングリラから始まり、カンボジアのアンコールワット、中米のジャングルにある古代文化とか。そこにはロマンがある。
ところが、世界中の秘境という秘境にテレビカメラが入り、その映像が繰り返しお茶の間に流れるものだから、最早秘境とは言えなくなった。テレビカメラはあらゆる秘境を丸裸にして見世物にし、秘境に住む人もそれを受け入れたように思う。
秘境は全て観光ビジネスに取って代わった。郷里の四国にも平家の落人の子孫が住むという祖谷渓谷には、いまや古民家に外国人が住みそれを目当てに観光客が来るそうだ。数年前行った時、予想以上に観光化しているのを見てこれが秘境かと思ったものだ。
今、秘境という言葉は比喩的に使われる。娘夫婦が住んでいる世田谷でも多摩川沿いの辺りはまだ実際に作物を作っている農地が残っており、世田谷の秘境と呼ばれていると数年前に聞いた。初めて聞いた時うまいこと言うもんだと思ったが、今では農地がどんどん潰され秘境らしくなくなってきた。
殆ど人に出合わない細道を心ときめきながら歩くという点では、私の秘境は米国ワシントン州にあるONP(オリンピック国立公園)だ。広大な公園で大抵のトレイルは半日歩いても出会うのは数人だけ、しかし例えばある峠を越えると目の前に全く違う風景が広がり川沿いの林の中にポツポツとテントが見えた。
国立公園とは言っても日本では全くありえないことだし、米国でも人気のヨセミテ国立公園はそうは行かない。20世紀初めは隠れた避暑地だったそうだが、今では夏場のハイシーズンとなると1年前でもコテージ予約は難しい。駐車スポットを確保できるかどうかで頭の中が一杯になる。今でも行ってみたいのは勿論ONPだ。
実は我が家にも隠された秘境がある。それは冷蔵庫の中とか収納の奥だ。最近、冷蔵庫の奥を探ると賞味期限をとっくに過ぎカビが生えた缶詰の残りが発見され、お風呂や洗面所の収納スペースを覗くとあちこちから石鹸や洗剤類、歯磨きが発見される。その時は整理するのだけど、不思議なことに半年経てば必ず秘境として復活する。何故かドキドキするではないか。■