山崎浩一・文/ひさうちみちお・イラストレーション 一九九四年 小学館
8月ころに何冊かまとめて買った、山崎浩一氏の古本、ぼちぼち読んでって、いちおうこれで最後。
なるべく時代順に読んでくことにしたんだけど、本書の初出は1992年から1994年にかけて「週刊ポスト」だって。
各章のタイトルならべてくだけで、あの時代を振り返ることはできるんだが、80項目もあるから、やんない。
時事ネタをまくらにして、例によって情報に踊らされてるのか好きで踊ってんのかわかんない、記号の大国・ニッポンを切ってくんだが。
冒頭の章で、自らが週刊誌で仕掛けた『パラレルワールド通信』っていう、冗談で嘘八百なニュース記事の影響を紹介してて、そいつが面白い。
>「最近、OLや女子大生の間で剃髪して出家するのがブームになっている」という記事を捏造した。
んだそうである、「尼さんになりたい!」って特集かかげた女性誌の表紙まででっちあげるという徹底ぶりの遊び。
ところが、その記事発表後、ほかのテレビ、雑誌とかのマスコミから取材が殺到。
遊びの記事を事実として引用して展開するどころか、嘘の企画だと説明しても、それでも取材したいと言うとこまであったとか。
>たとえそれが明らかに虚偽として発せられた情報であっても、それを信じたい人には事実としてしか伝わらないのだ。人は信じたいことだけを信じたいようにしか信じない。(p.12「人間は嘘が大好きな生き物だ」)
っていうのは、この情報化社会の本質ついた、するどい指摘。
ほかにも、連合赤軍事件の裁判の判決が、なんも分析してないとこを挙げて、
>そう、「情報を摂取し蓄積し記憶し反復するのみ」という情報フェチ(略)ぶりにかけては、裁判官もまた今のこの国の情報的風土を如実に踏襲しているにすぎないともいえる。一連の情報の中からトータルな意味を発見するのではなく、ただ瑣末な断片的情報ばかりをオモチャにして鬼の首を取ったように悦ぶ情報フリーク。(p.95「連合赤軍事件判決と『磯野家の謎』ブームの共犯関係」)
なんて厳しく断罪してるけど、コミュニケーションツールがじゃんじゃん進歩しちゃった今ぢゃ、そのへんの事態はもっと醜いことになってるような。
あと、いつのことか自分では年代記憶してなかったんだけど、1994年4月の記事のなかで、国産の米が入手困難で、整理券配ったとか、ヤミで値上がりして取引してるとか、輸入米はいやだとかって騒ぎを起こしてる世の中について、
>平成コメ騒動などと呼ばれているものは、実はどうやら食糧問題ではない。情報問題なのである。
>ぼくたちは毎日毎日、コメよりもコメ情報をたらふく食らっている。コメには飢えていなくても、コメ情報には飢えている。いまや日本人の主食はコメではなく、コメ情報なのである。(p.299「《国産米》はどこかJリーグのチケットに似ている!」)
という具合に、冷静に観察して、実体から遊離したそのさまへの警鐘を鳴らしてくれてる。
>なにしろ食べていなくても「輸入米はまずい」とだれもが知ってしまっている奇妙な情報世界のできごとなのである。(p.301同)
って、そうだよなー、ヘンだ。
そういえば、その後もエマージェンシーに遭遇すると、ホントに必要かどうか考えもしねえで、すぐ物資買占めに動こうとしたりする脚質、相変わらずだよなって気がする。
なんか、そーゆーの見てっと、井戸に毒投げ入れたなんてデマを信じて在留外国人を虐殺したようなDNAって、脈々と受け継がれて体んなかに流れてんぢゃねえかなって思うときがある。
8月ころに何冊かまとめて買った、山崎浩一氏の古本、ぼちぼち読んでって、いちおうこれで最後。
なるべく時代順に読んでくことにしたんだけど、本書の初出は1992年から1994年にかけて「週刊ポスト」だって。
各章のタイトルならべてくだけで、あの時代を振り返ることはできるんだが、80項目もあるから、やんない。
時事ネタをまくらにして、例によって情報に踊らされてるのか好きで踊ってんのかわかんない、記号の大国・ニッポンを切ってくんだが。
冒頭の章で、自らが週刊誌で仕掛けた『パラレルワールド通信』っていう、冗談で嘘八百なニュース記事の影響を紹介してて、そいつが面白い。
>「最近、OLや女子大生の間で剃髪して出家するのがブームになっている」という記事を捏造した。
んだそうである、「尼さんになりたい!」って特集かかげた女性誌の表紙まででっちあげるという徹底ぶりの遊び。
ところが、その記事発表後、ほかのテレビ、雑誌とかのマスコミから取材が殺到。
遊びの記事を事実として引用して展開するどころか、嘘の企画だと説明しても、それでも取材したいと言うとこまであったとか。
>たとえそれが明らかに虚偽として発せられた情報であっても、それを信じたい人には事実としてしか伝わらないのだ。人は信じたいことだけを信じたいようにしか信じない。(p.12「人間は嘘が大好きな生き物だ」)
っていうのは、この情報化社会の本質ついた、するどい指摘。
ほかにも、連合赤軍事件の裁判の判決が、なんも分析してないとこを挙げて、
>そう、「情報を摂取し蓄積し記憶し反復するのみ」という情報フェチ(略)ぶりにかけては、裁判官もまた今のこの国の情報的風土を如実に踏襲しているにすぎないともいえる。一連の情報の中からトータルな意味を発見するのではなく、ただ瑣末な断片的情報ばかりをオモチャにして鬼の首を取ったように悦ぶ情報フリーク。(p.95「連合赤軍事件判決と『磯野家の謎』ブームの共犯関係」)
なんて厳しく断罪してるけど、コミュニケーションツールがじゃんじゃん進歩しちゃった今ぢゃ、そのへんの事態はもっと醜いことになってるような。
あと、いつのことか自分では年代記憶してなかったんだけど、1994年4月の記事のなかで、国産の米が入手困難で、整理券配ったとか、ヤミで値上がりして取引してるとか、輸入米はいやだとかって騒ぎを起こしてる世の中について、
>平成コメ騒動などと呼ばれているものは、実はどうやら食糧問題ではない。情報問題なのである。
>ぼくたちは毎日毎日、コメよりもコメ情報をたらふく食らっている。コメには飢えていなくても、コメ情報には飢えている。いまや日本人の主食はコメではなく、コメ情報なのである。(p.299「《国産米》はどこかJリーグのチケットに似ている!」)
という具合に、冷静に観察して、実体から遊離したそのさまへの警鐘を鳴らしてくれてる。
>なにしろ食べていなくても「輸入米はまずい」とだれもが知ってしまっている奇妙な情報世界のできごとなのである。(p.301同)
って、そうだよなー、ヘンだ。
そういえば、その後もエマージェンシーに遭遇すると、ホントに必要かどうか考えもしねえで、すぐ物資買占めに動こうとしたりする脚質、相変わらずだよなって気がする。
なんか、そーゆーの見てっと、井戸に毒投げ入れたなんてデマを信じて在留外国人を虐殺したようなDNAって、脈々と受け継がれて体んなかに流れてんぢゃねえかなって思うときがある。