○江戸東京博物館 特集展示『オイレンブルク伯爵のみた幕末の江戸』(2011年5月1日~5月29日)
江戸博の常設展エリアで行われる特集展示を、私はけっこう楽しみにしている。本展は、日独交流150周年を記念し、万延元/1860年、プロイセン政府から派遣されたオイレンブルク遠征隊の特集。
オイレンブルク伯爵(Friedrich Albrecht zu Eulenburg, 1815-1881)は、通商条約の締結のため、日本をはじめとする東アジア諸国に派遣された外交官で、帰国後、その公式記録は『オイレンブルク日本遠征記』(日本語訳)として出版された。本展は、同遠征隊が撮影した写真4点と、公式画家として随行したベルク (Albert Berg, 1825-1884)が描いた絵画22点(うち8点は彩色)をパネルで紹介するもの。近代の資料はパネル(複製)でも十分楽しめる。
万延元年(1860)の写真に残る江戸の風景(王子、石神井川岸など)は、私の記憶する1960年代初頭の東京下町と、あまり変わらないような気がした。帯刀したお侍が写っているのが不思議なくらいだ。
美しいのは、画家のベルク描く江戸の風景である。豊かな緑、高く抜ける青空、木陰に潜むように暮らす人々。典型的な東洋人顔に描かれてはいるが、悪意は感じられない。そして、遠征記の本文なのだと思うが、パネルに添えられた文章がいい。「農業は日本では名誉ある職業とされている」「日本人は樹木を非常に大切にする」「どの農家の傍らにもある竹林は日本の風景に大きな魅力を与えている」等々。これは、森を愛するドイツ人ならではの観察と理解ではないかなあ。なかでも私が感銘を受けたのは、「日本で最も美しいものの一つに墓地がある」という一文。私も同感だが、この感覚、いまの日本人にどのくらい通じるだろうか。
私が気に入った絵は、新宿十二社(じゅうにそう)の森。水上に張り出した粗末な小屋掛けは、東南アジアの風景のようだった。神奈川(相模湾)から見る、薔薇色に染まった富士の美しいこと(ちょっと山頂が尖り過ぎだが)。
オイレンブルクのことを調べていたら、『逝きし世の面影』にたびたび引用されているようだ。ああ、なるほど。あの美しい本にぴたりとくるような文章と絵である。
江戸博の常設展エリアで行われる特集展示を、私はけっこう楽しみにしている。本展は、日独交流150周年を記念し、万延元/1860年、プロイセン政府から派遣されたオイレンブルク遠征隊の特集。
オイレンブルク伯爵(Friedrich Albrecht zu Eulenburg, 1815-1881)は、通商条約の締結のため、日本をはじめとする東アジア諸国に派遣された外交官で、帰国後、その公式記録は『オイレンブルク日本遠征記』(日本語訳)として出版された。本展は、同遠征隊が撮影した写真4点と、公式画家として随行したベルク (Albert Berg, 1825-1884)が描いた絵画22点(うち8点は彩色)をパネルで紹介するもの。近代の資料はパネル(複製)でも十分楽しめる。
万延元年(1860)の写真に残る江戸の風景(王子、石神井川岸など)は、私の記憶する1960年代初頭の東京下町と、あまり変わらないような気がした。帯刀したお侍が写っているのが不思議なくらいだ。
美しいのは、画家のベルク描く江戸の風景である。豊かな緑、高く抜ける青空、木陰に潜むように暮らす人々。典型的な東洋人顔に描かれてはいるが、悪意は感じられない。そして、遠征記の本文なのだと思うが、パネルに添えられた文章がいい。「農業は日本では名誉ある職業とされている」「日本人は樹木を非常に大切にする」「どの農家の傍らにもある竹林は日本の風景に大きな魅力を与えている」等々。これは、森を愛するドイツ人ならではの観察と理解ではないかなあ。なかでも私が感銘を受けたのは、「日本で最も美しいものの一つに墓地がある」という一文。私も同感だが、この感覚、いまの日本人にどのくらい通じるだろうか。
私が気に入った絵は、新宿十二社(じゅうにそう)の森。水上に張り出した粗末な小屋掛けは、東南アジアの風景のようだった。神奈川(相模湾)から見る、薔薇色に染まった富士の美しいこと(ちょっと山頂が尖り過ぎだが)。
オイレンブルクのことを調べていたら、『逝きし世の面影』にたびたび引用されているようだ。ああ、なるほど。あの美しい本にぴたりとくるような文章と絵である。