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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

メジャー・リーグのうぬぼれルーキー

2022-12-31 18:45:33 | 読んだ本

リング・ラードナー/加島祥造訳 二〇〇三年 ちくま文庫版
ことし10月に古本まつりで見つけた文庫。
発行当時の定価より高い値がついてたが、まあ気にするほどぢゃあなかったので、手にとったらすぐ買ったさ。
(ときどき文庫でも驚かされるような値段のが混じってて驚く、このときもある一冊は二の足を踏んでとうとう買えなかった、しかしそれをワゴンに置くかね、って不思議だった。)

うん、本年はラードナーをいくつか読むことができて幸せだった、どうしてとっくに読んどくことができなかったんだろうと過ぎ去った時間のこと考えると悔やまれるけどね。
原題「You Know ME AL」は1916年の発行だという、アメリカ国内の移動は列車、海外渡航は船の時代だ。
原題の意味は訳者解説によると「アルよ、君はおれのこと、よく知ってるよな」って意味らしい、RCファンの私としては「アル、君が僕を知ってる」くらいに訳してみたい気もするが、この小説はそんなやさしい感じぢゃあない。
主人公はジャック・キーフという新人ピッチャーで、彼が友人のアルに手紙を書き送るという形式で物語はつづられている、
>アル、もう新聞でよんだと思うが、おれ、ホワイトソックスに売られたんだ。みんなも驚いただろうけど、おれもびっくりしたぜ。(p.10)
で始まり、全編その調子だ。
インディアナ州ベッドフォードってとこの出身で、身体でかくて、大喰な若者なんだけど、なかなか球は速いようで、メジャーのシカゴ・ホワイトソックスに昇格する。
牽制球とかバント処理とか細かいことは苦手みたいだけどね、本人そんなことうまくなろうとは思ってないっぽい。
邦題のとおりうぬぼれ屋、天狗というかお山の大将というか、怖いものないんだが、ちょっと間が抜けてる部分があってチームの監督や選手はからかって楽しんでる、本人はもちろんへらず口を言い返す。
おれが本気で投げりゃ誰も打てねえぜとか、一点あればおれは勝てるからなとか、ビッグマウス言ってるうちはいいんだけど。
ヒット打たれたっていうけどあれは野手がまともだったら捕れたフライだとか、審判が完全にストライクなのをボールと言ったしファウルなのをヒットにしやがったとか、他のひとにもケチつけるんだが、まあ明るくて面白いからいいか。
>ヒット三本ゆるしたが、そのうちの二つはバントで、ロードがやる気を出せば十分捕れたんだ。(略)けどかまやしない。ボストンの連中は、シャベル使っても打てなかったのさ。(p.68-69)
とか、
>(略)おれも二人三人は歩かせたが、ランナーが出ると全力で投げて、一点も許さなかった。あんなにフォア・ボール出したのは、おれの球がホップしすぎたからなんだ。あんまり速すぎて、審判のエバンスにゃ半分も見えなかったんだろう。胸元へぴしゃっと投げ込んだ球をボールだっていうんだぜ。(p.78)
とかって調子。
どうも勝利投手の概念みたいなのもわかってないようで、自分がリリーフ登板とかして勝った試合は、おれが勝ったんだぜみたいに考えてるっぽい。
野球場以外で滑稽さをあおるのは、どうも細かいカネにうるさいところ、シカゴは物価が高くて自分の故郷ぢゃこんなにカネかかんなかったぜみたいにブツブツ不満を言うのが、プレイスタイルが豪快そうにみえるだけにギャップあっておもしろい。
意外な一面としては、作中ではあっという間に結婚して、あっという間に子どもが産まれるんだが、奥さんがベビーシッターを頼んで球場に応援に来てたりすると、おいおい子どもに何かあったらどうするんだって、集中力をなくしてまともなピッチングができなくなっちゃうようなところがある。
子どもと一緒にいたいからオフの海外遠征には行かないぜって意思表明をするんだけど、
>(略)日本の王様から大統領宛に手紙が来て、ホワイトソックスとジャイアンツが日本に来るときはスター選手をみんな連れてこなければ入国を許さないと言っているそうだ。それで大統領はコミスキーにスター選手をみんな連れていってくれないか、でないと日本は腹を立ててアメリカに戦争をしかけてるかもしれない。それでは立場がなくなると言うんだ。コミスキーはすぐに大統領に電報を打ってマシューソンは年を取っていて行けないが、ジャック・キーフという一流選手がいるからこの選手を連れていっていいいかと問い合わせたわけ。(p.241)
みたいな作り話を監督たちから吹き込まれて、ずるずるとどこまでもチームに同行していくことになる、監督たちの操縦術がだんだん巧みになっていくのもおもしろい。
第一章 メジャー・リーグに移った青年が友達にあてた手紙
第二章 新米の選手、またビッグ・リーグにカムバック
第三章 ブッシャーのハネムーン
第四章 ルーキー・ブッシャーの逆襲
第五章 田舎者(ブッシャー・リーグ)の息子
第六章 ブッシャー海を渡る

