many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

能登の白クマうらみのはり手

2017-09-30 18:15:04 | マンガ
山上たつひこ 昭和57年 秋田書店 少年チャンピオン・コミックス
今週月~金は、例によって、サラリーマンの街頭インタビューの聖地としておなじみの、新橋駅前SL広場で「古本まつり」をやってたんだが。
なんだかんだ毎日寄っては、なんかしら買ってしまった。(雨が一日だけというのはラッキーだった。)
出店してるテントが多いわりには、のんびり見てまわる時間がないこともあって、今回は意識して、マンガは無視してたんだけど。
最終日になって、やっぱ少し見ておくかと思って、特に古そうなもの置いてそうなとこ中心に、何を探すでもなくフラフラしてみたら。
ワゴンの上に背表紙だけ見える形で並んでるなかに、おや、これは、って見つけてしまったのが、本書。
私にとってはまったく見たことも聞いたこともない単行本だったけど、作者名と、タイトルの妙なおかしさに魅かれ、表紙の画をみたら、これ面白くないわけないだろと確信して、衝動買いした。
タイトル作「能登の白クマうらみのはり手」は、動物園の白クマの檻に落ちた女子高生を助けに入った高校二年生の男が、「秘技白クマ白刃取りーっ!!」を繰り出すという、とてつもないギャグマンガ。
あと、ロンドンで日本人が足が短いとバカにされたという情報をキャッチして、報復にミサイルにフグ毒をつめて撃とうなんていう、「大和民族体型保存会」が読めてよかった。
コンテンツは以下のとおり。(発表年は『文藝別冊総特集山上たつひこ』で調べた。)
・たつひこスーパー・フィクション(2)
「能登の白クマうらみのはり手」(1979年月刊少年チャンピオン8月号)
「大和民族体型保存会」(1980年月刊少年チャンピオン4月号)
・スタミナサラダ(1977年週刊少年マガジンNo.16~32)
「ニンニク顔のサラダくん!!の巻」
「うさぎちゃんが学校へ…!?の巻」
「サラダくんの大暴れ!?の巻」
「もてもて石狩くん!!の巻」
「不純異性交遊!!の巻」
・アルプス犬坊(1976年週刊少年マガジンNo.16~20)
「イヌ、こわい…!?の巻」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

あつかいにくいモデル

2017-09-24 19:07:15 | 読んだ本
E・S・ガードナー/宇野利泰訳 1985年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
スペンサーシリーズといっしょで遠距離移動の退屈な時間に読む、ペリイ・メイスンシリーズ、1961年の作品。
原題は「THE CASE OF THE RELUCTANT MODEL」、あつかいにくいっていうのは、操作しにくいってよりも、乗り気ぢゃない、渋々の態度ってこと?
メイスンのとこに最初にきた依頼人は、画商のひとりで、自分が富豪に売った絵を、べつの画商でインチキな野郎がニセモノだと言っているので、名誉棄損で訴えるんだという。
メイスンは、そんなことおよしなさいと言って、自ら訴えるとスキャンダルに巻き込まれて不利になるから、絵を買った富豪に訴訟を起こさせたほうがいいとアドバイスする。
ところで、問題の絵を偽作よばわりしたのを証言できるのは、ひとりの若い女性だけ、このブロンドで青い眼でスタイルがよい画学生が、もとはモデルしてた、あつかいにくいマキシーヌ。
もっとも最初は、メイスンの事務所にきて筋書きとおりに宣誓供述書をつくるのに協力したりしてくれてるんだけど。
トラブルがこんがらがってきて、もしかしたら富豪と画商の裁判の行方があやしくなるかもってときになって、理由は言えないけどこの土地を離れなければならない、なんてメイスンを裏切るようなこと言いだす。
そんなことでゴタゴタしてるうちに、彼女のアパートでポケットに百ドル紙幣をいっぱい詰め込んだ男の死体が転がってるのを、メイスンと秘書のデラが見つける破目になってしまう。
すぐに元モデルのマキシーヌは殺人容疑で捕まってしまうが、最初に名誉棄損の相談にメイスンのところへきた画商は、マキシーヌの弁護をメイスンに依頼する。
かくして、いつものように状況は圧倒的に不利ななかで、殺人事件の予審が始まって、メイスンは反対訊問でがんばることになる。
一方で、殺人の背景にからんでくる絵画の問題についても、模写・偽作の達人であるビート族の男が依頼を受けて絵を描いたことがわかったりして、なにが本物でなにがニセモノだったのか話が複雑になってくる。
かくして、メイスンは「ぼくが帽子のなかから、肥って元気のいいウサギでもとりださないかぎり、判事はマキシーヌを公判にまわしてしまうだろう。しかし、ぼくはもう一歩もあとへひかないよ。(略)ぼくの策戦としては、暴れまわって、さわぎをいよいよ大きくし、だれがだれを、どんな理由で起訴しているのか、見当もつかぬような状態にしてしまうことにあるんだ」とか言って、常識では考えられない、予審で被告を証言台につかせるという禁じ手を使って勝負する。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

