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会社でうつ 休むと元気ハツラツな人―「仮面を脱げない」新しい「心の病」がある。 海原 純子 文藝春秋
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ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
『会社でうつ 休むと元気ハツラツな人―「仮面を脱げない」新しい「心の病」がある。』(海原純子著、文藝春秋社、1,000円+税)を読みました。
「憂鬱な気分があり、興味が消失して何事も楽しめない感じが2年以上続いている状態」の気分変調症(ディスチミア)について実に分かりやすく書かれた本です。
「会社でうつ 休むと元気ハツラツな人」という本のタイトルは、気分変調症(ディスチミア)のことを実に的確に表現しています。あなたの周囲にもこのタイプの若者が存在しませんか?
いやゆる「ディスチミア型のうつ」は、うつ状態が2週間以上続き、自責の念の強い「メランコリー親和型うつ病」と対比して、他責的で、腰痛などの身体化障害などを伴うこともあり、加えて薬もよく効きません。
心療内科医の著者は、そんな「会社でうつ、休むと元気ハツラツな人」=気分変調症(ディスチミア)について次のように捉えています。
私は、専門的知識よりも、今回、「仮面」という言葉と自己コミュニケーション障害という観点から、この病気の特徴を伝えたいと思っています。
著者は、ディスチミアになりがちな人には、その親に過保護傾向があり、子ども自身に自らに向き合う=自己コミュニケーションを行う機会を奪っている、と警告します。
過保護に育った若者には、次の2つの傾向があります。
1.「打たれ経験の乏しさ」が存在するため、「打たれ弱い」し、ちょとのことでめげる。
2.遊んでいるときや旅行に出かけるときは機嫌がよく元気なのに、仕事になると気力がなく、すぐに疲れてさぼる。
こう読んでいると、身近に「いる、いる」という感じがしませんか?
著者は、ディスチミアに限定せず、豊富な症例をもとに「仮面を脱げない病」「勝ち組という病」の実態をあらわにします。
後は、読んでのお楽しみです。
<参考> 気分変調性障害(気分変調症) のDSMーⅣによる診断基準は以下のとおりです(一部省略部分あり)。
A 抑うつ気分がほとんど1日中存在し、それのない日よりもある日のほうが多く、患者自身の言明または他者の観察によって示され、少なくとも2年間続いている。
B 抑うつの間、以下のうち2つ、またはそれ以上が存在すること。
1 食欲減退、または過食
2 不眠、または過眠
3 気力の低下、または疲労
4 自尊心の低下
5 集中力の低下、または決断困難
6 絶望感
C この障害の2年の期間中(小児や青年については1年間)、1度に2ヶ月を超える期間、基準AおよびBの症状がなかったことはない。
D この障害の最初の2年間は(小児や青年については1年間)、大うつ病エピソードが存在したことがない。
E 躁病エピソード、混合性エピソード、あるいは軽躁病エピソードがあったことはなく、また気分循環性障害の基準を満たしたこともない。
F 障害は、統合失調症や妄想性障害のような慢性の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない。
G 症状は物質(例えば、乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用や、一般身体疾患(例えば、甲状腺機能低下症)によるものではない。
H 症状は臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
<お目安めコーナー> 朝顔