妹が母の見舞いで大阪から来てくれた。病院に立ち寄った後、家主のいなくなった実家に向かった。私と妹だけの実家というのは、多分初めてのことだろう。ひとしきり母の病状について話し合った後、話題は自然と政権交代後の政治に移った。
彼女は最近の鳩山内閣の迷走振りを嘆いた。血のつながった妹とはいえ、私と同じ懸念を共有しているのを聞いて、私は膝を打つ思いだった。特に印象的だったのは掲題の問い掛けだった。これほど新政権の問題を的確に表現した言葉はないと思った。
「沖縄は大事だけど、日本は大事じゃないのか」
今、国民の間に鳩山内閣に対する漠然とした不安が急速に広がっているのは、この質問に対して明確なポリシーが返って来ないからだ。しかもこの問いかけは応用が利く、普遍性を持っている。沖縄の代わりに置き換える言葉は、民主党の新政策の中にいくつもある。
この1週間の新聞記事を読めば、外交と安全保障、経済と雇用など、多くの分野で同じ構図の問題が提起されている。既に多くの日本企業の海外生産への移行のように、一旦出てしまえば元に戻らない変化が音を立てて起こり始めている。派遣禁止以前に雇用が喪失する恐れがある。
資金繰りに困った弱い企業だけ救済すれば、日本経済が回復し世界と競争できるとでも勘違いしている連中の声ばかりが聞こえる。韓国ハイテック企業が何故日本の家電メーカーを抜きトップに立ったのか知らないようだ。日本の代表的な会社に勤めた経験も役に立たないらしい。
大元に個別の問題を全体像の中で位置づけて考えられない鳩山政権の弱点がある。労組とか社会党の遺伝子が混じった政権の成り立ちとか、首相自身の問題かもしれない。理由はともあれ、これでは前政権を非難した縦割り政治の形を変え、新たな支持団体の権益擁護になっただけだ。
参院での多数派を構成する為の妥協で身動きが取れないのも事実だろう。それに対しても上記の質問は極めて本質を突いていると思う。今、その判断をせず問題先送りしたのでは、果たして日本を率いるリーダーと言えるのか。様子見では済まない国民の比率は着実に増えているように私には感じる。■