トルーマン・カポーティ/佐々田雅子訳 平成18年 新潮文庫版
カポーティって、じつは読んだことなかった、これまでいちども。
『心臓を貫かれて』の「訳者あとがき」を読んでたら、ノーマン・メイラーがゲイリー・ギルモアの事件をとりあげて『死刑執行人の歌』を書いたのは、
>カポーティーがその少し前に『冷血』で大成功をおさめたことを念頭において(たぶん)
とか、それでもメイラーの本は読んでいてかなり退屈で、
>その点においてカポーティーの『冷血』のほうがはるかに、同時代的に生き残っていると思う。
とかって、本書がひきあいに出されてるのを見て、読んでみる気になった。
原題『IN COLD BLOOD』って本書は1965年の刊行。
1959年11月にカンザス州で起きた、一家四人惨殺事件を題材にしたもの。
評判のよい農場主と、奥さんこそちょっと神経質で病気みたいなとこあるけど、娘さんなんかは非の打ちどころのない人柄も学校の成績も良いコ。
要するに、事件のあと誰にきいても、「よりによって、クラッター一家が殺されるなんて、いちばんありそうもないことなのに」という家族。
犯人は二人組。
どっか何かの本でみたかもしれないけど、ひとりはサイコパスと呼ぶのにふさわしいね。
計画を立てた主謀者のほうの、ディックこと、リチャード・ユージーン・ヒコックは、逮捕後の医師の診立てによれば、
>知能においては平均以上であり、新しい観念を苦もなく理解し、情報も幅広く蓄積しています。(略)
>行動が衝動的であり、それに伴う結果、もしくは、将来、自分自身や他人がこうむる不快を考えずに、ことを行う傾向が彼にはあります。
>また、経験から学ぶことができないように思われ、断続的に生産的な活動を行っては、そのあと、明らかに無責任な行動をとるという以上なパターンを繰り返し示しています。(略)
っていう性質、サイコパスなんだからしかたない。
(妙にサイコパスって存在に興味のある私。)
得意技は、インチキ小切手の振り出し。預金なんか一銭もないくせに、買い物をしては適当に小切手を書いては相手に受け取らせる。
初対面の店の人間をあっという間に信用させてしまう、その表面的な魅力は、まぎれもないサイコパスの特徴のひとつ。
そんなディックに、こいつこそ「“生まれついての殺し屋”―間違いなく正気なのだが、良心のかけらもなく、動機の有無にかかわらず冷酷無比な死の一撃を加えられる人間―だ」と見込まれちゃったのが、もう一人の犯人、ペリー・エドワード・スミス。
ディックと出会ったのは刑務所のなかだけど、誘いに応じて期待されるがままに、銃の引きがねを引く役目を担当することになってしまう。
彼のほうは、幼少期に両親の残虐性と無関心のせいで精神を病んぢゃったっていう疑いはあるんだけど、それにしたって怒ったときの自制心のなさと冷淡さは異常。
捕まったあとの自白では、
>あの人に手出ししたくはなかったんです。立派な紳士だと思ったし。ものいいの穏やかな。あの人の喉を掻っ切る瞬間までそう思ってました。
とか、
>悔いてるかって? あんたがそう聞いてるんだったら―悔いてはいないな。おれはあのことについては何も感じてないんだ。感じられればいいんだが。でも、あのことではこれっぽっちも悩んでないよ。
とか、なにその責任感の欠如?って感じ。
実の姉に手紙を出しても、その返事には、
>あなたが今、収監されていることには、お父さんだけでなくわたしも当惑しています―あなたが犯したことのためではなく、あなたが真摯な後悔の様子を見せず、どんな法律も人間も何も尊重していないように思えるからです。あなたの手紙は、自分の問題の責任はほかの人の責任であって、けっして自分の責任ではない、といっているように読めます。(略)
なんて書かれてしまったりする、この姉は弟のことを恐れて居場所を知られないようにしていたりするから、ムリもないけど。
