糸魚川と言えば、糸魚川静岡構造線上に位置し、砂金にも触れた通り市域全域が「ユネスコ世界ジオパーク」に指定されている町。ヒスイの里としても有名。そして「親不知」という、海に張り出した断崖絶壁は北アルプスの北端に位置するものとされ、日本海に山がせり出した場所は景勝地としても知られる。
この親不知は、正式には「親不知・子不知(おやしらず・子不知)」と言われ、その昔は断崖絶壁の下の小さな砂浜を波の合間を縫って人々が往来する危険な場所。親は子を、子は親を顧みることができないほどの難所であることから付けられたという。
この場所に道路(現在の国道8号)建設されたのは1883年。鉄道はというと少し遅れて1912年に北陸本線(現・えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン)開通した。鉄道もすでに開通して100年以上経過。災害防止のためにその後、新しいルートに変更されている。
そこにあったのが土木遺産である「親不知隧道(旧・親不知トンネル)」。親不知子不知でも最大の難所「天険(てんけん)親不知」の断崖絶壁を貫通させたもので、イギリスの工法を習ってでレンガを使用したトンネルは土木学会選書土木遺産に認定されている。
とにかくレンガの状態が良いとされているが、そのレンガは地元で製造され、急峻な崖下まで船で運び、また崖の中腹まで運ぶという先人の努力、そして硬い岩盤を手掘りで完成させという功労が暗いトンネルと危険な場所に光明となり、地元の発展に大きく貢献したところが大きい。
1965年(昭和40年)に複線化により新線が設けられたことにより廃線。合併後の糸魚川市や国土交通省により、「親不知コミュニティロード」が整備されたのをきっかけに、旧トンネルも遊歩道として周遊コースに組み込まれた。(コミュニティロードも土木遺産、日本の道百選。)
ただ、旧トンネルにたどり着くには、親不知子不知(ちょっとオーバー)の遊歩道を下って行かなければならない。海岸線に向けて急降下。体力に自信のない自分は、カメラを抱えながら期待半分、帰り道の登りを想像すると不安半分で歩き出す。
やがて朽ちた鉄橋が見えてきて、それを挟んでトンネル入口にたどり着く。10分ほど歩いただろうか?トンネル内もきれいに整備保存されている様子がうかがえる。遊歩道となっている久親知らずトンネル入口には、土木遺産のエンブレムが誇らしげに飾られている。
さらに、海岸までの急な階段もあったが、それも帰り道を考えると下までは行けない。トンネル長さは667メートル。暗いのも怖いし、帰りも遠くなる。仕方なくクルマを止めた駐車場まで来た急坂を上って戻ることにする。なかなか厳しい場所にある土木遺産だからこそ、価値があるのかもしれない。
(記事と写真の掲載順が一致していないが、国道8号・駐車場から旧トンネルへ、そしてさらに親不知海岸を眼下に確認するという行程に沿って上から写真を掲載した。悪しからず!)
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