――続きーー。焼きあがったサンマが、大き目の皿の上で、じゅわじゅわしゅわとしている。「尾の方に、切れ目があるので、そこをつまむと、はがれるよぉ」と、「大根おろしには、醤油は、ちょこっとでいいよぉ」と伝えて、「残りもさばくから、ゆつくりと、おあんがなさい」と。残りをさばく合間に、声もかけずに、ちらっとみると、黙々と食べていたという。食べ終わるころに、「あそこの魚屋さんのは、生きがいいので、美味しいでしょう」と。男性は、伏し目がちに、「ありがとうございました」。「塩と味噌で、二尾ずつに、まぶしてあります」と。男性の目は、涙が潤んでいたので、世間話しなく、「生きのいいうちに」と伝え、男性は、「有難うございました」と、礼も、そこそこに席を立ち、玄関先で、見送った。男性は、十数歩歩んで、振り返り、深々と、頭を下げて、買い物袋を提げていた手で、涙を拭いていたようだと。近所に住んでいても「隣は何をする人ぞ」でも、ちょっとは、よかったかなぁと、話していた。福島民報の記事とは、違ったことでした。
画像は、福島民報からです。秋刀魚そのものの事ではありません。落語の「目黒のサンマ」的な、女性から聞いた話。とあるJRの無人駅近くに住んでいる女性が、そろそろ孫たちが、学校から帰るころだなぁと、玄関先から、帰り道を見ていた。こども等のはしゃぐ声が聞こえ無いなぁと、振り返ると、近所に、一人住む高齢の男性が、買い物袋を両手に、近かずいてきた。「あらっ、買い物ですかぁ」と。見ると片方の買い物袋から、サンマの尾が、はみ出していた。「魚屋さんで、さばいて、貰らわなかつたのぉ」と、聞くと、「自分でやる」と、強がったという。女性が「さばいてあげる」と。男性は、遠慮がちに「お願いします」と。玄関に招き入れ、「一尾、焼いて食べてみるげぇ」というと、男性は、「お願いします」。「ちょっと、あがって、こたつに足をいれて」と「茶をどうぞ」と、差し出しだした。まず一尾を、手早くさばき、租塩をふり、ガスコンロの直火で、焼き始めた。換気扇を回しても、焼き煙りと、臭いは、部屋に流れてきた。大根をすりおろして、小器に入れ、醤油と割りばしを、卓上に置き、「すぐに焼けるよぉ」と。家事が手慣れているので、一尾のさばきは早い。――続くーー