野 |
田首相の意表をついた衆院解散以来、マスコミ各社の報道は総選挙に取り組む与野党と新党の動向に集中し、ある種の躁状態に入ったといっても良い。それまで大騒ぎした沖縄の米兵暴行事件とその後の反対運動は消えてなくなり、併せて争点になったオスプレイ配備や普天間基地移設問題も棚上げになったかのようだ。
気になるのは沖縄の基地問題は選挙の大きな争点になってないことだ。沖縄の人達が怒り基地反対デモが盛り上がりを見せ、自治体の議会や仲井真知事が再発防止、日米地位協定の改定、オスプレイの沖縄以外への再配備などを要求し、その熱気がテレビ画面から伝わってきた。
なのにあの日を境に全く見られなくなった。無論、解決した訳ではない。マスコミ各社の優先順位が変わったということだ。しかし、何故選挙の争点にすらならないのか。各党はどう考えているのか、国民はどう考えているのか気になるが、有力政治家の誰一人として声を上げない。
少なくとも次の政権に近いと予想される民自公と維新は、安全保障と沖縄基地の役割について方針を打ち出すべきだと考える。何も無いということは、色々問題はあるが沖縄基地問題は小異であり議論されるべき大事ではないということなのだろうか。本音は何を言ってもマイナスにしかならないテーマだと見ているからだろう。一部(地域)と全体(日本)の利害が相反する問題だ。
沖縄基地を巡る問題であれほど大騒ぎしたマスコミが国民の判断を問う総選挙でダンマリを貫くのは、政界及びマスコミ間で暗黙の合意があるということか、私は理解に苦しむ。或いは国民の間にも沖縄基地問題は同情するが基本として維持すべきというコンセンサスが意識下にあり、それを反映した結果と私は疑う。
汚 |
染されたガレキの中間貯蔵施設を提案され感情的に反発した双葉町を、私は沖縄の基地問題と同じような悩ましい性格の問題を抱えているように感じる。異論もあるが、沖縄の基地は我国の安全保障のために必要だが沖縄の人達は出て行けという。ガレキ処理も福島県が震災復興するため絶対必要だが、政府の提案に双葉町長は強く反発し福島県知事も同調した。
放射能に汚染されたガレキは県外には持ち出せない、県内のどこかが引き受ける以外に手段はないのは明確だ。強い反発を受け、政府は無理押しをせず一旦説得を諦め沈静化を待つ積りのようだ。結果は先送り、ガレキ処理の目処がたたず早期復興の足枷になると憂慮される。ほおって置けばそのうち地元は折れるとの読みがあるのかも知れない。
本来、福島県知事は復興推進の為に説得する側に立つべきだが、昨今の何でも国の責任にして住民と同じ立場に立つ道を選んだと私は感じる。100点の取れない難題は、その方が保身の役に立つ。だが、汚染されてないガレキの受入でさえ冷酷に拒否する全国の自治体が続出する中で、福島県の汚染ガレキ処理は同情されるけど絶対に誰も助けてくれない。国民は非情だ。
望 |
んだわけではないが結果的に地域とか一部の反対が全体の足を引っ張ることになる問題は、放射能汚染ガレキ処理や沖縄の基地問題ほど全国的ではなくとも、規模の大小はあっても沢山ある。昨今、一部の意思が全体の意思決定を捻じ曲げたり先送りする傾向が強い。話は違うが、この問題先送り時代に信ずるところを断行する橋下氏や石原氏が時に新鮮に感じる。
沖縄の米兵暴行問題に対する自治体や県知事の反発に、我国の安全保障を考えろというのは無理な話だ。だが、私には二重基準があるように感じる。まず地域のためという発想は理解できるし、米軍に対して改善の要求も理解できる。自県のことしか考えないのはしょうがない。だが、出て行けとなれば話は違う。
県民の安全保障すら守れない事態が目の前に起こっている。尖閣列島の領有を巡り中国が漁民を威嚇する事態について、誰も何も言わないのは何故か理解に苦しむ。彼等も県民で生活が脅かされているのだ。(沖縄の誰かが言ってるけど、メディアが無視しているのかもしれない。)
もう一つ私には気になることがある。先日沖縄県の人口比犯罪件数が国内でも突出して高く、基地にいる米兵の犯罪率よりかなり多いと聞いた。念のため沖縄県警の統計を調べると今年1‐9月の刑事犯は8413件で、子供や高齢者を除く有意数に換算すると米兵の4-5倍犯罪が多い。
基地の米兵には特別高い倫理基準が求めてもおかしくないと思う。だが、被害にあった沖縄県民は犯人が米兵か県民かは関係ない。被害者や家族はそう思うはずだ。犯人が県民だから我慢しろとはならない。自治体や県知事は県内の犯罪率が高いことを詫びて改善を約束する、せめて米兵の犯罪率並に改善すると言うべきだ。それとこれでは話は別だ、しかし言葉の信頼に関る。■