高校野球の地区予選が終盤に入り、連日甲子園出場校が報じられている。ここ愛媛県は自称「野球王国」と称し熱心な高校野球ファンが多い。私が若い頃は愛媛から出場した高校は殆ど例外なく甲子園で活躍した。松山商業を始め西條、今治西、宇和島東とか最近は済美などいわゆる強豪と呼ばれる高校が沢山あった。野球小僧の私も熱心に応援した。
だが、近年は甲子園に出ても1回戦か2回戦で敗退することが多くなり、「野球王国」というには恥ずかしい成績が続いている。甲子園での通算成績はいまだに高い勝率をキープしているそうだが、過去の成績が貢献している為で近年の成績を反映している訳ではない。今や「野球王国」というのは地元テレビだけではないかと思う。しかし、これが異変という訳ではない。
今年の愛媛県地区大会で異変が起こった。シード校が全部負けてしまい、今日の決勝戦はおよそ誰も予想しなかった松山東対小松という組み合わせになった。松山東は県内きっての進学の名門校、小松は小さな町の公立校で野球で知られている伝統校ではない。この異色の組み合わせが何故起こったのだろうか。
今大会は春の甲子園に出た今治西が第1シード、春の大会の地区優勝校の西條が第2シードだった。他の2校を含め4つのシード校と、150kmの球を投げる超高校投手安楽を擁する済美も決勝に勝ち残れなかった。そういう時は戦いながら大きく成長する無名の傑出した投手がいるはずと昼食をとりながら暫く決勝戦の中継を見た。
ところが驚くなかれ両校の投手はストレートの速度が夫々120km台と110km台だった。目を疑った。この程度の球威ではいくら投球術が優れていても勝ち残るのは難しい、何か秘密があるのではと思ったが中継を見ても私には分からなかった。松山東の練習量が限られているらしく、殆どの選手は高校野球選手としては筋肉量が少なく体の線が細かった。良く決勝に残ったと思った。
試合は見た目通り良く鍛えられた体つきの選手が多い小松が勝ったらしい。だが小松も甲子園で1勝を挙げるのは難しいと思った。何試合も見た訳でもないのに思いつきの印象で申し訳ないが、何だか愛媛県の高校野球が小粒でひ弱になった感じを受けた。野球王国どころか全国クラスにも届いていないと私は思った。これでは勝てないと。
愛媛県の高校野球が全盛期時代は、特別才能に溢れたスーパースターがいなくとも練習量でどこにも負けず徹底的に鍛えられたディフェンスで守り勝つ印象があった。相手のミスに付け込み鉄壁の守備で競り勝つ、そんな印象があった。それが勝率の高いチーム戦略で、全国レベルでも通用するやり方だった。
だが、今はプロですぐ活躍が期待出来るような桁違いの凄い選手がいる。彼を中心に鍛えられたが選手いるチーム、これが全国レベルで勝っていく強いチームの型ではないだろうか。一生懸命やっている選手や関係者には申し訳ないが、我が地区大会の決勝戦はそのレベルに達してないことを示したように思う。残念ながらそういうチームがいなかったということだ。■