見もの・読みもの日記

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霊獣のパワーを貰おう/帰ってきた!どうぶつ大行進(千葉市美術館)

2020-08-31 22:23:56 | 行ったもの(美術館・見仏)

千葉市美術館 拡張リニューアルオープン・開館25周年記念 企画展『帰ってきた!どうぶつ大行進』(2020年7月11日~9月6日)

 実は、施設をリニューアルしているという認識があまりなかったのだが、久しぶりに行ってみたら、区役所関係の案内表示が全て無くなっていた。これまで千葉市中央区役所との複合施設で7-8階だけが美術館だったが、区役所の移転に伴い、改修工事を経て、建物まるごど美術館にリニューアルしたのである。企画展示室とは別の常設展示室や、市民アトリエ、子どもアトリエもできた。素晴らしい。

 リニューアルオープン第1弾は、8年前の夏休み特別企画『どうぶつ大行進』(2012年7月14日~9月2日)をバージョンアップした企画展だそうだ。8年前は、残念ながら見ていない。「個人蔵」や「摘水軒記念振興財団所蔵」が一部混じるが、基本的には同館コレクションの248件を揃える。まずそのボリュームに圧倒された。

 冒頭は、昨今の世相を反映して「疫病破邪の生きもの表現」。鍾馗図や金太郎、桃太郎の図が並ぶ。仙厓義梵の『鍾馗図』(旧ピーター・ドラッカー山荘コレクション)と石井波響の『鍾馗』がはっちゃけていてよい。波響の鍾馗は、愛嬌のある獅子に乗る。我が子のために描いて手元に残しておいた作品だという。江戸後期の狩野派『桃太郎絵巻粉本』は、桃太郎が果生型であることが注目される。明治以前の絵画は(ほぼ)全て、爺婆が桃を食べたことで子供ができるという回春型なのだそうだ。

 司馬江漢『犬のいる風景図』(絹本油彩)には、江戸絵画の(応挙・芦雪ふうの)イヌではなくて、自然体のわんこがたたずんでいる。司馬江漢がイヌ派の代表なら、ネコ派の代表は国芳だろう。『風俗三十二相 うるさそう』は若い女性に頬ずりされる猫の図だが、猫がうるさがって迷惑そうなのが可笑しい。

 鎌倉時代末期の『薬師十二神将図』や室町時代の『春日若宮曼荼羅図』のような古い作品もあれば、明治の橋口五葉、昭和の川合玉堂もあり、平成のタイガー立石『封函虎』もさりげなく並んでて、コレクションの幅広さを堪能した。

 「麒麟はまだか!?霊獣-想像上のどうぶつたち』のコーナーでは、麒麟に唐獅子、白鷹、龍虎などに囲まれて、なんだか夏バテの身体にパワーが注入される気がした。やはり主役は石井波響の『王者の瑞』。2018年の『石井波響展』で見て以来の再会だが、あらためて画面の大きさに驚く。左隻には実在のキリンをモデルにしたという、青い斑点と赤い焔(?)をまとう麒麟。狂暴な目をしている。右隻には麒麟によく似た細面の聖帝が、勝負を挑むように厳しい表情で対峙する。これに比べると、蕭白の『獅子虎図屏風』はずっと愛嬌がある。しかし蕭白の『寿老人鶴鹿図』三幅対は、真ん中の寿老人が、完全に「行っちゃった」表情をしていて怖い。

 日本にやってきた異国の動物、特にゾウに関する資料は、いつ見ても興味深くて面白い。森一鳳『象図屏風』は装飾的な描き枠も素敵。明治の錦絵、教育掛図も面白かった。『当時流行こっくりさん』の錦絵では、"狐狗狸さん"の意味か、白くて小さなキツネ・イヌ・タヌキが立ち上って踊っていた。虫、鳥、水の生きものを経て、最後は描かれた人気者の名品尽くし。宗達の『狗子図』と芦雪の『花鳥蟲獣図巻』のわんこが、思わず撫でたくなるほど可愛かった。

 千葉市美術館にお願いしておきたいと思ったのは、ホームページがリニューアルしたら、過去の展覧会の記録が消えてしまった。今はまだ、古いホームページの記録を見ることができるが、ちゃんとデータを移設しておいてほしい。お願いします。

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