見もの・読みもの日記

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2017年7月@関西:源信(奈良博)+東大寺俊乗堂、大湯屋公開

2017-08-03 21:58:03 | 行ったもの(美術館・見仏)
奈良国立博物館 1000年忌特別展『源信:地獄・極楽への扉』(2017年7月15日~9月3日)

 恵心僧都源信(942-1017)の千年忌を記念する特別展。はじめにその生涯をたどる。源信が現在の奈良県香芝市の生まれで、生誕の地に阿日寺(あにちじ)という寺院があることを初めて知る。阿日寺所蔵の源信坐像(江戸時代)が展示されていたが、このひとはあまり特徴のない顔立ちだなあと感じる。類例の少ない『恵心僧都絵伝』(江戸時代)は興味深かった。高雄寺の観音菩薩立像(平安時代)は、源信の母が子授けを祈願したと伝えられ、丸顔で優しい面差しである。

 源信は9歳で比叡山の慈恵大師良源に入門し、得度して横川の恵心院で暮らす。こわもての個性的な面相の僧侶の像があると思ったら、慈恵大師だった。あとのほうに慶滋保胤(出家して寂心)や増賀上人に関わる文物もあって、学生時代、中世文学の演習で、こうした出家者たちの逸話を学んだことを懐かしく思い出した。前半は文書資料が多くて地味だが、国宝『一遍聖絵』巻七を見ることができたのは眼福(7/30まで)。

 第1展示室の後半から「『往生要集』と六道絵の世界」が始まる。まず目を奪われるのは、滋賀・聖衆来迎寺の『六道絵』15幅(鎌倉時代)。過去に大津歴博の特別展で一度だけ見たと思っていたが、確認したら12幅だけ(3幅は摸本、写真)だった。15幅揃いは初体験か! 八大地獄が4幅しかないので、まだ他にあるのかな?と思ったが、「閻魔庁1、地獄4、人道4、餓鬼1、畜生1、阿修羅1、天人1、念仏による救済2」という15幅構成だった。描線も彩色も細部までよく残っている。会場の入口と出口に、たぶんこの作品の高精細写真が使われていたが、地獄の鬼が等身大になるくらいまで拡大しても迫力が損なわれないのがすごい。

 ふと背後の一角にあやしい雰囲気を感じて、吸い寄せられるように近づいてみると、地獄絵を集めたコーナーだった。東博所蔵の『地獄絵』が4場面全て開いている。これ、よく読むと「仏道修行者に酒を飲ませた者」「水で薄めた酒を売った者」「旅人に酒を飲ませて盗みをはたらいた者」など、全て酒にまつわる罪を犯した者が堕ちる地獄なのだ。『沙門地獄草紙』断簡は3点。そして『辟邪絵』は5点が並ぶ。壮観!! 後期展示の『病草紙』『餓鬼草紙』も気になる。第1展示室(東新館)の最後には、東大寺の閻魔王坐像が睨みを効かせていた(もとは念仏堂にあったというが、今はふだんどこにあるのだろう)。

 続いて西新館は「来迎と極楽の風景」がテーマ。最初の部屋は彫刻中心で、京都・即成院の二十五菩薩坐像から3躯、平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩像1躯、当麻寺の練供養で使われる菩薩面などが展示されていた。次室は仏図が主。地獄絵に比べて極楽や来迎の図は面白くないという思い込みがあったが、そんなことはないということを認識した。特に来迎図は個性や変化があって面白い。私も年を取ったら、毎日、来迎図を眺めて暮らしたいと思った。

東大寺 特別公開『俊乗堂』『大湯屋』(2017年7月1日~31日)

 通常年2日(7/5、12/16)のみ公開している俊乗堂を開扉し、鎌倉時代の浴場である大湯屋を初公開するというので行ってみた。俊乗堂は、以前、一度だけ入ったことがある。というか、俊乗坊重源上人坐像は、近年、さまざまな展覧会で「出開帳」されていて、席の暖まる暇がなさそうである。堂内には、重源上人坐像を中央に、左奥には愛染明王坐像、右奥には快慶の銘を持つ阿弥陀如来立像。重源上人坐像は、すごく高い壇に乗った、小さな厨子(扉は開放されている)に収まっていた。扉が閉まったらひどく窮屈そうで、これは出開帳に連れ出してあげたくなるなあと思った。行基堂と念仏堂の間にある建物で御朱印をもらう。俊乗堂関連だけで、重源上人・阿弥陀如来・愛染明王の3種あるというので、全ていただくことにした。

 俊乗堂の脇に「→大湯屋」という案内板が出ていて、ここから大湯屋方面に下りる道があることを初めて知った。が、久しぶりの東大寺なので、三月堂と二月堂に寄っていく。三月堂は人が少なくて静かだった。2011~2013年の修理工事に伴い、諸像の一部が東大寺ミュージアムに移動してから、すでに4年になる。混雑していた空間がひろびろして、不空羂索観音の巨体に似つかわしくなった。過去の自分のブログを見たら「不空羂索観音と日光・月光菩薩は、私の記憶の中ですっかり一体化している」なんて書いているけど、今回、私は日光・月光の存在を最後まで思い出さなかった。人間の記憶なんてこんなものか。なお、床が簀子敷きになっていたけど、以前からそうだったかしら。夏仕様なのかな?

 二月堂を経由し、大湯屋へ。私は大湯屋の前の田んぼの風景が好きだ。実は「二月堂供田」と呼ばれ、修二会のお供え用の餅をつくるための餅米を栽培しているのだそうだ。大湯屋は、ちゃんと板張りの床があって、靴を脱いであがると、中央に板壁に仕切られた(窓あり)一区画があり、中に赤金色に輝く丸い「鉄湯船」が鎮座している。入口の反対側に土間(釜場)があるようだったが、そこは下りられなかった。鉄湯船には、建久8年(1197)に南無阿弥陀仏(重源の号)のために豊後権守(草部是助)が鋳造したとの銘があるという説明だったが、判読できなかった。草部是助って誰?と思ったが、調べたら、大仏復興に協力した鋳物師の一人であるそうだ。

JRおでかけネット:ちょこっと関西歴史たび「世界遺産 東大寺」
 上記は東大寺の公式サイトからリンクしているページだが、今回の特別公開以外にも、8~9月に気になる企画が用意されているのを見つけてしまった。境内ガイドウォークに参加すると、二月堂の内陣に入れるのか…。それって、かなり魅力的である。

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