ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
『がんに負けない心理学―臨床心理士が教える心の応急手当てとケアの方法』(和田のりあき著、PHP研究所、1,200円+税)のお勧めです。
この本は、「はじめに」の前にいきなりこんなふうに始まります。
がんの宣告を受けたばかりのあなたに。
大丈夫です。
宣告を受けたからといって、今日明日で死んでしまうわけではありません。
これから、やれることがたくさんあります。
そのことをお教えします。大丈夫です。
がんの宣告を受けて「死の恐怖」の中にいるあなたに。
元気を失ってしまうことが、もったいないのです。
「がん」で死ぬのではありません。がんで「弱ったら」死ぬのです。
がんを抱えて長生きしている人は、たくさんいます。
「がん」でも元気であれば大丈夫です。
がんの宣告を受けたばかりの家族の方に。
大丈夫です。
これから先のことが大切です。
あなたの協力があれば、とっておきの心の抗がん剤ができます。
それをこの本でお教えします。大丈夫です。
最初は、家族と1回泣いて、
次に、親友と3回笑って、
そして、自分の心を向き合いましょう。
そうすれば、がんになったことの「見方」や「考え方」ができます。
それが、自分が納得できる答えです。
そこから、この危機的状況を脱するための第一歩を踏み出しましょう。
動けば元気を取り戻せます。
この本には、あなたをこれ以上不安にさせるような内容はありません。
さあ、ゆっくりと、ページをめくってみてください。
私は、半日人間ドックで異常が指摘された2つの診断を受けるために行っていた社会保険中央病院の待合室でこの本を読み始めました。
まずは、本人が呼ばれ、それから「ご家族の方」と呼ばれるのを見ると、「がんの告知かな?」と、他の人を心配している私でもありました。
私も危ないのです。「肺の一部に気になるところがある」と指摘され、以前レントゲンを撮っていた近所の病院から2枚のレントゲンを借りてきて、3年分を比較したレントゲンから「肺がんの疑い」から進んで「肺がんの診断」を恐れる気持ちがありました。
私は、この本を持ってきたことを少々悔やんでいました。
何しろ胃がんの第4ステージを宣告された張本人が書いた本です。
ところが、読み進めていくうちにだんだん勇気が湧いてきました。幸い肺には問題がなかったことも影響しました。
胃がんを宣告された著者は、ドクターの説明を聞いているうちに次の3つの意識状態がいたそうです。
1.「強気な自分」
「しっかりしろ。取り乱すな。冷静に受け止めるのだ」
2.「弱気な自分」
「なんで、おれがこんな目にあうの。うそだろう。もう死んでしまうの。恐い。助けてくれよぉ」
3.「冷静な自分」
「おいおい、こういうのってあり? 『やっちまったなあ。男は黙って胃がんだ』ってギャグにして子どもの伝えると、受けるかな」
著者は、この「強気」「弱気」「冷静」の3つの自分のことを次のように書いています。
「3人寄れば文殊の知恵」といいます。自分という存在は、弱いだけの自分では、決してありません。「弱い自分」「強気の自分」「冷静な自分」― 急場をしのぐために、この3人が結束してチームを結成するのです。いわば、チームワークでこの危機を乗り切るわけです。
この本は、がんに直面した本人、家族だけの本ではなさそうで、私たちが生きていると出合う「不測事態」への対処法としても役に立つ本です。
ところで、この本は、PHP研究所 文芸出版部 副編集長の若林邦秀さん(ヒューマン・ギルド会員)が編集者としてプロデュースしたもので、この本のことは、ヒューマン・ギルドのニュースレターでも「編集者による本の紹介」として投稿しておられたので、ヒューマン・ギルドの会員の方は、ご存知でしょう。
強くお勧めします。
<お目休めコーナー> 我が家の片隅で①