many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

はい、泳げません

2018-02-25 18:26:55 | 読んだ本
高橋秀実 平成19年 新潮文庫版
最近になって古本で手に入れたヒデミネさんのおなじみ体験取材もの。
泳げなくて水が怖いのに、あるとき泳げるようになろうと思い立って、スイミングスクールに通って悪戦苦闘した体験記。
ほかのひとが普通にできることを、なかなか簡単にはできないひとの困ってしまっているとこを、例によって深く細かく掘り下げてってんのがおもしろいんだが。
私ゃ、ダメだったな、この本は。だって、すぐ泳ぐのヤメて、立っちゃうんだもの。そういうの読んでると、イライラしてきた。
状態を確認するために立った、みたいな言い訳して、すぐプールの底に足つくんだが、それって絶対泳ぐ気ないだろって言いたくなっちゃう。
それにしても、「できてるのに、なんで立つかなあ?」と怒ったりあきれたりする、本書の主要登場人物の高橋桂コーチの教え方はうまくて、そこは読んでためになる。
手で水をかくんぢゃなくて、「水をおさえるんです。水をおさえて、体重移動で、前に進むんです」(p.40)とか、「この手の平の向きが、体の向きなんです」(p.64)とか、思うように身体を動かせないひとに対して、すごくわかりやすい表現をつかって教える。
コーチが職業だからとはいえ、どうしてこんなに説明の引き出しいっぱいあるのかと感心しながら読んでくと、いちど交通事故にあって全身打撲で身体が動かせない状況になったことがあるという過去が明かされていた。
>動けなくなって初めて、身体を動かすということがどういうことかわかったんです。どこかが動くということは、結果的にそう見えているだけで、そこを動かすことじゃなかったんです(p.117)
というのは、大変な経験をしたことがあるからこその卓見か。
水泳ってのは、手を回したり足で蹴ったりして進むものぢゃなくて、「全身の力を抜き、脇を交互に伸ばしながら体をひねる」(p.117)というのが動きの本質らしい。
そういう言葉をみると、それは私にとって新しい世界なので、ちょっと、泳いでみたくなった。
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これから泳ぎにいきませんか

2018-02-24 17:44:35 | 穂村弘
穂村弘 2017年 河出書房新社
年明けすぐごろだったか、書店でみかけて、おやと思った。
また不思議な響きのタイトルだなあ、エッセイ集かな、いつものようにちょっとした日常のなかでドキッとした言葉に出会った瞬間とかそういう系っぽい。
そんな印象を受けて、手にとってよくみたら、サブタイトルは「穂村弘の書評集」、そうなんだ、そういう仕事もありだったのか。
目次サラサラと見たら、知ってるマンガの名前なんかもあったんで、安心して買い。
巻末の初出みたら、第一部の書評集は、2000年代後半以降に、朝日新聞とかGOETHEに載ったものらしい。
第二部は、文庫本の解説とか集めたもの。
とりあげられてるなかみは、当然短歌に関係したものがわりと多いけど、マンガとか小説とかもあって、いろいろ。
表紙のタイトル見て、おっと思わされた「これから泳ぎにいきませんか」というのは、編集者だった二階堂奥歯さんという女性が、穂村さんと晩御飯たべながらの仕事の打ち合わせの終わりがけ、もう夜10時過ぎだというのに、突然言い出したことだと判明。
鋭敏な感覚と高度な認識をもったひとで、若くして亡くなってしまったらしいが、いまだに穂村さんをして「二階堂さんだったら、こんな時なんて云うだろう」と思わせる存在だったらしい。それ、ちょっと読んでみたいかも、本書収録されてるのは、『八本脚の蝶』という本への寄稿文。
どうでもいいけど、「まえがきにかえて」という冒頭のイチのイチの場所に、
>知り合いの青年に「本は読まないの?」と尋ねたら「ほむらさんはダンスしないんですか?」と聞き返されたことがあります。読書は人生の必修科目でダンスは選択科目、というのはもう古い感覚らしい。
とあって、つくりばなしかもしれないけど、かなりドキッとさせられた。
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証言UWF最後の真実

