見もの・読みもの日記

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抱一の魅力/琳派芸術II(出光美術館)

2012-11-15 23:37:15 | 行ったもの(美術館・見仏)
出光美術館 『琳派芸術II』(2012年10月27日~12月16日)

 最近、琳派特集をしたばかりの出光が、なぜまた琳派?というのが分からなかったが、さっき展覧会サイトを見に行って、やっと思い当たった。

 昨年、抱一生誕250年を記念した当館での展覧会は、東日本大震災により途中閉幕となりました。この度の展覧会は、ご期待をお寄せくださった多くの皆様へ、あらためて琳派芸術をご鑑賞いただく機会といたしました。…とある。

 そうだった。2011年2月11日~3月21日に会期が設定されていた、酒井抱一生誕250年『琳派芸術』第2部「転生する美の世界」。私は2月中に見に行っていたので、何ら影響を受けなかったが、3月11日に発生した東日本大震災の影響で、見逃してしまった人もいるに違いない。出陳作品がどのくらい重なっているのか、よく分からないが、ファンにはありがたい企画だと思う。

 いいなあ、と思ったのは、まず冒頭の酒井抱一筆『風神雷神図屏風』。この画題、私は宗達の絶対的信奉者で、光琳は格が落ちる、と思っている。さらに抱一なんて問題外と思っていたのだが、今回よく見たら、あれ?わりといいじゃないか、と思った。宗達の風神は、踏み込んだ足のつま先を反らせて、スピーディに駆け抜けていく躍動感があるが、抱一の風神は、足を広げて虚空に踏ん張っているようにも見える。雷神は、口の中がすきっ歯なのがかわいい。2011年に見たときは、ひとこと触れているだけで、あまり感銘を受けなかったようなのが不思議だ。

 『八ッ橋図屏風』も、パネルになっている光琳作品と見比べると、私は抱一のほうが好きだ。根津美術館の『KORIN展』の感想にも書いたが、メトロポリタン美術館蔵の『八橋図』のカキツバタは「写実的で、細部の形態にこだわっている分、色の印象は弱い」のである。抱一は、花びらも葉の色も、裏と表に、はっきり抑揚をつけ、写実よりも、色彩の対比が生み出すリズムを重視している。ただ、花の姿は、一見型押しのようで、よく見るときちんと一つずつ違っていた。絹本金地の作品だが、あまり金ピカでなく、明るい黄土色っぽい。あと表具がお洒落なのが、ポイント高いと思う。

 『十二ヵ月花鳥図貼付屏風』もよかった。これほど抱一大絶賛をしようとは、自分でも信じられないのだけど、仕事疲れの週末は、やっぱりこういう作品にしみじみ癒される。日本人の自然観は、予定調和の花鳥図だけではない、とか言っておきながら、もう花鳥図があればいいや、という気持ちになってしまう。

 おや、これは初見?と目が留まったのは、中村芳中の『扇面貼付屏風』。たぶん鹿の背にもたれた人物が、芭蕉扇で顔を隠している図…だと思うのだが、大胆な抽象化が面白かった。鹿といえば、江戸時代の『西行物語絵巻』の鹿が、一目で分かる琳派の鹿だった。と思ったら、禁裏御本を宗達が模写したものと知って、納得した。

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