〇根津美術館 財団創立80周年記念特別展『根津美術館の国宝・重要文化財』(2020年11月14日~12月20日)
展覧会のタイトルが、あまりにも「そのまま」なので笑ってしまったが、ほんとにタイトルどおりの展示ですごかった。根津美術館は1941年の開館だが、初代根津嘉一郎(1860-1940)のコレクションを引き継いだ二代目嘉一郎が、財団法人根津美術館を設立したのが1940(昭和15)年。今年2020年が財団創立80周年にあたることを記念し、本展では、同館の指定品95件(国宝7件、重要文化財88件)を全て披露する。全館あわせた展示件数が125件くらい(展示替あり)なのに指定品88件ってどういうこと? 第1~2室の絵画は、展示の40件全て指定品である。びっくり!
冒頭を飾るのは中国絵画の名品。馬麟筆・理宗賛『夕陽山水図』(賛と画は別絹だったものが一幅として改装されたという解説を初めて把握)とか、牧谿筆『漁村夕照図』(墨の濃淡に光を感じる!)とか、何度見ても新鮮な作品が並ぶ。屏風は鈴木其一筆『夏秋渓流図屏風』だった。このあと、光琳の『燕子花図屏風』と応挙の『藤花図屏風』が展示替で登場する予定になっている。
仏画は大好きな『十二因縁絵巻』の大好きな場面(折吒王が羅刹の髪を握っているシーン)が開いていて嬉しかった! 高麗仏画の『阿弥陀如来像』、平安時代の『大日如来像』、鎌倉時代の『愛染明王像』(画面に後醍醐天皇の宸筆と伝えられる墨書あり)など、人智を超えた世界を感じさせる、密教的な仏画が多かった。展示室2の『華厳五十五所絵(善財童子歴参図)』は額装(?)3面が出ており、顔の大きい登場人物、特に異形の者たちが素朴絵ふうで可愛かった。東大寺尊勝院(廃絶)の食堂に掲げられていたものらしい。『那智滝図』も久しぶりに見ることができて嬉しかった。
上の階へ。展示室5は古経と墨蹟。展示室6は茶道具取り合わせだが、リストを見たら、全て重要文化財だった。為氏筆『古今和歌集』1帖、伝・西行筆『類聚歌合』1巻、飛鳥井雅経筆『熊野類懐紙』1幅はこの部屋に展示。しかし、同館は古筆の名品をもっと多数所蔵しているはずだが、古筆って、あまり指定文化財にならないのだろうか。
ふだんあまり真面目に見ない展示室4の中国青銅器もチェックしてみたら、双羊尊など数件が重文指定を受けていることを確認できた。1階ホールの中国石造仏では、宝慶寺浮彫石仏板群の1面と見られる『十一面観音立像龕』(唐時代)が重文指定。指定文化財であってもなくても、好きなものが好きでよいのだが、名品の洪水に圧倒される展覧会であることは間違いない。