2018-02-18 17:38:10 | 読んだ本
前田日明+藤原喜明+山崎一夫+船木誠勝+鈴木みのるほか 2017年 宝島社
なぜか出版ブームっぽいUWF、というわけでその策略にはまるべく、複数のものを読んでってる私。
これは2冊目、帯に「『1984年のUWF』への前田日明の反論」なんて書いちゃってるけど、出版社ちがうのに便乗して続編のようなもの出すかね。
前回私が読んだ『1984年のUWF』は、佐山だけに思想があって、ほかのプロレスラー連中はカネのことくらいしかアタマにない、って調子だったんだが。
本書は、著者名んとこにずらっとレスラーの名前並べてるけど、よーはインタビュー集。
まえがきんとこに「本書は証言者たちの生の声を最大限に生かすため、説明文は最小限にとどめた」なんて書いてあるけど、そういうのって雑なような気がする。
で、のっけから日明兄さん登場すんだけど、
>UWFというものを俺の知らないところで偉そうに語ってるひといるでしょ。いまになってUWFを否定する連中ってのは、全部あと出しジャンケン。当時の状況をなにも知らない、もしくは忘れてる連中だよ。(p.69)
と堂々と言ってます、カラダ張って先頭立ってたのに、外野がいまになってゴチャゴチャ言うなってことか。
佐山のやろうとしてたことについては、わからんでもないけど、それでどうやって若いレスラーが食っていけるのかが見えないから実現できなかったということのようだ。
>それであの人はね、すぐに『これが実現できなかったら俺は辞める』って言うんだよ。(p.28)
ってのも、すごい不満だったようで、まあ佐山以外のメンバーは生活がかかってたと。
でも、時代を追って読んでくと、なんか繰り返される展開みたいのがあって、最初のころ、佐山だけは道場に来なくてとかって話なんだが、新生UWFが好調になってメディア露出とか増えてくと、前田は練習しにこないみたいな話になってくる、若いひとたちから見ると。
ちなみに、なんか一貫して若いひとたちに支持されてるように思えるのは、高田。それにスパーリングでもいちばん強いという評が多い。
結局、前田はレスラーたちのこと思ってフロントと対立したはずなのに、若手まですべてをまとめることができず、解散に至ることになっちゃう。
>あの頃、俺は民主主義というものを勘違いしてた。(略)とにかくみんなの意見を平等に聞かなきゃいけない、取り上げなきゃいけないって思ってた。本当はなにをやらなきゃいけないかって言うと、一番頑張ってるヤツから意見を聞かなきゃいけないんだよね。その代わりその人間は責任も取ると。(p.52)
という具合に、いまになれば前田も冷静に振り返ってはいますが。
前田についてけない、若手だけで団体をつくろうとしたとされる宮戸優光のインタビューとかもおもしろいけど、やっぱ宮戸も、
>いまになってUWFやプロレスについてわかったようなことを言う人がいますけど、そう簡単にわかりやしないですよ。(略)プロレスは、そんな簡単なものじゃないんですよ。(p.227-228)
というようなことを言ってる。
一方で、鈴木みのるは今さらあーだーこーだ言いたくないという気持ちが強そうで、
>さらに、文章で仕事してる人たちがいろんな話を聞いて、それをまとめるからおかしくなっちゃうんです。(略)本来、まとめちゃいけない話。それぞれの人間にそれぞれの葛藤があったわけで。(p.287)
みたいに、本書も含めてんだろうな、プロレスマスコミのこと批判することまで言って、最後には、
>いろいろ話したけど、正直どうでもいいっス。30年前の話ですよ!? いつまで昔の女引きずってるんですか。(p.291)
と言う、いい了見だと思う。
団体のゴタゴタは抜きで、船木のインタビューんなかで一番おどろいたのが、前田との初めての一騎打ちのあと、
>『気持ちはわかるけど客が盛り上がっていない。客を教育するのにあと5年かかるから、順番を飛ばさずにやっていこう』と言われました。(p.260)
っていう前田の言葉、うーん、そうだったのか、格闘王も苦労する。
あと、前田のインタビューのなかで、そんなんあったのかって思ったエピソードが、第一次UWFがうまくいかなくて提携ってことで新日マットへ帰るときに、実は全日本とも接触してて、馬場と交渉したら、前田と高田だけならいいが全員は無理って言われたって話。さすが馬場社長、ビジネスの実力は誰よりもすごい。
コンテンツ、登場人物は以下のとおり。
第1章 「前田日明」の苦悩と怒り 前田日明
第2章 「U」創成期の真実 更級四郎 杉山頴男 ターザン山本
第3章 「U」に賭けた男たち 藤原喜明 山崎一夫
第4章 「U」に翻弄された男たち 新間寿 上井文彦
第5章 「新弟子」たちの叫び 中野巽燿 宮戸優光 安生洋二
第6章 「新生」を生き抜いた男たち 船木誠勝 鈴木みのる 田村潔司 垣原賢人
第7章 「崩壊」の目撃者たち 川崎浩市 尾崎允実
巻末の1983-1991 History of 「UWF」って年表はわかりやすい。
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リバーズ・エッジを観てきた

