西部邁 1990年 光文社カッパ・ブックス
副題は、「日本はなぜ“卑しい国”になったのか」。
何の脈絡もないんだけど、選挙とか政局をめぐる報道とかを見てると、なんとなく読み返したくなったもんで。
西部邁の著書はいくつか読んでんだけど、私が手を伸ばすようになった経緯ははっきりとはしない。
当時、すでに中沢新一の書くものが好きだったんで、東大に彼を採用するかどうかの騒動のとき、名前を知ったのかもしれない。
また、「朝まで生テレビ」なんてのにも出てるのを見てて、ずいぶんと頭の良さそうな(理性的なというべきか?)人だなーと思ったのはおぼえてる。
んで、この本は、わりと軽く読めるような本で、1989年ころのマスコミの「馬鹿騒ぎ」を中心に批判してて、マスコミの煽動とか無自覚さに対する憤りがストレートに表されている。
本質を突いた厳しい指摘がビシビシで、このひとケンカ得意だろうなあって感じ。
>日本人は豊かさのなかで退屈し、平等のなかで苛立ちはじめたのである。
と喝破して、本書中であげられる、なんも考えてない報道の例は面白い。
たとえば、「なだしお・第一富士丸の衝突事件」、国を守る軍隊と魚釣りをして遊ぶ船の双方に目的があり、双方の行動にそれぞれの効用はあるけれど、国を守る仕事の方が魚釣りの遊びよりも価値として重要だとしなければ、社会の秩序が成り立たないのではないか、少なくともそうかもしれないということについて考えてみないのか、とか。
「リクルート事件」、これは取るに足らないちっぽけな事件であり、「文部省ルート」は「就職協定を守りましょう」と働きかけた、「労働省ルート」は「就職雑誌に労働省が余計な官僚介入をしないでほしい」と働きかけた、「NTTルート」は「政府に任せておくと非効率な経営をするので民活を推し進めましょう」といったように、いずれもリクルートのしたことは国民に大きな実害が及ぶとかってことぢゃなく、国民の利益に沿うものでしょ、とか。
たしかに、なんかっつーと、民主主義だとか、自由だとかって騒ぐマスコミ多いんだけど、とりあえず権力に盾突いてるような姿勢を見せれば正義だ、みたいな勘違いがあるんぢゃないかと思うね。
で、たいがいの人は、それにやすやすと乗っちゃう。選挙のたんびに与党が負けちゃうのは、そーゆーのが原因ぢゃないかと思う。政党支持もない、政策なんか知らない、自分のポリシーもない、だけど現状はとにかく嫌だ、ってだけで右往左往してんぢゃないかと。
どーでもいーけど、>普通選挙制は素晴らしい制度ではなく、やむをえない制度にすぎない って本書中の言葉、けっこう言えてる名言だと思います。
副題は、「日本はなぜ“卑しい国”になったのか」。
何の脈絡もないんだけど、選挙とか政局をめぐる報道とかを見てると、なんとなく読み返したくなったもんで。
西部邁の著書はいくつか読んでんだけど、私が手を伸ばすようになった経緯ははっきりとはしない。
当時、すでに中沢新一の書くものが好きだったんで、東大に彼を採用するかどうかの騒動のとき、名前を知ったのかもしれない。
また、「朝まで生テレビ」なんてのにも出てるのを見てて、ずいぶんと頭の良さそうな(理性的なというべきか?)人だなーと思ったのはおぼえてる。
んで、この本は、わりと軽く読めるような本で、1989年ころのマスコミの「馬鹿騒ぎ」を中心に批判してて、マスコミの煽動とか無自覚さに対する憤りがストレートに表されている。
本質を突いた厳しい指摘がビシビシで、このひとケンカ得意だろうなあって感じ。
>日本人は豊かさのなかで退屈し、平等のなかで苛立ちはじめたのである。
と喝破して、本書中であげられる、なんも考えてない報道の例は面白い。
たとえば、「なだしお・第一富士丸の衝突事件」、国を守る軍隊と魚釣りをして遊ぶ船の双方に目的があり、双方の行動にそれぞれの効用はあるけれど、国を守る仕事の方が魚釣りの遊びよりも価値として重要だとしなければ、社会の秩序が成り立たないのではないか、少なくともそうかもしれないということについて考えてみないのか、とか。
「リクルート事件」、これは取るに足らないちっぽけな事件であり、「文部省ルート」は「就職協定を守りましょう」と働きかけた、「労働省ルート」は「就職雑誌に労働省が余計な官僚介入をしないでほしい」と働きかけた、「NTTルート」は「政府に任せておくと非効率な経営をするので民活を推し進めましょう」といったように、いずれもリクルートのしたことは国民に大きな実害が及ぶとかってことぢゃなく、国民の利益に沿うものでしょ、とか。
たしかに、なんかっつーと、民主主義だとか、自由だとかって騒ぐマスコミ多いんだけど、とりあえず権力に盾突いてるような姿勢を見せれば正義だ、みたいな勘違いがあるんぢゃないかと思うね。
で、たいがいの人は、それにやすやすと乗っちゃう。選挙のたんびに与党が負けちゃうのは、そーゆーのが原因ぢゃないかと思う。政党支持もない、政策なんか知らない、自分のポリシーもない、だけど現状はとにかく嫌だ、ってだけで右往左往してんぢゃないかと。
どーでもいーけど、>普通選挙制は素晴らしい制度ではなく、やむをえない制度にすぎない って本書中の言葉、けっこう言えてる名言だと思います。