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芭蕉のガールフレンド

2022-12-22 18:18:27 | 読んだ本

高島俊男 2008年 文春文庫版
ことし3月ころに街の古本屋で買った文庫。
前に読んだ『お言葉ですが…』のシリーズである、9冊目ということらしいが、私は1と2しか読んでない。
出版された順番に読んでくのがベターなんだろうが、まあいいでしょう、言葉をめぐるエッセイだから、とびとびに読んでも。
初出は『週刊文春』の2003年から2004年にかけてのころで、本書は連載順というわけではなく、だいたいの似たテーマべつに集めた章立てになっている。
タイトルの「芭蕉のガールフレンド」ってのは何のことかっていうと、古くから日本語では、男が女に手紙を書くとき、相手を呼ぶ言葉がないって話、「貴兄」「貴下」「貴殿」「あなた」「君」、そういうやつ。
で、芭蕉は親しい年上の尼さんに書いた手紙のなかでは「そこもと」を使ってる。
芥川龍之介は、「文ちやん」「文ちやん」と相手の名前を連発してるんだけど、結婚したあとは「お前」になったと。
いまの若い人は手紙なんか書かないだろうからそこらへん苦労を感じないんだろうけど、って2003年の時点で言ってますが。
全然ちがう話で、現代の「ファミレス敬語」ってのにも、当然と言えば当然だが、文句を言ってるんだけど、この話もおもしろい。
「〇〇になります」とか「〇〇のほう」とかってやつだけど、「よろしいですか」が嫌いだという。
>ちかごろの娘は、「よい」(もしくは「いい」)の丁寧語が「よろしい」だと心得ているのではないか。折々そういう場に出くわす。
>「よい」が「優」あるいは「良」だとすると、「よろしい」は「可」である。上の者が下の者に対して「一応合格」とやや横柄に容認するのが「よろしい」だ。(p.148)
というわけで、「お茶のほう、よろしいですか」だなんて言わずに「お茶はいかがですか」と言えないのかねえってんだが。
そこで、この変な敬語っぽい言葉づかいは、実は約20年前(←2003年の20年前だな)ファミレスが増え始めたころ、リクルート社が接客ビデオを制作してマニュアルとして広めた、って裏事情が披露されてんだけど、それは知らなかったなあ。
どうでもいいけど、いつも著者はいろんな本読んでていろんなことを知ってるなあと思わされるんだけど、本書には、
>小生の枕元というのは、伏せた本やら開いた本やらがそこいらじゅうにひろがってかさなり、その上にほこりがつもって、へたに手を出すとほこりが舞いあがって不衛生ゆえなるべくソッとしてある、したがって下のほうには何があるかわからぬという(略)(p.228-229)
という、いかにもって感じの本の虫的な一端が明かされていて、妙におもしろかった。
コンテンツは以下のとおり。
やせっぽち一代記
 武蔵にいたころ
 管弦楽組曲二番
 北陸心の旅路
 泣きの涙のお正月
 サンライズ瀬戸
 ケンケンガクガク?
 やせっぽち一代記
今やひくらむ望月の駒
 どうせ俺らは玄カイ灘の
 今やひくらむ望月の駒
 パンツ・ステテコの論
 語ラザレバ憂ヒ無キニ似タリ
 台湾天下分け目
 国境の長いトンネルを抜けると……
 長野県がなくなるの?
芭蕉のガールフレンド
 文ちゃん文ちゃん
 芭蕉のガールフレンド
 騎馬民族説と天皇
 かごかく 汗かく あぐらかく
 犬かき べそかき 落葉かき
 ファミレス敬語はマニュアル敬語
 オカルト旧暦教
門弟いろいろ
 こいすちょう流
 蘇峰、如是閑、辰野先生
 門弟いろいろ
 ドイツ語教師福間博
 乃木大将と鷗外
 殉死パフォーマンス
 佐々成政の峠越え
柳田の堪忍袋
 柳田の堪忍袋
 浪人猪飼某の話
 蓑虫のやうなる童
 日本人は説教好き?
 『キング』と『主婦之友』
 『銀の匙』の擬制擬態語
法務省出血大サービス
 苺ちゃん、燕くん
 法務省出血大サービス
 「人名用漢字」追加案
 カタカナ語には泣きます
 ボケの神秘
 痴呆の歴史
 アホはどこから来たかしら
役割に生きる日本人
 論文は何本?
 壬申の乱、応仁の乱、大塩平八郎の乱
 サルと猿とはどうちがう
 七時十分になりました
 役割に生きる日本人
 チャレンジ!
 「背伸び」の衰滅

