○天理ギャラリー 第143回展『天理図書館 開館80周年記念特別展-新収稀覯本を中心に-』(2011年5月15日~6月12日)
恒例の天理図書館収蔵展。今年は、2010年に開館80周年を迎えた天理図書館が、近年蒐集した和・漢・洋の稀覯書を厳選しての特別展が、東京にやってきた。
冒頭には『日本書紀神代巻』が2種。清原宣賢写本(永正9/1512年)と吉田梵舜写本(寛永元/1624年)である。えっと、これは国宝乾元本(乾元2/1303年書写)とは別物ね。でも16世紀本と聞くと、さすがにドキドキする。次は、平成18年(2006)に重文指定された『伊勢集』。めずらしく展示室内に警備(?)の人が座っていたのは、この資料のためだろうか。見るからに定家本系の、でも比較的おとなしい文字である。次は三冊本の『枕草子』(天正11年本)。丹表紙で、びっくりするほどデカい。朝鮮本みたいだ。その隣りの『曽我物語』(寛永初期書写)が文庫本より小さい掌サイズであるのと、好対照である。以上が特別扱いの主役級。
このほかの展示は、3つのセクションに分かれる。最初は「自筆資料」という括りで、近世初期の『扇の草子』は、ピンクやオレンジ色を多用した素朴絵タッチで、鎧姿の武者さえもほのぼのと愛らしい。文禄年間の秀次妻妾処刑の様子を記した『兼見卿記』の隣りに、近代の篆刻家・三村竹清が描いた南瓜のスケッチ画が広げてあったり、種々さまざま。
続く「印刷資料」には、製版本、活字本、美麗な摺りもの、漢籍やインキュナブラへと続く。西鶴の旅行案内書『一目玉鉾』って読んでみたいな。古河藩主・土井利位(としつら)の『雪華図譜』は、話にはよく聞くけど、実物を見た記憶は薄い。一大名の趣味として個人的に配られた資料だから、あまり伝わっていないのだそうだ。きりしたん版『精神修養の提要』には、確かに標題紙に「In COLLEGIO IAPONICO」とある。イエズス会の『1577年通信』だったと思うが(あるいは同書の関連書か)、現在、天理図書館前に設置されいる大砲(1610年、長崎沖にて爆沈したポルトガル船マードレ・デ・デウス号搭載の大砲)に関する記事が掲載されているという説明を興味深く眺めた。→個人ブログ:徒然漫歩計
そして「綿屋文庫」には「わたやのほん」という判が押されている。天理教二代目教祖(真柱)の中山正善(しょうぜん)が江戸末期の庶民の言葉や生活を知るために集めたもので、綿屋は中山家の屋号だそうだ。その充実ぶりは、執念を感じさせるコレクションである。
1冊1,000円の展示図録は、解説はあまり詳しくないが、写真は素晴らしい。こんな高精細の図版、見たことがない。料紙の繊維の1本1本までくっきり写っている。印刷は天理時報社。やっぱり宗教って、ビジネス感覚ではできないことを成し遂げてしまうところがあるのかな…。
恒例の天理図書館収蔵展。今年は、2010年に開館80周年を迎えた天理図書館が、近年蒐集した和・漢・洋の稀覯書を厳選しての特別展が、東京にやってきた。
冒頭には『日本書紀神代巻』が2種。清原宣賢写本(永正9/1512年)と吉田梵舜写本(寛永元/1624年)である。えっと、これは国宝乾元本(乾元2/1303年書写)とは別物ね。でも16世紀本と聞くと、さすがにドキドキする。次は、平成18年(2006)に重文指定された『伊勢集』。めずらしく展示室内に警備(?)の人が座っていたのは、この資料のためだろうか。見るからに定家本系の、でも比較的おとなしい文字である。次は三冊本の『枕草子』(天正11年本)。丹表紙で、びっくりするほどデカい。朝鮮本みたいだ。その隣りの『曽我物語』(寛永初期書写)が文庫本より小さい掌サイズであるのと、好対照である。以上が特別扱いの主役級。
このほかの展示は、3つのセクションに分かれる。最初は「自筆資料」という括りで、近世初期の『扇の草子』は、ピンクやオレンジ色を多用した素朴絵タッチで、鎧姿の武者さえもほのぼのと愛らしい。文禄年間の秀次妻妾処刑の様子を記した『兼見卿記』の隣りに、近代の篆刻家・三村竹清が描いた南瓜のスケッチ画が広げてあったり、種々さまざま。
続く「印刷資料」には、製版本、活字本、美麗な摺りもの、漢籍やインキュナブラへと続く。西鶴の旅行案内書『一目玉鉾』って読んでみたいな。古河藩主・土井利位(としつら)の『雪華図譜』は、話にはよく聞くけど、実物を見た記憶は薄い。一大名の趣味として個人的に配られた資料だから、あまり伝わっていないのだそうだ。きりしたん版『精神修養の提要』には、確かに標題紙に「In COLLEGIO IAPONICO」とある。イエズス会の『1577年通信』だったと思うが(あるいは同書の関連書か)、現在、天理図書館前に設置されいる大砲(1610年、長崎沖にて爆沈したポルトガル船マードレ・デ・デウス号搭載の大砲)に関する記事が掲載されているという説明を興味深く眺めた。→個人ブログ:徒然漫歩計
そして「綿屋文庫」には「わたやのほん」という判が押されている。天理教二代目教祖(真柱)の中山正善(しょうぜん)が江戸末期の庶民の言葉や生活を知るために集めたもので、綿屋は中山家の屋号だそうだ。その充実ぶりは、執念を感じさせるコレクションである。
1冊1,000円の展示図録は、解説はあまり詳しくないが、写真は素晴らしい。こんな高精細の図版、見たことがない。料紙の繊維の1本1本までくっきり写っている。印刷は天理時報社。やっぱり宗教って、ビジネス感覚ではできないことを成し遂げてしまうところがあるのかな…。