盗まれた貴婦人

2017-09-23 21:54:00 | 読んだ本
ロバート・B・パーカー/加賀山卓朗訳 2012年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
帯に「最新刊」ってあるけど、5年前のもの、版重ねたりしてない、売れ残りの文庫新刊、ことし3月くらいに買ったと思う。
読んだのは、例によってどこかへの出張道中、夏のあいだのいつか。
スペンサー・シリーズの38作目、原題は「Painted Ladies」、貴婦人ってのは、絵に描かれた貴婦人。
依頼人は美術史の大学教授で、17世紀の名画『貴婦人と小鳥』が美術館から盗まれて、要求されたとおり金と交換することになったが、その場へ護衛として同行してほしいという。
ところが車の運転席で取引が終わって教授が戻ってくるのを待っていると、目の前で教授は殺害されてしまう。
誰であっても防げたとも思えないが、当然スペンサーは気に入らない、プライドというより存在価値をかけて、事件を解決しようと意志固める。
かくして、誰も依頼人がいないのに、一銭にもならないのに、捜査を始める、なんかシリーズ後半に入ってこのパターン多いな。
でも、関係する美術館とか保険会社とか行っても、当然のことながら歓迎されない。
どんなことでもとっかかりがほしくて、過去のシリーズのコネクション総動員してFBIとか美人弁護士のリタとかお馴染みにも情報求めたりもする。
あと大学へ行って、女子学生に自分の魅力をチラっと見せること意識ながら話を聞こうとするのは、シリーズ序盤から変わんないお決まりのパターン。
ちなみに、大学周辺で関係者にあたってくと、死んだ依頼人の教授はあんまりいい人でもなかったような気配が見えてくる。
で、あっちこっち突っつきまわったのが功を奏したのか、ある日スペンサーのオフィスに待ち伏せる襲撃者が現れる。
このときの対処が、いかにもスペンサーシリーズ。
ドアを開ける前に異変に気づくと、通りの反対側の建物に行って、そこから自分のオフィスを双眼鏡でのぞいて、敵が二人ひそんでいるのを見つける。
そしたら銃を用意して、オフィスの扉にもどり、ドアを開けて、敵が動き出すをの待って、撃ち殺す。
狙われてるのがわかった時点で警察呼んだりしないのか、そういう一般市民的な疑問は、スーザンが代わりに訊いてくれるのがこのシリーズだ、「どうして警察を呼ばなかったの?」
スペンサーの答えは「考えてもみなかった」だ。スペンサーは理解者スーザンに言う、「訊くまえから、きみには答えがわかってた」
スペンサーいわく「おれがいましてることを続けたければ、トラブルに際して警察を呼ぶ男であってはならない」(p.125)
さすが、依頼人も報酬もないのに自分のために事件を追っかける男は根性がちがうんである。
悪党を撃ち殺しても、地元警察に絶大なる人気があるので、すぐ無罪放免されて、なお捜査を続ける。
そうすると二度目の襲撃、こんどは自宅に爆弾がしかけられる。
家ごと吹っ飛ばすとかって凶暴なのぢゃなくて、ベッドに座ったら人ひとり殺す分の爆発起こすようなもの、高度なプロの仕事。
運よく難を逃れたスペンサーに、お馴染みの部長刑事ベルソンが、ヴィニイでもチョヨでもテディ・サップでも、誰かシリーズ登場人物の腕利きガンマンをバックアップに呼んだらどうかって提案する。
ところが、スペンサーは首を振って「こいつはおれが追う」と言う、この一件に関してはかなり意地になってる、存在価値がかかってるからね。
で、次第に事件の核心に迫ってくと、ホロコーストのあいだにナチスに奪われた美術品を正当な所有者にとりかえす財団、なんて大がかりな話になっていく、そういう歴史的な問題につながる展開は珍しいような気がする。
ま、事件はどうせ解決するからいいんだけど、本作で印象に残ったシーンには、最初の襲撃のあとで、スペンサーが家でひとりでブラック・ブッシュのロックを飲みながら考えるとこがある。
>強烈な幸福感をともなう瞬間は、すべてスーザンとすごしてきた。彼女を見るたびに、ぞくぞくするような興奮を覚える。(略)
>それでも、こうして立って、動きのない通りを見おろしていると、孤独を愛しているのがわかる。(p.149)
っていうんだけど、前段はめずらしくもない、いつものことなんだが、そのあと、会えなくて寂しいとかって言うことがシリーズ中盤から多かった気がするんで、ちょっと変わったモノローグと感じた。
そのあとには「私たちはまったく似ていない」とも独白する。危機回避についてディスカッションして、オトナになったかあ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RUFFY TUFFY