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大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる

2022-12-16 18:28:05 | 読んだ本

プロイスラー作/中村浩三訳 1975年発行・1984年改訂 偕成社文庫版
こないだ何十年ぶりかに「大どろぼうホッツェンプロッツ」を読んだら、やっぱおもしろかったんだが。
続編も読もうかどうしようかと迷ってた、たしか第一作ほどおもしろくはなかったよなとボンヤリした記憶しかなかったんで。
で、最近になって、やっぱどんな話だったかたしかめたくなって中古の児童文庫版を買って、読んでみた。
巻末の訳者解説によると、第一作がドイツで出たのが1962年で、この続編は1969年とやや間があいているんだけど、物語世界は前作のわずか二週間後のおはなしである。
ホッツェンプロッツは前作の最後でつかまったあと、消防ポンプ置き場に留置されてた、小さな町だから警察署の留置場なんかないんだからしかたない。
それが、ある日「盲腸がよじれた、助けてくれ」とか消防ポンプ置き場のなかから騒いで、通りがかったディンペルモーザー巡査部長を呼び止めて、なかに入ってきたところをガツンとなぐりつけて、巡査部長を消防ホースでぐるぐる巻きにして頭にはバケツをかぶせ、制服とサーベルなんかを奪って逃走した。
そのあとで現場をカスパールとゼッペルが通りがかると、助けを呼ぶ声がしたんだけど、二人はホッツェンプロッツが与太を飛ばしてると思ってからかう、そんなことしてたら二人は昼の12時に家に戻るはずだったのが遅れてしまう。
そのあいだにホッツェンプロッツは巡査部長に変装して、カスパールのおばあさんが台所で昼ごはんをつくっているとこに乗り込んでいた。
で、時系列とは順番かえて、本書の出だしはこの場面から始まってんだけど、それがいい、カスパールのおばあさんのうちでは木曜日は焼きソーセージとザワークラウトと決まっている、とかね、そういう始まりかたに限るんだよね、児童文学ってのは。
巡査部長さんだと思い込んでたおばあさんが、よく見ると大どろぼうの登場なので驚いていると、ホッツェンプロッツは九本の焼きソーセージと鍋一杯のザワークラウトを全部よこせと言って、むしゃむしゃ全部食べてしまう。
カスパールとゼッペルが家に戻ってくると、おばあさんが気絶しているので介抱して、消防ポンプ置き場に巡査部長を救出しに行く。
二人にとって事態が深刻なのは、ホッツェンプロッツが自由にそこらへん歩き回っているあいだは、焼きソーセージとザワークラウトはつくらないって、おばあさんが宣言しちゃった、そりゃ一大事だ。
早くやつをつかまえようと、カスパールとゼッペルはニセ手紙をつくって、ホッツェンプロッツを消防ポンプ置き場におびきよせようとするが、ホッツェンプロッツは引っ掛からない、逆に、様子を見に来たディンペルモーザー巡査部長といっしょに三人で閉じ込められてしまう。
三人はなんとか脱出するけど、そのあいだに偽警官に化けたホッツェンプロッツはカスパールのおばあさんを誘拐してしまう。
ホッツェンプロッツは、カスパールとゼッペルに身代金を要求、金額は二人が前回の逮捕で町長からもらったごほうびの555マルク55ペニヒ。
身代金をもって指定の場所に出かけてった二人を、大どろぼうはつかまえてアジトに連れて行く、おばあさんを解放するどころか、三人とも長い鎖で足をつながれて働かされる。
巡査部長さんは、人質の安全のために現場には出かけて行かなかったんだけど、「国家試験合格千里眼者」という看板をかかげているシュロッターベック未亡人のところへ行って、水晶玉で二人を追跡して状況を監視する。
よい魔法使い登場だけど、やっぱ前作の悪い魔法使いに比べると魅力がないなあ。
かくしてカスパールとゼッペルとおばあさんが計略をもちいて、大どろぼうに縄をかけたところへ、魔法使いの飼い犬の嗅覚による追跡力を頼りに巡査部長が現場に駆けつけて、一件落着。
そして、大事なことには、カスパールとゼッペルは焼きソーセージとザワークラウトにありつくことができました、となる、めでたしめでたし。

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横浜スタジアム、公開中

2022-12-09 18:57:32 | 横浜散策

今日、横浜スタジアムを通りかかったら、グランド公開中だという。
(ふつう「グラウンド」って書くべきなんだろうけど、日常的発音としてはグランドだよね)


特に事前に興味はなかったんだけど、ついふらふらと呼び声に誘われるままに、なかに入ってみることにした。

うーん、やっぱ、野球大好き少年だったんで、プロ野球選手がプレイする場所に立ち入れるってのはドキドキ興奮するものあるんだよね。

子どもたちが入場して走りまわってたりして、いいなあ、そういうの。




ベンチとか近づいたりしてみると、やっぱ心躍るものある。
サークルのOB呼んで参加してもらっての記念行事で、ここで野球したことはあるんだけどね。

ここで写真撮れみたいな押しつけがましいのは要らないよと思う。

野球するんぢゃなくて、なんか遊んでもらうためのイベントを設定してるみたいだけど、私はそういうのにはあんまり興味はない。

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13のショック

2022-12-01 18:21:09 | 読んだ本

リチャード・マティスン/吉田誠一訳 昭和三七年 早川書房
これマティスンってカナ表記になってるけど、リチャード・マシスンである。
ことし9月の古本まつりで見つけた、マシスンの古い文庫本でもないかなって問題意識は常にあるんだが、思わぬ形のものを見つけることができた。
マティスンって表記なんで別の作家ぢゃなかろうかと疑って、箱から出して訳者あとがきんとこ読んで、まちがいなくあの「ミステリー・ゾーン」関連のマシスンだとわかったんで、さっそく買い。
「異色作家短篇集」ってシリーズの第10巻だそうだけど、原題「SHOCK!/Thirteen Tales to Thrill and Terrify」は1961年の出版のペイパー・バックだという、なんかめずらしいよね、13という数を西洋人がつかうのは、そこらへんからして異色の面目躍如ってことなのかも。
13短篇が収録されてるけど、「レミング」と「次元断層」は、前に『リアル・スティール』って文庫本で読んだことあるものだった、「次元断層」はそっちでは「境界」って邦題だったけど。
「長距離電話」は読んだことあるような気がしたんだけど、調べてみてもこれまで読んだ本のなかにはなさそう、ってことはテレビでみた「ミステリーゾーン」ドラマのなかにあって、印象に残ってたんぢゃないかと。
一読したなかぢゃあ、気に入ったというか、気になったのは「種子まく男」かなあ、住宅街に引っ越してきた男の話なんだけど、隣近所の家の人をよそおって電話かけて、テレビ修理を呼んだり、自家用車を売り出しちゃう広告出したり、パンフレットを多量に郵送で取り寄せたり、勝手なことをする。
ただのイタズラしてるのかと思うと、ひとの家の蔦を引っこ抜いて道に放り出しておいたり、黒ペンキで玄関のドアに悪い言葉を落書きしたり、嫌がらせをエスカレートさせていく。
さらには、隣近所同士で犯人はあの家の人ぢゃないかとお互いが疑いをもつような証拠品を残す細工をしていく、それで本人の狙いがどこにあるのかわかんないとこが怖い。
ほかの話も後味のわるいものが多いので、よいこは読んぢゃいけませんっていうか、読まないほうが無難。
ノアの子孫 The Children of Noah
レミング Lemmings
顔 The Faces
長距離電話 Long Distance Call
人生モンタージュ Mantage
天衣無縫 One for the Books
休日の男 The Holiday Man
死者のダンス Dance of the Dead
陰謀者の群れ Legion of Plotters
次元断層 The Edge
忍びよる恐怖 The Creeping Terror
死の宇宙船 Death Ship
種子まく男 The Distributor

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