町山智浩 2018年 文藝春秋
これは去年12月に買い求めた古本、出てたのも知らなかったんだけど、これまで何冊か読んだシリーズなんで、ひさしぶりに読んでみたくなった。
サブタイトル「言霊USA2018」ということで、週刊文春連載コラムの2017年3月から2018年3月分のもの。
当時はトランプ大統領だったんだけど、よくムチャクチャな発言するんで、そのネタが多い。
おどろいちゃうのは、トランプのツイートがノーチェックだってこと、広報とかのスタッフが文案とか推敲とか噛んでない、だから「Covfefe」とか打ち間違えと思われる意味ない言葉を発信しても本人が寝ちゃうとそのまま放置されてる、危機管理感まったくなし。
>(略)スパイサー報道官は、トランプが吐き続ける嘘やデタラメを、そのまま垂れ流してきた。記者に矛盾や事実との違いをいくら追及されても、スパイサーはまともに反論できず、イライラと顔を真っ赤にして「ピリオド!」と叫んで会見を打ち切ることが多かった。(p.163)
って、その報道官は半年で突然辞任しちゃったんだけど、そうだっけ、もう記憶ない、ちょっと前のことなのに、でも、また、そういうのが始まるのね、とほほ。
大統領本人だけぢゃなく、息子も娘も前面に出てきては、よくわかんないことをやらかす。
「長男ドナルド・トランプ・ジュニアは父を批判するツイートに突撃を繰り返す、トランプの番犬ナンバーワン(p.114)」なんだそうだが、大統領選挙中に、「ヒラリー・クリントンを罪に問える情報が、ロシア政府からのトランプ支援の一環としてあります」って言われたら、そいつはうれしいって答えて、ロシア政府とつながりがあると称する弁護士と面会したとか、だいじょぶなんか、そんなことして。
>さて、イヴァンカ絡みの言葉、「コンプリシト」が、ワード・オブ・ジ・イヤー、2017年の言葉に選ばれた。(略)
>4月、CBSテレビによるイヴァンカのインタビューが放送された。
>「あなたをコンプリシトと呼ぶ記事があります。どう思いますか?」という質問にイヴァンカはこう答えた。「コンプリシトであることが、善いことのための力になり、ポジティヴなインパクトを与えるなら、私はコンプリシトです」いや、そんないい意味じゃねえし。「コンプリシトがどういう意味か知りませんが」あてずっぽう言ったのか!(p.215)
とかって、ホントだいじょぶなんだろうか、大統領補佐官なんでしょ。
トランプ本人は、気に入らない相手いると徹底的に罵倒するし、都合のわるい情報に対してはフェイクニュースだとか決めつけるんだが、
>「トランプは精神的に不安定で大統領の執務には危険だ」
>去年2月、35人の精神科医がニューヨーク・タイムズ紙に意見広告を出した。リン・メイヤー博士は「大統領は『自己愛性人格障害』の疑いがある」と書いた。「この障害を持つ人は否定された時、激しい怒りを抑えられず衝動的に行動する可能性があります」
>そんな人に7000発の核弾頭の「デカいボタン」を預けておいていいの?(p.236)
って指摘されたこともあったらしい、困ったもんだね。
しかし、あのひとはビジネスマンだから儲かんないことはしないってのが、私のもってる印象、だから戦争は儲かんないからやんないんぢゃないかと、でも儲かるならミサイルのスイッチでも押しちゃうのかな。
イギリス国内での事件の情報を流出させちゃって、当時のイギリス首相はトランプと情報を共有しないことに決めた、とかって話もあるけど、たしかに機密保持とかできなさそうな感じではある、いっそケネディ暗殺の真相とかエリア51に何がどうなってるのかとか、ポロポロ出しちゃわないかな、みたいなヘンな期待をしちゃう。
トランプ・ファミリーの脇がちっとくらいあまくたってべつにいいんだけど、気になったのはロシアの工作の話。
30代白人女性というプロフィールのジェナ・エイブラミスのツイートは人気で、フォロワー数7万超えだったんだが、だんだん政治的内容の発言が増えてきて、保守的な意見で支持を集めてたんだけど、2017年10月にアカウントが凍結された、ってエピソードで始まる「Russian Troll Army」ロシア釣り軍団って一節。
>実はジェナ・エイブラミスという女性は実在しなかった。ロシア政府が対米プロパガンダのために作ったトロール(釣り)アカウントだったのだ。
>今年9月、ロシアの入金によるプロパガンダ広告を掲載してしまったと、フェイスブックが発表した。2016年の大統領選期間中、ロシア政府のプロパガンダ機関インターネット・リサーチ・エージェンシーからの入金で、フェイスブックは3000もの政治意見広告の載せた。(略)
>ロシアが出す広告は右寄りでトランプ支持なものが多い。たとえば「アーミー・オブ・ジーザス(キリスト軍)」という実在しない宗教団体のフリをした広告では、悪魔サタンがキリストと腕相撲をして「この腕相撲に勝てば選挙でヒラリーが勝つ」と言っている。(略)
>その逆もあって、たとえば「LGBTユナイテッド」という架空の団体の広告では反ゲイのキリスト教団体との戦いを、「目覚めたる黒人」という広告では、70年代風アフロヘアーの女性の写真を使ってアフリカ系アメリカ人に白人との闘争を呼びかけている。つまり、ロシアの目的はアメリカ国民を宗教や人種、イデオロギーで互いに対立させ、分断することらしい。(略)(p.190-192)
っていうんだけど、まんまと引っ掛かってるよね、うーむ、怖いっす。
それはそうと、本書のタイトルが「セクハラ帝国アメリカ」ってなってんのは、べつに政治家がその手の発言するからってだけなわけぢゃなくて、2017年10月ころから明らかになってきた映画界の話が注目を浴びてた時期だからってことがある。いわゆる「#MeToo」運動ですね。
>ハリウッドにはサイレント時代からキャスティング・カウチという言葉がある。(p.174)
ってことなんだが、当時セクハラの告発の中心だったのは、プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインなんだけど、追及のきっかけをつくったのが、
>「ノミネーションおめでとう!」2013年のアカデミー賞候補発表式で司会のセス・マクファーレンは助演女優賞候補の5人に行った。「もう、ワインスタインを好きなフリしなくてもいいですね!」(p.175)
ってとこからだった、ってのは知りませんでした。
これは去年12月に買い求めた古本、出てたのも知らなかったんだけど、これまで何冊か読んだシリーズなんで、ひさしぶりに読んでみたくなった。
サブタイトル「言霊USA2018」ということで、週刊文春連載コラムの2017年3月から2018年3月分のもの。
当時はトランプ大統領だったんだけど、よくムチャクチャな発言するんで、そのネタが多い。
おどろいちゃうのは、トランプのツイートがノーチェックだってこと、広報とかのスタッフが文案とか推敲とか噛んでない、だから「Covfefe」とか打ち間違えと思われる意味ない言葉を発信しても本人が寝ちゃうとそのまま放置されてる、危機管理感まったくなし。
>(略)スパイサー報道官は、トランプが吐き続ける嘘やデタラメを、そのまま垂れ流してきた。記者に矛盾や事実との違いをいくら追及されても、スパイサーはまともに反論できず、イライラと顔を真っ赤にして「ピリオド!」と叫んで会見を打ち切ることが多かった。(p.163)
って、その報道官は半年で突然辞任しちゃったんだけど、そうだっけ、もう記憶ない、ちょっと前のことなのに、でも、また、そういうのが始まるのね、とほほ。
大統領本人だけぢゃなく、息子も娘も前面に出てきては、よくわかんないことをやらかす。
「長男ドナルド・トランプ・ジュニアは父を批判するツイートに突撃を繰り返す、トランプの番犬ナンバーワン(p.114)」なんだそうだが、大統領選挙中に、「ヒラリー・クリントンを罪に問える情報が、ロシア政府からのトランプ支援の一環としてあります」って言われたら、そいつはうれしいって答えて、ロシア政府とつながりがあると称する弁護士と面会したとか、だいじょぶなんか、そんなことして。
>さて、イヴァンカ絡みの言葉、「コンプリシト」が、ワード・オブ・ジ・イヤー、2017年の言葉に選ばれた。(略)
>4月、CBSテレビによるイヴァンカのインタビューが放送された。
>「あなたをコンプリシトと呼ぶ記事があります。どう思いますか?」という質問にイヴァンカはこう答えた。「コンプリシトであることが、善いことのための力になり、ポジティヴなインパクトを与えるなら、私はコンプリシトです」いや、そんないい意味じゃねえし。「コンプリシトがどういう意味か知りませんが」あてずっぽう言ったのか!(p.215)
とかって、ホントだいじょぶなんだろうか、大統領補佐官なんでしょ。
トランプ本人は、気に入らない相手いると徹底的に罵倒するし、都合のわるい情報に対してはフェイクニュースだとか決めつけるんだが、
>「トランプは精神的に不安定で大統領の執務には危険だ」
>去年2月、35人の精神科医がニューヨーク・タイムズ紙に意見広告を出した。リン・メイヤー博士は「大統領は『自己愛性人格障害』の疑いがある」と書いた。「この障害を持つ人は否定された時、激しい怒りを抑えられず衝動的に行動する可能性があります」
>そんな人に7000発の核弾頭の「デカいボタン」を預けておいていいの?(p.236)
って指摘されたこともあったらしい、困ったもんだね。
しかし、あのひとはビジネスマンだから儲かんないことはしないってのが、私のもってる印象、だから戦争は儲かんないからやんないんぢゃないかと、でも儲かるならミサイルのスイッチでも押しちゃうのかな。
イギリス国内での事件の情報を流出させちゃって、当時のイギリス首相はトランプと情報を共有しないことに決めた、とかって話もあるけど、たしかに機密保持とかできなさそうな感じではある、いっそケネディ暗殺の真相とかエリア51に何がどうなってるのかとか、ポロポロ出しちゃわないかな、みたいなヘンな期待をしちゃう。
トランプ・ファミリーの脇がちっとくらいあまくたってべつにいいんだけど、気になったのはロシアの工作の話。
30代白人女性というプロフィールのジェナ・エイブラミスのツイートは人気で、フォロワー数7万超えだったんだが、だんだん政治的内容の発言が増えてきて、保守的な意見で支持を集めてたんだけど、2017年10月にアカウントが凍結された、ってエピソードで始まる「Russian Troll Army」ロシア釣り軍団って一節。
>実はジェナ・エイブラミスという女性は実在しなかった。ロシア政府が対米プロパガンダのために作ったトロール(釣り)アカウントだったのだ。
>今年9月、ロシアの入金によるプロパガンダ広告を掲載してしまったと、フェイスブックが発表した。2016年の大統領選期間中、ロシア政府のプロパガンダ機関インターネット・リサーチ・エージェンシーからの入金で、フェイスブックは3000もの政治意見広告の載せた。(略)
>ロシアが出す広告は右寄りでトランプ支持なものが多い。たとえば「アーミー・オブ・ジーザス(キリスト軍)」という実在しない宗教団体のフリをした広告では、悪魔サタンがキリストと腕相撲をして「この腕相撲に勝てば選挙でヒラリーが勝つ」と言っている。(略)
>その逆もあって、たとえば「LGBTユナイテッド」という架空の団体の広告では反ゲイのキリスト教団体との戦いを、「目覚めたる黒人」という広告では、70年代風アフロヘアーの女性の写真を使ってアフリカ系アメリカ人に白人との闘争を呼びかけている。つまり、ロシアの目的はアメリカ国民を宗教や人種、イデオロギーで互いに対立させ、分断することらしい。(略)(p.190-192)
っていうんだけど、まんまと引っ掛かってるよね、うーむ、怖いっす。
それはそうと、本書のタイトルが「セクハラ帝国アメリカ」ってなってんのは、べつに政治家がその手の発言するからってだけなわけぢゃなくて、2017年10月ころから明らかになってきた映画界の話が注目を浴びてた時期だからってことがある。いわゆる「#MeToo」運動ですね。
>ハリウッドにはサイレント時代からキャスティング・カウチという言葉がある。(p.174)
ってことなんだが、当時セクハラの告発の中心だったのは、プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインなんだけど、追及のきっかけをつくったのが、
>「ノミネーションおめでとう!」2013年のアカデミー賞候補発表式で司会のセス・マクファーレンは助演女優賞候補の5人に行った。「もう、ワインスタインを好きなフリしなくてもいいですね!」(p.175)
ってとこからだった、ってのは知りませんでした。