■浄土宗総本山 知恩院(京都市東山区)
「春の京都非公開文化財特別公開」の企画で、通常非公開の大方丈・小方丈が公開されているというので来てみた。狩野尚信、信政らによる襖絵が見どころ。特に大方丈・鶴の間の襖絵は、2005年から建物の修理工事の関係で佛教大学宗教文化ミュージアムに預けられていたが、本年2月に知恩院に戻ってきたもので、16年ぶりの公開となる。金地の背景に、黒と灰色の羽根をまとった鶴たち(マナヅルか?)が力強く描かれていて、華やかというより、厳粛な雰囲気だった。尚信って、江戸狩野の人だと思っていたが、京都や大阪での制作にもかかわっているのだな。
■細見美術館 琳派展22『つながる琳派スピリット 神坂雪佳』(2022年4月23日~6月19日)
近代京都において図案家・画家として活躍した神坂雪佳(1866-1942)の多彩な作品を紹介する。一度見たら忘れない『金魚玉』や、どれも楽しい『十二ヶ月草花図』など。図案集『百々世草』はデジタルで全頁を鑑賞することができる。鷹峯の光悦村を想像して描いた『光悦村図』も面白かった。
関連する琳派作品では、宗達の『双犬図』(白犬と黒犬がじゃれあう)や中村芳中の『白梅小禽図屏風』(鳥の顔!)など、このへんの琳派はかわいい。
■白峯神宮(京都市上京区)
白峯神宮は「春の京都非公開文化財特別公開」に初参加。しかし、あまり文化財はないのではないか?と半信半疑で行ってみた。特別公開の拝観料を払って上がらせていただいたお部屋には『崇徳上皇像・附(つけたり)随身像』。ただし原本(鎌倉時代)は京博にあり、展示はかなり新しい(たぶん近代の)模写である。ほかに由来のよく分からない楽器、刀剣など。蹴鞠の装束・靴(鴨沓/かもぐつ)・鞠などは、同神宮を拠点に蹴鞠保存会が活動していることもあって、それなりに見る価値はあった。
これで「文化財特別公開」の名目で1,000円取るのはどうかなあ、と思ったが、やがて話の上手いおばさんが登場して、同神宮の由緒やら蹴鞠の作法やらを熱心に解説してくれたので、まあ文句は言わないことにしておく。
■龍谷ミュージアム 春季特別展『ブッダのお弟子さん-教えをつなぐ物語-』(2022年4月23日~ 6月19日)
釈尊を支えた10人の直弟子(十大弟子)、釈尊の涅槃の時に後を任された16人の高弟(十六羅漢)をはじめ、絵画や彫刻に表わされた仏弟子や在家信者の姿を紹介する。2020年春に中止になった展覧会をあらためて開催するものである(出品作品は一部変更あり)。
特に興味深かったのは羅漢図で、愛知・妙興寺(中国・元時代)の8幅、三重・津観音大宝院(中国・明時代、刺繍)の4幅、京都・永観堂禅林寺(鎌倉時代)の4幅の計16幅を使って、十六羅漢図の並べ方を再現したコーナーがあった。妙興寺の羅漢は、虎を懐かせたり、獅子に騎乗したり、摩竭魚に乗ったり、やることが派手でアニメっぽくて楽しかった。永観堂禅林寺の第十三尊者・因掲陀(いんかだ)だったと思うのだが、小さな魚か貝(?)の上に立って海を渡りながら、目から光線を発してる羅漢がいた。これは大和文華館で見た眉間寺旧蔵『羅漢図』とそっくり! 変わった図様だと思っていたが、類例があったのか。
ほかにも大徳寺の五百羅漢図(中国・南宋時代)、清凉寺の十六羅漢図(中国・北宋時代)、東博でよく見る日本最古の十六羅漢図(平安時代)など、羅漢図の代表的な名品が、1~2幅ずつ来ていた。また、焼失した法隆寺金堂壁画には『山中羅漢図』があり、その模本(明治時代)が残っていることを初めて知った。
十大弟子は、さらに「二大弟子」を取り出すことがあるのだが、東南アジア系統では舎利弗と目連、東アジアでは阿難と迦葉を指すことが多いという。なるほど。見たことのある舎利弗・目連像があると思ったら、神奈川・称名寺の十大弟子立像だった。また、妙にビビッドな彩色の羅漢像坐像は、延暦寺の宝物館で気になったもの(※写真)で懐かしかった。
以上、市バス1日乗車券を使い倒して予定を終了。最後に「Gallery SUGATA」に寄ったことは別記事とする。