かぶれの世界(新)

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周回遅れの読書録15(3)

2015-05-08 21:31:13 | 本と雑誌
お勧めは「世界はシステムで動く」(DHメドウズ)で、図書館に出るのを待ちきれず買って読むことにした。この本は名著「成長の限界」の著者で、システム・ダイナミクス派の流れをくむMIT教授からジャーナリストに転じ、有名な「世界がもし100人の村だったら」を著した凄い人だ。出来事の表面を見て一喜一憂せず、全体像を見てその構造(システム)を考え抜けと説く。情報に溢れた現代政治や社会の本質を理解する手掛かりを与えてくれる。是非とも一読を勧めたい。

次に日本のマスコミに関わる3冊の読書を勧めたい。東日本大震災の現場を描いた「河北新報の一番長い日」(河北新報)は表現はつたないが、その場に立ち会った生々しい状況が浮かんでくる。一方、「メルトダウン」(大鹿靖昭)は福島第一原発事故の詳細を丹念に追った良質のNFだが、所々に朝日新聞的決めつけ(私には悪臭)が感じられる。この2冊には異なる価値がある。

三番目の「マスゴミ崩壊」(三橋貴明)は大マスコミの捏造記事が生まれる構造をその独占的体質にあると指摘、今後はインターネットが打ち破ると予測する。書名のどぎつさに反して、この本の価値はマスコミが絶対に触れたくない都合の悪い真実を伝えていることだ。以上の3冊を読み比べると、今日の日本のマスコミが直面する構造的な問題を理解するヒントが得られると思う。
                                          
(2.0-)2 世界国債暴落 2010 高田創他 東洋経済新報 ギリシャ問題が勃発し日本政府の借金がGDPの2倍の1000兆円にもなるタイミングで、国債に関係する情報を整理した謂わば「あるある」本である。著者がみずほ証券の調査部所属でよくあるオオカミ少年的なものではないが、真面目な教科書的内容で面白くない。この後実行された日銀の異次元の量的緩和をどう説明するか。

(2.0+)2 河北新報の一番長い日 2011 河北新報 文芸春秋 大震災直後からローカル新聞の一線の記者から編集部門、印刷、配達、それらを支えた炊き出し部隊などのロジスティックスまで一丸となって各地の新聞社の協力を得て途切れさせることなく新聞を届けて行った様を描いた感動のNF。大新聞社発の理路整然とした物語ではないが、全国紙が原発中心の報道に傾斜して行ったのと対照的に被災者に寄り添った報道姿勢に感銘を受ける。

(2.5)2 メルトダウン 大鹿靖昭 2012 講談社 100人以上の関係者を取材して福島第一原発事故の詳細を半年間にわたって描いたNF。我が国では珍しいウッドワード風のインタビューから事実を追求するスタイルで特に前半部分は当時の恐怖が鮮明に甦って来る。後半は政治的な内容で朝日新聞的決めつけが感じられるが、原発事故全体をよく把握した佳作である。

(2.5+)2 マスゴミ崩壊 三橋貴明 2009 扶桑社 著者は日本の新聞とテレビが何故捏造報道を繰り返すか構造的な問題があると主張する。新聞は独禁法の特例で販売店を経由した独占販売が、テレビは極めて安価な使用料で電波を独占する構造が、ユーザーからのフィードバックを無視して収益を得る構造を許している、と。しかし、インターネット時代になりこの独占構造が崩れつつあると鋭く指摘した佳作。

(3.0)新 世界はシステムで動く DHメドウズ 2015 英治出版 世の中のあらゆる出来事をシステム的に捉えて自己強化型とバランス型フィードバックの2つの基本形にモデル化し、システムの特性やシステム的な考え方・あるべき取り組みを分かり易く解説したもの。日本の政治経済やマスコミが得意とは言えない合理的な思考法を提案するもの。だが、定量化が難しい感情とか愛とかを無視するなと言いながらどう扱うか書かれてない。名著だと思う。
 
田舎に来て3週間になるが、本を開いても長続きせず1冊読んだだけ。早く紹介したい本を見つけたので、今年から不定期にした読書録を投稿した。若い頃は5月の連休の読書の為5冊くらい本を準備して読んだのが嘘みたいだ。どうにも集中出来ない。頭の片隅に雑草に覆われた庭や畑が浮かんできて、その手入れの方が気になるなんて、おかしい。■

凡例:
 (0):読む価値なし (1)読んで益は無い (2):読んで損は無い
 (3):お勧め、得るもの多い  (4):名著です  (5):人生観が変わった 
 0.5:中間の評価、例えば1.5は<暇なら読んだら良い>と<読んで損はない>の中間
 -/+:数値で表した評価より「やや低い」、又は「やや高い」評価です。

2: 古本屋で手に入れた本
L: 図書館で借りた本
新: 「定価」で買った本
コメント
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