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長者ヶ橋は、佐渡の自然と近代土木技術の融合によって架けられた

2021年01月05日 | 土木構造物・土木遺産


佐渡で、きれいな橋を見てきた。佐渡一周線が最西端の沢崎に着く手前、深浦地区の入り江にかかる「長者ケ橋」だ。

見えてきた時、相変わらずよく調べもせずに、半端の意識で「おー、斜張橋だ!」と叫んでしまったが、正式にはエクストラドーズド橋という構造を持つ大変珍しい橋が佐渡にあったのだ。
エクストラドーズド橋は、主塔が斜張橋のように高くなく、主桁の外側に鋼材などを配置して補強し、PC(プレストレストコンクリート)鋼棒(斜張橋より角度の小さい斜材・ケーブル)でさらに剛性(曲げやねじれに対して、変形しずらさ)を高くした橋である。PC桁橋とPC斜張橋の中間の橋とも言われている。
1994年竣工の小田原ブルーウェイブリッジが世界初とされているので、比較的新しい構造で、吊り橋や斜張橋よりも支間は短い区間に、コスト面も考慮され架橋されるケースが多いようで、近年、遠隔地や風当たりの強い場所で架橋されるケースが多い。



以前、小木から陸路西に行くと、この深浦が終点だった。隣で佐渡最西端の集落・沢崎に行くには、深浦から船に乗って行き来をしなければならなかった。
その後山道を切り開いたことによって沢崎までは道路はつながったものの、道幅は狭く、カーブの連続で危険で時間もかかったということもあり、昭和後半になって深浦の入り江の上に架橋をする計画が持ち上がった。
しかし、この深浦の入り江は、佐渡弥彦米山国定公園内にあり、かつ天然記念物でもある「枕状溶岩」の擁する景勝地でもあることから、文化庁との協議が大変だったらしい。橋脚を少なくすること、高くしないこと、景観を損なわないデザインにするなどなどの注文により、この地にエクストラドーズド橋ってことになったのだろう。



橋は、5年の歳月を費やし2002年(平成14年)竣工。橋長294メートル、主塔の支間は100メートルくらい?宿根木方向から左カーブで橋に入り、入り江の中に主塔を持つ橋脚が設置されているほか、対岸の岩場に橋脚2か所がある。
見晴らしを良くして、観光にも寄与しようとするデザイン的な配慮、また冬場の季節風などにも耐えられるような丈夫さ、かつ遠隔地への部材の調達・搬入のしやすさ、工費を抑えるためのコストパフォーマンス経路を選定したことなどがよく分かる橋だ。
深浦の入り江は、小木海岸の中でも特に深く美しい(深い入り江は、小木海岸の特徴で、地元では「澗(ま)」と呼ばれている。)。切り立った崖に囲まれた入り江の奥に十数件の民家。橋の上から眺めると、その美しい海岸を一望できる。(歩道の主塔付近は海側に歩道が飛び出していて、地上40メートルからスリリングな中にも眺望を楽しめる。)入り江はまるでフィヨルドのようだが、隆起を繰り返してできた地形だそうだ。

正に佐渡の自然美と現代土木の技術が融合してできた長者ヶ橋。何度か宿根木までは行ったことがあったが、その奥にこんな素晴らしい土木構造物とスポットがあったとは。ますます佐渡に吸い込まれそうだな。
(「長者ヶ橋」は、近くに縄文時代の遺跡・長者ヶ平遺跡にちなんだもの。深浦大橋とも言われている。沢崎方向の橋詰に「とるぱ(写真を撮るためのパーキング)」がある。「遺産」とするほど古いものではないが、注目の土木構造物としてこのブログでは「土木遺産」のカテゴリーとした。)



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