2017-09-18 18:17:51 | 忌野清志郎
忌野清志郎 1999年 ポリドール
思いがけないとこでキヨシローの声を耳にすることがいちばん多いのは、「デイ・ドリーム・ビリーバー」ということになると思う。
なんでCMとかに使われてるんだろうね、あれ。ま、私ゃ好きだからいいんだけど。
それはいいとして、今回はちと「田舎へ行こう!」が流れてるのを聞いて、このアルバムを出してきてみた。
うーん、あんまりトンガったところがなくて、それほど好みとはいえない一枚ということになるかな、私にとっては。
この時期のキヨシローはあまり熱心に聴いてなかったかもしれない、私は。
すこしそれまで聴いてた音楽と距離おいちゃってたころだったような気もするし、あのころ。
ところが、こんなノンビリ調のアルバムのあとに、突如「君が代」出したりするんだから、油断がならない、キヨシローってば。
1.テクノ・クイーン
2.心の解放区
3.レッド・ニャンニャン
4.太陽の当たる場所
5.風だらけ
6.QTU
7.田舎へ行こう! Going Up The Country
8.ハニーブルーズ
9.Sweet Lovin'
10.夢
11.出発の時間
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

彼方へ

2017-09-17 20:15:24 | 丸谷才一
丸谷才一 昭和52年 集英社文庫版
古本屋で買った、丸谷才一の中編小説、巻末解説込で144ページという薄い文庫だが。
値段の話しちゃおかしいが、高かったよ。
昭和52年10月の2刷だが、定価160円のところ450円の値がついてた、281.25%って、もしかして自分のもってるなかでも最高値かも(笑)
さて、なかみはというと、著者にはめずらしく現代仮名づかいで書かれている。
>グレイのスラックスにグレイのセーターの真佐子がタイプ用紙を入れて巻込みかけたとき、派手なグリーンの背広の大久保健は、マントルピースの上の富士山の置物を指で叩いて、にやっと笑った。
とか、
>正が自分でさえ気がつかないくらい歩度を落したとき、ノリコは、健の手にした水割りのグラスに自分のグラスをかちんと合せた。
とかって、一続きの文のなかで、場面展開を変えるというか、フォーカスをあてる登場人物を切り替えるといった、変わった技法を使っているのが目についた。
厄年くらいの会社重役の兄と、8つ下の舞台俳優やってる弟が主人公。
兄は会社のタイピストと浮気してるし、弟は女性タレントと逢瀬を重ねている。
兄の浮気相手の26歳という若い女性が、死後の世界を信じている、
>人間にとっての死後というのは、会社勤めの女の子にとっての結婚生活に当る。女の子にとって会社勤めが仮りの生活であるように、人間にとってこの世の精は仮りの宿りにすぎぬ
とか、ヘンなこというもんだから、そのことを兄弟で話し合ったあと、二人ともなんか死後のこと考えるのが頭の片隅にひっかかってしまうようになる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする