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パリは燃えているか(続)

2005-11-11 11:37:19 | 国際・政治
その後の報道を見るとフランスの暴動は「文明の衝突」よりも若者の「貧困と差別」への反逆の様相を示していることが明らかになってきた。私は最初世界で多発しているイスラム過激派のテロ行為とつなげて考えたが、少なくとも今フランスで起こっていることは、それとは明らかに異なる。それは寧ろ米国で起きた黒人若者の暴動と非常に似ている。

この暴動は西欧型福祉社会が堅固で既得権益化し若者、特に移民2-3世の若者がその恩恵を受けられず不満が爆発した理解するべきであろう。既得権益とはフランスの労働者が長年かけて獲得した週35時間労働・最低賃金・6週間にも及ぶ休暇から始まり手厚い社会保険システムであるが、グローバリゼーションの展開とEU拡大により状況は一変した。

これら高福祉システムの下方硬直性はフランス企業の新規雇用をためらわせた。フランス全体の失業率は9%と十分高いが、若者だけでは20%、更に移民社会の若者だけを取ると約半数が失業しているという。移民社会の2-3世はフランスの高い理想「自由・平等・博愛」教育を受け、一方でどうにもならないこの現実とのギャップにさらされ深い失望感を持っていたのが主たる暴動の背景である。

これがフランスの暴動はイスラム過激派と結び付けるより90年頃まで起こった米国の黒人暴動に近いという(Elisabeth Eaves氏は92年のロスアンジェルス暴動との類似を指摘)根拠となっている。成長している時に導入されたシステムが既得権益になり次の世代と共有出来ず世代間の争いになった例ではなかろうか。それに後から民族や人種の要素が関わった。

根本解決はフランス式既得権益を移民だけでなく若者世代とどう共有していくかという視点で考えるべきだろう。フランスの誇るべき高福祉社会に手をつけない限り根本解決は無いだろう。例えば最低賃金を下げ雇用調整の制約を緩やかにし企業の新規雇用を促すことである。しかし政治家はこんな人気のない政策を取れるだろうか。しかし急がないといけない、間違えても人種的・宗教的な要素を持ち込みテロを誘発する羽目にならないことを祈る。■


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