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江東デルタに「ミニパナマ運河」と呼ばれる扇橋閘門の存在

2023年02月06日 | 土木構造物・土木遺産


以前、中央区新川の亀島川水門、江東区永代の大島川水門を紹介してきた(いずれも東京都建設局江東治水事務所の管理)。大島川は前回触れた大横川が隅田川に合流する場所にあって、江東デルタ地帯を高潮や洪水から守っている。ただ、大島川水門に限らず、江東デルタを守るため隅田川や荒川と掘割(運河)の合流点には数多くの水門(樋門)や排水機場が設置されている。
これは江東デルタが海抜ゼロメートル地帯であることに由来するが、もともと低地で軟弱な地盤だったところに地下水の汲み上げなどにより、さらに地盤が沈下して洪水や高潮の被害にたびたび見舞われる場所になってしまった。ここでは水門なしでは生活できない地域なのだ。(写真上:東京都建設局の資料。特に三角デルタの東部、大島や砂町付近が低いことが分かる。)
加えて、荒川や江戸川の瀬替えや新河道開削などから河川ごとの水位の差もあり、もしかしてあるのではないかと探した土木構造物、それが閘門(こうもん)。新潟平野にもある施設で地元のものを紹介したいと思っていたのに、今回江東デルタを紹介するためには欠かせないものであるため先に紹介することにしたい。



実は、土木構造物という観点からは、こちらの「扇橋閘門」を見に行くことが主目的。閘門とは、水位の違う川(下流の方が水位が高いという場合)の上流と下流にゲートを設けて、その間の閘室に舟を入れて水位を調整して船を通航させるというもの。
扇橋閘門は、先に紹介した小名木川、江東区猿江のビル群の中にある。1977年完成。鋼製の単葉ローラーゲートを前扉・後扉に持ち、有効延長は110メートル、幅11メートル。サイフォン現象を利用して、隅田川方向の水を取り込んでいる。「ミニパナマ運河」とも呼ばれている。
舟運が衰退して、しかも荒川・隅田川の住宅密集地を流れる小さな川ということから船舶の利用は少なくなっているようだが、事業用船舶プレジャーボートの通航があるとのこと。水路自体も災害時の緊急物資輸送を想定しているということからも、閘門も陰で重要な役目を担っているといっていい。



調べてみると改修工事を終えたばかりということであるが、私が訪ねた日も堤防沿いに工事用のパネルが張り巡らされていて、残念なことに閘室を見学することはできなかった。一般開放をする日などもあるようだ。
前扉(隅田川方向)側を新扇橋から、後扉(荒川方向)を小松橋から眺めることができる。川沿いのマンションからだと、閘室の様子が手に取るようにわかるのだろうが、残念。新扇橋の扇橋方向の橋詰に案内板がある(写真上)。
ところがどっこい!小名木川を荒川方向に目をやると、もう一つ閘門が。旧小松川閘門は土木遺産ともいえる施設で残念ながら現役ではないが、ほかにも国土交通省関東地方整備局が所管するロックゲート(閘門)の存在を確認。さらに低地であるデルタの東側・小松川に向かうことにする(次回紹介したい)。
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