2018-02-17 18:12:23 | Weblog
というわけで、小沢健二の出演してた昨夜のテレビ番組の録画を観てたら、そんな気になって、朝イチの回で「リバーズ・エッジ」を観に映画館まで行くことにした。
約2時間か、標準だと思うけど、近ごろは長いと思うことが多くなったような気がする、100分くらいでまとめてくれちゃわないかね映画ってだいたいのところ、というように。
感想は特にすぐいいとかよくないとか言うところもなし、って感じか。
特に期待してたわけでもないし、ナマイキいうようですが。どうしても映画化してほしかったわけでもないし。
私の趣味としては、原作のイメージ超えんのは難しいんだから、そんなに忠実に作んなくてもいいのに、って気がする。
映画は映画のオリジナルなもの(正確にいえば脚本の問題ということなんだろうが)目指していただいたほうがいいと思う、ちょっとその片鱗はあったけど。
特に小説とちがってマンガの映画化は、すでに原作にビジュアルあるから、それどうすんのかは難しい、登場人物の衣装や髪形を似せればいいというものでもなさそう。
たとえば、田島カンナが自分の思い込みだけで山田くんに望まれてはいないセーターを編んでる異様な眼つき(原作のp.166)、あれを実写化すんのはムリだろうから、ぢゃあどうしたらいいのかって脚本で考えなきゃいけないんだろうし。
まあ、そういうこといろいろ考えながら観てたら、ふと、誰もケータイすら持ってない、この90年代前半ころの話、現在のひとたちにはわかるのかなあと心配になってきた。(電話ボックスから緑の公衆電話で電話かけるシーンが出てくる。)
むしろ、スマホもってて、LINEだかなんだかでやりとりしてる現代の高校生に置き換えて、それで話の大筋はリバーズ・エッジであるような脚本で映画つくることできるようなひとって、いないのかねえとか思った。
どうでもいいけど、出てる俳優さんを、私はほとんど知らないので、それは逆に妙に役者のイメージが先行しちゃうようなことがなくて、よかった。
あと、オザケンの歌は最後まで聞いてから、席を立つことにしました。
そうそう、本編始まる前に、長く広告見せられて思ったんだけど、どうして邦画の予告編っておもしろそうに見えないのかね、洋画と比べて。
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オザケン、えらい

2018-02-13 19:29:03 | 岡崎京子
小沢健二が盟友 岡崎京子 原作の映画『リバーズ・エッジ』へ書き下ろした 主題歌付き予告映像ついに解禁!
(あいかわらず情報のとりかたが遅れてるんで、全然知らなかったんだけど。
 あ、さすがに、映画をつくってる、ってことくらいは知ってたけど。)
そうかあ、オザケン、『リバーズ・エッジ』の主題歌書いたか。
うん、うん、いいことするぢゃないか。
あたしゃヲカザキもオザケンも両方とも好きだから、こういうの聞くとうれしくなる。

やっぱ一度は観に行くだろうな、俺。
(以下は、リンクが切れちゃうとなんなんで、記事のコピーを貼って取っとく。)

原作・岡崎京子、監督・行定勲、主演・二階堂ふみで映画化されることで話題の「リバーズ・エッジ」。その主題歌となる小沢健二の「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」が流れる予告映像がついに解禁となった。

「リバーズ・エッジ」は生きることにもがく若者達の姿を鮮烈に描いた衝撃の青春映画。世界三大映画祭のひとつでもあるベルリン国際映画祭のパノラマ部門のオープニング作品にも選出されている。

主題歌「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」は、かねてより岡崎京子と親交があり、その固い絆で知られる小沢健二へ、映画製作サイドから主題歌提供を依頼したところ快諾、夢のタッグが実現したことによって生まれた。小沢健二にとって初の映画主題歌となり、さらに今回の楽曲には映画のメインキャストである二階堂ふみと吉沢亮が”Voice”として参加していることで注目を集めていた。

主題歌版予告では、全裸で縛られてロッカーに閉じ込められるという壮絶ないじめを受ける吉沢亮扮する山田を、二階堂ふみ演じるハルナが助け出すなど、新たなシーンが追加されている。

2/9(金)に先行配信されると、SNSでは「小沢健二楽曲の中でベスト!!」「中毒性が高い!」と絶賛されている本作。完成した主題歌の印象について二階堂ふみは「まるで、問いかけるように、思い出を語らうように、寄り添うように、明日に向かう曲を聴きまし。」とコメント。

一方、吉沢亮は「初めてデモを聴いた時から今日まで、毎日気が付くと頭の中で流れています」と楽曲に魅了されている事を明かしている。映画の終わりに何かひとつ時代性の総括が欲しいと思っていたという行定勲監督は、「予想を軽々と裏切ってくる楽曲をすばらしく思いました」と映画により深みが与えられたことに満足のコメントを寄せていた。

「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」は、小沢健二が自ら手掛けたジャケットで2/14(水)に完全限定盤にてCDリリースされる。そして、「リバーズ・エッジ」公開日の2/16(金)、「ミュージックステーション」(テレ朝系)に生出演し、初披露される予定。

リバーズ・エッジ 公開情報
2月16日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
配給: キノフィルムズ
© 2018「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
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