見もの・読みもの日記

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笑いと吉祥/狂言を悦しむ(永青文庫)

2016-01-25 22:44:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
永青文庫 冬季展示『狂言を悦しむ』(2015年1月9日~2月21日)

 細川家に残る狂言の装束や狂言面、狂言の台詞を記す資料を展示。永青文庫の過去の展覧会一覧を見ると「能」や「能と狂言」の企画展はあるけれど、「狂言」にテーマをしぼるのは新機軸じゃないかしら。私は、能にはほとんど触れた経験がないが、小中学生の頃、母親の影響でよく狂言を見ていたので、狂言には親しみがある。

 はじめに「猿」「三番叟(黒式尉)」「恵比寿」など数々の面。狂言は、基本的に面を使わない演劇だと思っていたので、ちょっと不思議に思う。Wikiにも「狂言は、一部の例外的役柄を除いて面を使用せず、猿楽の持っていた物まね・道化的な要素を発展させたもの」とある。そうだよね。役者の、大げさで豊かな表情は狂言の魅力のひとつなのだから。それから、肩衣や素襖などの衣装。大胆な文様がカッコいい。

 「狂言記」「絵入狂言記」と呼ばれる版本もたくさん出ていた。いずれも横長のスマホ大サイズなのは、舞台を見ながら参照したためだろうか。いま文楽のプログラムについてくる床本みたいなもので、セリフがきちんと聞き取れないと、台本が手元に欲しいと思うのだろうな。狂言は台本の成立が遅かったため、流派によって詞章の違いが大きいという説明を読んで、なるほどと思う。能の世阿弥や文楽の近松みたいな「作者」「作品」という概念が狂言にはないのだな。「元禄12年入手」という注がついた(この手の出版物は、刊記もないのだろう)版本は、最後のページに「明治15年4月28日」の能楽の来観証(上等二枚)が貼り付けてあった。オレンジ色の摺り。枠外に「弁当湯水適宜」とあるのが面白かった。また参考資料として、明治時代の活字本の「柿山伏」(これはB6サイズ位)も出ていて、表紙の絵に味があった。

 その他の常設展示は、正月らしく吉祥の書画が多め。不詳の画家・新翠筆『群雀図』、細川家のお抱え絵師・矢野吉重筆と見られる『日の出老松図』など。2階には仙筆『七福神図』、白隠筆『猿曳翁図』など。

 それにしても『春画展』の喧騒が遠のき、都会の中の静かな隠れ家に戻って何よりである。出入口は『春画展』のとき、位置が変わって広くなり、そのままだった。
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