カポーティって、じつは読んだことなかった、これまでいちども。
『心臓を貫かれて』の「訳者あとがき」を読んでたら、ノーマン・メイラーがゲイリー・ギルモアの事件をとりあげて『死刑執行人の歌』を書いたのは、
>カポーティーがその少し前に『冷血』で大成功をおさめたことを念頭において(たぶん)
とか、それでもメイラーの本は読んでいてかなり退屈で、
>その点においてカポーティーの『冷血』のほうがはるかに、同時代的に生き残っていると思う。
とかって、本書がひきあいに出されてるのを見て、読んでみる気になった。
原題『IN COLD BLOOD』って本書は1965年の刊行。
1959年11月にカンザス州で起きた、一家四人惨殺事件を題材にしたもの。
評判のよい農場主と、奥さんこそちょっと神経質で病気みたいなとこあるけど、娘さんなんかは非の打ちどころのない人柄も学校の成績も良いコ。
要するに、事件のあと誰にきいても、「よりによって、クラッター一家が殺されるなんて、いちばんありそうもないことなのに」という家族。
犯人は二人組。
どっか何かの本でみたかもしれないけど、ひとりはサイコパスと呼ぶのにふさわしいね。
計画を立てた主謀者のほうの、ディックこと、リチャード・ユージーン・ヒコックは、逮捕後の医師の診立てによれば、
>知能においては平均以上であり、新しい観念を苦もなく理解し、情報も幅広く蓄積しています。(略)
>行動が衝動的であり、それに伴う結果、もしくは、将来、自分自身や他人がこうむる不快を考えずに、ことを行う傾向が彼にはあります。
>また、経験から学ぶことができないように思われ、断続的に生産的な活動を行っては、そのあと、明らかに無責任な行動をとるという以上なパターンを繰り返し示しています。(略)
っていう性質、サイコパスなんだからしかたない。
(妙にサイコパスって存在に興味のある私。)
得意技は、インチキ小切手の振り出し。預金なんか一銭もないくせに、買い物をしては適当に小切手を書いては相手に受け取らせる。
初対面の店の人間をあっという間に信用させてしまう、その表面的な魅力は、まぎれもないサイコパスの特徴のひとつ。
そんなディックに、こいつこそ「“生まれついての殺し屋”―間違いなく正気なのだが、良心のかけらもなく、動機の有無にかかわらず冷酷無比な死の一撃を加えられる人間―だ」と見込まれちゃったのが、もう一人の犯人、ペリー・エドワード・スミス。
ディックと出会ったのは刑務所のなかだけど、誘いに応じて期待されるがままに、銃の引きがねを引く役目を担当することになってしまう。
彼のほうは、幼少期に両親の残虐性と無関心のせいで精神を病んぢゃったっていう疑いはあるんだけど、それにしたって怒ったときの自制心のなさと冷淡さは異常。
捕まったあとの自白では、
>あの人に手出ししたくはなかったんです。立派な紳士だと思ったし。ものいいの穏やかな。あの人の喉を掻っ切る瞬間までそう思ってました。
とか、
>悔いてるかって? あんたがそう聞いてるんだったら―悔いてはいないな。おれはあのことについては何も感じてないんだ。感じられればいいんだが。でも、あのことではこれっぽっちも悩んでないよ。
とか、なにその責任感の欠如?って感じ。
実の姉に手紙を出しても、その返事には、
>あなたが今、収監されていることには、お父さんだけでなくわたしも当惑しています―あなたが犯したことのためではなく、あなたが真摯な後悔の様子を見せず、どんな法律も人間も何も尊重していないように思えるからです。あなたの手紙は、自分の問題の責任はほかの人の責任であって、けっして自分の責任ではない、といっているように読めます。(略)
なんて書かれてしまったりする、この姉は弟のことを恐れて居場所を知られないようにしていたりするから、ムリもないけど。
