堀井憲一郎 平成29年4月 新潮文庫
私の好きなライター、ホリイ氏の文庫オリジナルの新刊。
前にも文庫書下ろし企画あったけど、そんときもディズニーだった。
ディズニーあんまり興味ない私としては、一瞬迷ったけど、それもほんの一瞬のことで、ホリイ氏を信頼してるから買った。
6月くらいに買って、2か月くらいどっか部屋んなか積んでおいちゃったけど。いいんだ、べつにディズニー行く用事もないし。
さて、タイトルから想像するに、どういうわけかディズニーに一緒に行くと、恋人たちってのは、別れる破目になるってのが問題になってんだと思われたんだが。
なんでかねえ、たしかに昔からよく言われることだ。一説には待ち時間が長くて退屈してると、それまでのつき合いでは見えなかった相手のヤなとこがわかっちゃうから、とかってんぢゃなかったっけ。
そういうのを回避するマニュアル本を、ディズニーウオッチャーのプロであるホリイ氏がつくっちゃったんだろうか。
なんかおもしろくなさそうだね、そういうのだったら、と思ったら、やっぱちょっとちがった。
まあ、そういうのを期待するひと向けに、そういう章もあります。午後7時に入園して、午後10時までにどうまわったら、ランドでもシーでも楽しめるかっていうパターンの披露。
(マネして実行するひと増えたら、また混まない? とか他人事ながら(私にとってはまちがいなく他人事)心配するが。)
そこ読んでも、私には出てくる固有名詞(アトラクションのことです)が形としてイメージできないので、とくにおもしろくはありません。
最初の二章もそうなんだ、ディズニーランドのどこどうまわるか、いつ何が混んでるか、みたいな話並べられると、しまった、門外漢にはこの本やっぱ失敗だったか、と一瞬思った。
でも、本題はその後で(たぶんそこ本題とだと思うんだけど)、第三章から第九章は、めちゃめちゃおもしろかった。
「はじめに」で、「ディズニーランドは、男と女の考え方の違いが出やすい場所」と言ってますが、何が違うのか、それがどう出ちゃうのかを、詳しく解説してくれてます。
うん、いいですねえ、ディズニーでどうまわればデートが成功するかってマニュアルなんかより、あらゆる場面で遭遇する男と女の衝突の要因の解明のほうが、はるかに役に立ちます。(←この、役に立つ、みたいな考え方が、すでにオトコ的のようで…。)
たとえば、って挙げるといっぱいになっちゃうけど。
男は「最終的に目的があってグッズを見る」のに対し、女は「見ているだけで楽しいから」って行動をとってたりとか。(p.44)
男がランドで道がわからないときに人に訊かないのは、「困ったときに他人の力を借りずに、自力で解決したい。そうしないと『負けた』と感じてしまうから」だとか。(p.64)(ちなみにランドでわからないときはすぐスタッフに訊くのが正解。)
男が「ランドが混んでいても、何とかうまく切り抜けたい」と考えたり、「ランドにあるものの背景を探ってその意味を読み取ろう」とすることは、無駄な抵抗であって、効率とか理由とかを求める世界ぢゃないとか。(p.81)(ちなみにディズニー側のねらいは、楽しく混乱させてやろう、で作っているそうです。)
対して、女性の側はランドでは解放されます。
たとえば、何にでも「かわいい!」と言っていい。男がモノの性能をあれこれ評価しだすと、理由づけや順位づけの議論が始まってしまうが、「かわいい」は自分ひとりがかわいいと思ってればそれでいい。(p.116)
ディズニーにはいろんなヒロインが出てくるけど、ヒロインたちのドラマの本質は「私が純粋な心を忘れずに生きていたら、すべてを受け入れてくれる人があらわれ、幸せになれた」だったりする。(p.125)
そこんとこで男性は成功した理由を知りたがるけど、女性は「幸せになったその状態」を自分のものとして感じたがる。(p.126) ディズニー世界では、努力しなさい、などとは言わず、思い出して、願うだけ、それで幸せになれる、ってのが提示されてる。(p.131)
あと、ディズニーにかぎらず、男と女の、細かい違いに気づく能力とか、会話の違いをあげてるとこもおもしろかった。
前に高橋秀実さんの本でも読んだような気がするが、女は同じ話リピートつづけられるけど、男はそれできない。
それは、「次の局面に向かって別の戦いに進まなければいけないのに(略)気がつくと同じ場所に戻ってきて(略)戦局が進んでいないし(略)そんなことでは、この戦に負けてしまうではないか」と思ってしまうからなのです。(p.160)
そこんとこ、女性からみれば、バカぢゃないのと思ってる。で、自分と相手の好きなものを共有と旋回(ぐるぐる)してたほうが気持ちいいと考えてる。(正確に言えば、実は“考えずに”やってる?)
笑ったのは、同じ章での「また話題の転換がすごい」って指摘。
>何もつながっていない話題への転換があっても、みな、その会話を引き受けている。(略)誰かの「そういえば」という転換語によっていきなり(略)の話に飛びました。すげえ。(p.161)
うん、たしかに、あの「そういえば」は、すげえ。
コンテンツは以下のとおり。
繰り返すけど、私には一・二章と十章は無用。十一章のあとの「おわりに」に、なぜ別れるのかの冷静な検証があったりする。
第一章 恋するディズニーデートの成功の秘訣
第二章 いつ行けば恋が成就し、いつ行けば喧嘩になってしまうのか
第三章 男の馬鹿と女の利口
第四章 男は人に道を訊くことができない
第五章 攻略するな
第六章 挨拶
第七章 女子は「かわいい」と言いたいためにディズニーに来ている
第八章 王子様の運命
第九章 会話
第十章 実際のまわりかた
第十一章 ディズニーランドでデートすると、なぜ、別れるのか
私の好きなライター、ホリイ氏の文庫オリジナルの新刊。
前にも文庫書下ろし企画あったけど、そんときもディズニーだった。
ディズニーあんまり興味ない私としては、一瞬迷ったけど、それもほんの一瞬のことで、ホリイ氏を信頼してるから買った。
6月くらいに買って、2か月くらいどっか部屋んなか積んでおいちゃったけど。いいんだ、べつにディズニー行く用事もないし。
さて、タイトルから想像するに、どういうわけかディズニーに一緒に行くと、恋人たちってのは、別れる破目になるってのが問題になってんだと思われたんだが。
なんでかねえ、たしかに昔からよく言われることだ。一説には待ち時間が長くて退屈してると、それまでのつき合いでは見えなかった相手のヤなとこがわかっちゃうから、とかってんぢゃなかったっけ。
そういうのを回避するマニュアル本を、ディズニーウオッチャーのプロであるホリイ氏がつくっちゃったんだろうか。
なんかおもしろくなさそうだね、そういうのだったら、と思ったら、やっぱちょっとちがった。
まあ、そういうのを期待するひと向けに、そういう章もあります。午後7時に入園して、午後10時までにどうまわったら、ランドでもシーでも楽しめるかっていうパターンの披露。
(マネして実行するひと増えたら、また混まない? とか他人事ながら(私にとってはまちがいなく他人事)心配するが。)
そこ読んでも、私には出てくる固有名詞(アトラクションのことです)が形としてイメージできないので、とくにおもしろくはありません。
最初の二章もそうなんだ、ディズニーランドのどこどうまわるか、いつ何が混んでるか、みたいな話並べられると、しまった、門外漢にはこの本やっぱ失敗だったか、と一瞬思った。
でも、本題はその後で(たぶんそこ本題とだと思うんだけど)、第三章から第九章は、めちゃめちゃおもしろかった。
「はじめに」で、「ディズニーランドは、男と女の考え方の違いが出やすい場所」と言ってますが、何が違うのか、それがどう出ちゃうのかを、詳しく解説してくれてます。
うん、いいですねえ、ディズニーでどうまわればデートが成功するかってマニュアルなんかより、あらゆる場面で遭遇する男と女の衝突の要因の解明のほうが、はるかに役に立ちます。(←この、役に立つ、みたいな考え方が、すでにオトコ的のようで…。)
たとえば、って挙げるといっぱいになっちゃうけど。
男は「最終的に目的があってグッズを見る」のに対し、女は「見ているだけで楽しいから」って行動をとってたりとか。(p.44)
男がランドで道がわからないときに人に訊かないのは、「困ったときに他人の力を借りずに、自力で解決したい。そうしないと『負けた』と感じてしまうから」だとか。(p.64)(ちなみにランドでわからないときはすぐスタッフに訊くのが正解。)
男が「ランドが混んでいても、何とかうまく切り抜けたい」と考えたり、「ランドにあるものの背景を探ってその意味を読み取ろう」とすることは、無駄な抵抗であって、効率とか理由とかを求める世界ぢゃないとか。(p.81)(ちなみにディズニー側のねらいは、楽しく混乱させてやろう、で作っているそうです。)
対して、女性の側はランドでは解放されます。
たとえば、何にでも「かわいい!」と言っていい。男がモノの性能をあれこれ評価しだすと、理由づけや順位づけの議論が始まってしまうが、「かわいい」は自分ひとりがかわいいと思ってればそれでいい。(p.116)
ディズニーにはいろんなヒロインが出てくるけど、ヒロインたちのドラマの本質は「私が純粋な心を忘れずに生きていたら、すべてを受け入れてくれる人があらわれ、幸せになれた」だったりする。(p.125)
そこんとこで男性は成功した理由を知りたがるけど、女性は「幸せになったその状態」を自分のものとして感じたがる。(p.126) ディズニー世界では、努力しなさい、などとは言わず、思い出して、願うだけ、それで幸せになれる、ってのが提示されてる。(p.131)
あと、ディズニーにかぎらず、男と女の、細かい違いに気づく能力とか、会話の違いをあげてるとこもおもしろかった。
前に高橋秀実さんの本でも読んだような気がするが、女は同じ話リピートつづけられるけど、男はそれできない。
それは、「次の局面に向かって別の戦いに進まなければいけないのに(略)気がつくと同じ場所に戻ってきて(略)戦局が進んでいないし(略)そんなことでは、この戦に負けてしまうではないか」と思ってしまうからなのです。(p.160)
そこんとこ、女性からみれば、バカぢゃないのと思ってる。で、自分と相手の好きなものを共有と旋回(ぐるぐる)してたほうが気持ちいいと考えてる。(正確に言えば、実は“考えずに”やってる?)
笑ったのは、同じ章での「また話題の転換がすごい」って指摘。
>何もつながっていない話題への転換があっても、みな、その会話を引き受けている。(略)誰かの「そういえば」という転換語によっていきなり(略)の話に飛びました。すげえ。(p.161)
うん、たしかに、あの「そういえば」は、すげえ。
コンテンツは以下のとおり。
繰り返すけど、私には一・二章と十章は無用。十一章のあとの「おわりに」に、なぜ別れるのかの冷静な検証があったりする。
第一章 恋するディズニーデートの成功の秘訣
第二章 いつ行けば恋が成就し、いつ行けば喧嘩になってしまうのか
第三章 男の馬鹿と女の利口
第四章 男は人に道を訊くことができない
第五章 攻略するな
第六章 挨拶
第七章 女子は「かわいい」と言いたいためにディズニーに来ている
第八章 王子様の運命
第九章 会話
第十章 実際のまわりかた
第十一章 ディズニーランドでデートすると、なぜ、別れるのか