10月も下旬、菊花賞も終わったというのに、夏日になるという、そんな陽気のなかを乗馬に行く。
さすがに半袖着てくのも何なんで、先週同様、長袖シャツ一枚で袖まくり。
馬は、オリアンダー。
(↑ おーい、いるか?って声かけると、「なんかウマイもんでも持ってるのか?」って顔を出す。)
やったね、ひさしぶりに乗れる。
喜んでいいくらい、いい馬だと思う。私が考えるに、私が思ってるよりずっといい馬なんぢゃないかと。数えるほどしか乗ったことないけど。
(そういえば、こないだテレビ出演もした。「S☆1」だっけ?取材に来たとき、障害飛んだりしてるとこ映された。)
たとえば、もし今、仮に、無制限でどの馬乗ってもいいから競技に出ろ、って話があったとしたら、私はオリアンダーを選ぶ確率かなり高いと思う。
(もちろん、選んだあと週五日の練習を1ヵ月やるという前提だけど。)
でも、そういえば、こないだ馬事公苑に出かけてって試合に出たらしいけど、なんかだいぶバーを落としたらしいな?
一方で、能力は高く買ってんだけど、私がオリアンダーに対して持ってるイメージは、わがままなヤツ、である。
なんか偉そうなんだよね。自分が人間より偉い「おウマ様」であることを知っている。人より自分が優先されることを当然だと思ってる感じ。高圧的なマエガキをして、「水だ!」とか「腹減った!」とか「ちゃっちゃと手入れ終われ!」みたいな態度とるようにみえる。
(私は乗ってるときでも、いつオリアンダーが「寝る、俺は砂浴びするぞ!寝るったら寝っ転がるんだ、俺は!」ってゴロンとかしないか、心配して様子をうかがってる。)
これはどうか分かんないけど、ほかの馬の馬栓棒はずしたら、「え、いいんですか?どっか行っても?でもなあ、どーしよーかなー、出たら怒られそうだしぃ」って遠慮するだろうけど、オリアンダーを放したら、スタスタどっか行っちゃって、気の済むまで遊んでこなきゃ帰ってこないような気がする…。ただし、メシの時間になったらいち早く帰ってくるのは間違いない。
ま、私のバカな想像はいいとして。
さてさて、馬装したら常歩。楽しい、この馬の揺れは、好きなんだよなぁ、私ゃ。いつまでも馬の背でユラユラと乗っていたくなる。(馬のほうは「重いんだよ、おまえはよっ」って思ってると思うが。)
ユラユラはいいんだけど、さっそく手綱を手繰り寄せてハミ受け。油断すると、グイーっと頭を前のほう・下に持ってくよ。ここで負けると、この後ずーっとナメられそうなんで、ガシッとおさえて、ほら譲れ!ってやってみる。カンペキではないけど、しょーがねーなーって感じでオリアンダーの口がこっちにやってきたりする。
そしたら馬場へ。
馬場のすぐ隣で草刈りの作業をしてるよ。ガーッてモーターの音のする機械でバリバリ刈って、でっかい熊手使ってワサワサ草をさらってたりするよ。面白いんで、さっそくオリアンダーを近づけてみる。
作業してる人のほうが気をつかってヤメようかとするんだけど、「どーぞ、どーぞ、続けてください」って言う。そんなん怖がってて乗馬できるかっつーの。(ただ、黄色いでっかいゴミ袋が出てきたときは、私もちょっと構えた。)
案の定、オリアンダーはビクともしない。おウマ様の彼のこと、きっと「下々の者が草刈りか、大儀である」くらいにしか思ってないんだろう。
回りながら見てみると、乗馬苑の引越のためのラチの撤去は終わってて、こないだまで芝馬場にあったラチが練習馬場に移動して置かれてる。こっちのほうが軽そうでいいなあ。
んぢゃ速歩。あれれ、常歩では出来てたつもりのハミうけも、速歩ではグダグダ。オリアンダーはせっせと動いてるようで、それでいてちっともこっちへ来ない。
それでいて、ノドの奥のほうから、gu~gurr~って、うなるような声出してるよ、怖ぇーなー。
ガンガンと前へ出してみようと思えば、それなりに動いてくれるんだけど、どーにもうまく乗れてない。困ったな、これは。
いちど常歩にして、腹帯を確認したりしてると、「アブミ、もうひとつ詰めて乗ってみませんか」と指摘される。
はい、カカトが下がってませんね。わかっちゃいるけど出来ない、カカト下げて、爪先は開かず真っ直ぐに。
常歩で気をつけて乗ってるうちは、まだバレないんだけど、脚使おうとすると、途端にカカトが上がる、アブミ踏んでない。
つまりは、そもそもが、脚の使い方、なってない。足に力を入れようとすると、ヒザを曲げてカカトを尻の方へ蹴り上げようとしている。ずーっと、そう、初めて馬に乗った時から、間違えっぱなし。
先週、ニアフュージョンが物見してるのを、前に出そうとして、バクバクいってる馬の鼓動を自分の脚で感じながらギュッと密着したときに、あ?こうやって接すればいいのかも!って思ったんだが、なかなか毎回うまくはいかないよ。
アブミの長さ変える穴が、短い間隔でたくさんついてるタイプの鞍だったんで、ひとつと言わず二つ詰めてみる。爪先でキュっとアブミをつかんで、脚の重みでカカトを下げるように意識する。
あいかわらず、どーにもうまくいってないんだけど、周りも動き出したんで、タイミングを合わせて、駈歩も始める。
