見もの・読みもの日記

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アイスショー”notte stellata 2024”

2024-03-16 23:50:05 | 行ったもの2(講演・公演)

羽生結弦 notte stellata 2024(2024年3月10日、16:00~)

 先週日曜、羽生結弦さんが座長をつとめるアイスショーnotte stellataを見て来た。2011年3月11日の東日本大震災から12年目になる2023年に彼が立ち上げたアイスショーで、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナで3公演が行われる。昨年はチケットの抽選に敗れて行くことができなかったが、今年は千秋楽の日曜のチケットを取ることができ、日帰りで仙台に行ってきた。素晴らしい公演で大満足したのだが、やっぱり(分かっていたけど)ふつうのアイスショーとは少し違って、考えることが多くて、なかなか記事を書くことができなかった。

 日曜の仙台は、青空なのに時々細かい雪が舞っていて、東京よりかなり寒かった。2011年のあの日も、こんなふうに寒かったのかなあ、と初めて思った。今年のゲスト・スケーターは、ハビエル・フェルナンデス、ジェイソン・ブラウン、シェイリーン・ボーン・トゥロック、宮原知子、鈴木明子、田中刑事、無良崇人、本郷理華、フラフープのビオレッタ・アファナシバ。座長の羽生くんが信頼できる仲間を集めた感じで、統一感あるいは結束感があって安心できた。そしてスペシャル・ゲストは大地真央さん。

 2プロ滑るスケーターは、だいたい1演目はしっとりと抒情的な、しかし強い決意や未来への希望を表現するプロを選んでいたように思う。もちろん楽しい曲もあって、田中刑事くんと無良崇人くんのサタデーナイトフィーバーは世代的に懐かしくて嬉しかった。シェイリーンのwaka wakaもダンサブルな曲で、アリーナのお客さんがプーさんのぬいぐるみを膝の上で踊らせていたら、それを抱き取って、一緒に踊ってくれた(ちょうど向かい側でよく見えた)。休憩明けの群舞はBTSのPermission to Danceで、羽生くんは映像で参加。ステージ背景のスクリーンだけではなくて、リンクそのものにも大きな映像を映してしまう演出が面白かった。

 しかし羽生くんのソロ演技が1日に3演目も見られるのは、お得感が半端なかった。冒頭にnotte stellata(白鳥)。前半の最後に大地真央さんとのコラボでカルミナ・ブラーナ。そして後半にダニー・ボーイ。どれも「すごいものを見た」以外に語る言葉がない。特にカルミナ・ブラーナは、ひたすら重たいのかと思ったら、軽やかな天使のように登場し(舞台スクリーンには花畑の映像)一転して、真央さん扮する黒い魔女の支配にもがき苦しみ、最後は浄化されていくのである。どうしても目はリンクの羽生君に釘付けになって、真央さんをあまり見られなかった(照明の関係でも舞台上が見にくかった)のは残念。ダニー・ボーイもそうだが「芸能と鎮魂」について深く深く考えてしまったショーだった。羽生くんはフィナーレの楽しい群舞にも登場。

 全ての演技が終わって、最後にマイクを持った羽生くんがショーが無事に終わったことに感謝を述べ「明日はまた、辛く暗い一日が始まります」みたいなことを言ったとき、会場の一部から無邪気な笑い声が漏れ、羽生くんが少しむきになって「笑いごとじゃないんです。そういうコンセプトのショーなんで」と反論する一幕があった。いや、笑った人の気持ちは分かるのよ。あのときは本当に満たされた気持ちだったので、明日が暗い一日になるなんて想像することができなかった。それは私が、東日本大震災で大事な人やものを失っていないから持てる感想なのだと思う。翌日の新聞やテレビでは、13年経っても癒えない傷を抱えた人たちの存在が控えめに報道されていて、いまさらだが自分の無神経さを恥ずかしく思った。

 仙台では少し時間があったので、伊達家三藩主の霊屋「瑞鳳殿」で羽生結弦選手の衣装をモチーフにした七夕吹流しが再展示されているというのを見に行った。 拝殿の左右の回廊で、静かに風に揺れていた。

 羽生くんの衣裳は、どれも凝ったものが多いが、この瑞鳳殿(寛永年間造、戦災で焼失後、1979年に再建)の装飾も華やかさでは負けていないので嬉しかった。


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