ああ?左手前の輪乗りで、馬が外へ逃げるよ。右脚を引いておさえようとしてみたりしてるうちに、姿勢がグダグダ。
オリアンダー、性格はナマイキでキカナイ部分あると思うんだけど(ゴメンな、さんざ言ったりして)、扶助に対しては忠実。うまく縮めたりはできてないんだけど、指示すればサラッと駈歩は出るし、動いてっててくれる。
駈歩の歩度の詰め伸ばしは出来てないと思うんだけど、左右である程度走ったんで、もう一回速歩にする。
速歩で地上横木通過。しっかり回転、左右に逃がさない、真ん中通過、って心掛けて何度か繰り返し。少しずつ前に出てくる感覚が伝わってくる。
受けろ、譲れよ、ほら、ってやるんだけど、なかなか折り合い付かない。気がつくと、ずーっと引っ張りぱなしになってるんで、指をウニウニさせたり、断続的に力使うように気をつける。
今日は、嫌な予感したんで、めずらしく手袋をしてるんだけど(いつも素手で乗ってる)、これは素手で乗ってたら指の皮めくれてるなーって思う。
障害やりますか、ってんで、とてもまだ障害を飛ぶような状態ではない(前に出てない)とは思ったんだけど、さらにアブミを一個短くして、スタンバイする。
速歩で低いクロス。前に出して、回転を強く、外の手綱でまわって、とかいろいろ考えるんだけど、なんか勢いイマイチ。でも、障害の前で止まったりしないから、オリアンダー。自分のイメージよりだいぶ弱いけど、障害の前に連れてけば、とりあえず、ホイよ!とばかりに跨いでいく。
クロスの高さを上げて、やがて垂直に変えて。しかし、なーんかうまく飛んでかない。ガーッて勢いで向かってくタイプぢゃないんだけど、もうちょっと前に出てるのを抑えてく感じで入りたいんだけどな、私ゃ。障害の前でグイグイって圧さないと、止まっちゃいそうな気がして不安。
飛んだあと大きく回転、回ったら振り返ってまた障害を見ながら、そこで前に出して、出たら受けとめて、強い前進気勢のまま回転、正面に障害があるように向いたら何もしない。助走のあいだにいろいろやる、そんなイメージで、何回か繰り返し。
どーにもうまくいってないんだけど、止まったり落としたりしないまま、終了。
ほんと、この馬のポテンシャルは、みえない。
普通の馬に乗ってると、前に出ていく勢いイコール飛べる高さ、みたいな感じがするんだけど、オリアンダー(ウィスパーIIもね)は、そうぢゃない。スピードつけて向かってく感じぢゃなくて、でも、どんな障害でもポーンと上にあがって軽々と飛んでくれる。
障害練習終わったあとも、すこし駈歩で詰め伸ばし、そのあと速歩で輪乗りして、外の手綱意識して回って(んー、先週ニアフュージョンで、内側の脚でドンドンって押したら、外の拳でそれを受けるって感じ、ちょっと分かりかけたような気がしたんだけど、今日はまた分からなくなった)、受けてくれてたらラクにして伸ばす、また手綱短く持って受けること要求する、の繰り返し。
最初より少しマシになったかな。始めたときは、馬の口の重さ感じてたようではあるけど、それは全然前には出てなかったんだなって、気づく。ただ、馬が下のほうに、ノベーっともたれてただけ。もう一歩、ガンガンと前に出しとかないと、受けるもへったくれもない。
そしたら最後、こんど常歩で、またやってみる。お、ようやく出来てきたかも、引っ張ったりしないでも、馬の口がこっちきてコンタクトを保ち続けてセッセと歩いてくれてるよ。
終わるころに、どーやら分かりかけてきたんだけど、とき既に遅し。まあ、次回がんばりましょう。
厩舎に帰ったら、手入れ。ほっぽっとくと水飲みにダッシュとか、顔カイカイとか、己の意志のまんまに暴れまくるんで、降りた後でも言うこときけって諭しつつ面倒みる。
オリアンダーの場合は、すぐに前脚を冷やす。こういうのは早いほうがいいって聞いたことがあるんで、水だけ飲まして、洗い場につないだら、すぐホースを脚に巻いて冷やす。んで、待ってろよって言って、タオルとか取りに行ってるあいだに、もうバッタンバッタン前掻きして大変なことになってる。基本的にはおとなしいんだけど、なんかっつーと「早く終わらせてメシにしろー」ってマエガキするんでうるさい。
洗ったあと、拭いてやって、乾くのを待ってるあいだも、「いーかげん飽きたぁ!メシだぁ!」って言うんで、いよいよ奥の手のリンゴを取り出して、やる。そりゃ大騒ぎ。よく見ると、右前脚はカツンカツン床にぶつけて前掻きすんだけど、左前脚でやるときは空中でクルクル回してるよ、微妙に違うんだね。
それはともかく、リンゴ1個ペロリと食って、まだ収まらないから、仕方ないんでニンジン1本とってきて、やる。気づいたんだけど、人の手からエサ取るのヘタだな。差し出してやると、指ごとパクリと口んなかに入れようとする。
↑エア前ガキ。これをやる馬は、かわいい。(おまえは招き猫か!?とかツッコミつつ撫でてやる。)
んなことやってるうちに乾いたようなので、さっさと馬房に戻してやる。
今シーズン初めて馬着を着せる。きょうの午後は少しだけ暑いかもしれないけど、明日の朝はきっと寒い。