many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

宇宙船ビーグル号の冒険

2018-05-27 18:18:45 | 読んだ本
A・E・ヴァン・ヴォークト/沼沢洽治訳 1964年初版・2017年新版 創元SF文庫版
ヴァン・ヴォークトを読んでみようと思ったのは、ことし3月くらいのことだったか。
でもホントいちばんに読みたいやつは手に入りにくそうな状況みたいだったんで、なんでもいいから売ってるやつをと、書店に行ったら、これ並んでた。
原題は「THE VOYAGE OF THE SPACE BEAGLE」、1950年の作品。
あー、このタイトル知ってるよ、ということで、メジャー作品そうだし、手にとった、古典なのに新版出るってえらいねえ。
だいたい私は、SFとかミステリとか、名前は知ってるけど読んだことないってのが多過ぎな気がする。
かと言って、いまから読もうとしても、時間がないしねえ。人生は短い、後悔はしてないけど。
さて、私の余生はともかくだ、題名だけ知ってて予備知識なしで取っ掛かるのは、それはそれで期待するものはある。
宇宙船ビーグル号は、乗組員が1000人もいるでかい宇宙船で、丸い形をしているらしいが、作中の紹介によれば、なかは三十階建てで床面積五平方キロだという。
いろんな未知の宇宙生物に出会うんだが、その相手べつに全部で四つのエピソードからなっている。
最初に出てくるのが、黒猫みたいなルックスのケアル、SF界では有名人らしい。
猫みたいだけど、耳には触角、肩からは触手ってとこがSF的進化をたどったとこだ。
で、こいつを船のなかに入れたら、狡猾に大暴れされちゃったんで、追い出してやっつけることになるんだけど。
驚くのは、この猫側からの視点で書かれてる箇所があることだよね、この船を乗っ取ってやる、とか、そっちの意志。
それはいいけど、ほかにも危ないやつを、檻で囲うとはいえ、船内に入れちゃうのがどうしてか不思議だったんだが、
>これは探険旅行だし、標本をどっさり持って帰る用意はしてある。(p.177)
ということで、なんだかわかんないもの捕まえにいくのもミッションのうちだったってことなので、納得。
ほかには鳥型宇宙人で精神面にアタックしてくるリーム人と、真っ赤な円筒型で四本腕と四本足で宇宙空間でも生きられるイクストル、宇宙塵みたいに形がなくてどこまでも巨大化するアナビスが登場。
なんか空間というか物理が地球の人間とちがうんで、どんなものでも通り抜けちゃうとかするもんだから、勝ち目はなさそうなんだが、なんとか犠牲者を出しつつも船は生き残って進む。
でも、その船のなかで、科学者たちが勢力争いをしてたりするのが、外敵との戦い以外に、もうひとつのテーマみたいで、そのあたりも古典として長く支持されてるとこなんぢゃないかなとは思う。
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網のなか

2018-05-26 18:50:42 | 読んだ本
アイリス・マードック/鈴木寧訳 1979年 白水社
丸谷才一の古いエッセイかなにかに出てきたので、読んでみようと思ってたら、ことし3月ころだったか初めて行った古本屋で見つけることができた。
原題「Under the Net」、1954年の作品。著者は1919年ダブリン生まれの女性、女性なんだ、本探してるあいだ気づかなかった、そういやアイリスって女性名だ。
冒頭、「レイモン・クノーへ」って献辞がある、レイモン・クノーの文体練習っていうのも、読んでみたいんだが、まだ見つけられずにいる。
物語はおもにロンドンが舞台で、語り手の「ぼく」は、ジェイムズ・ドナヒューって名前の、本人による紹介にいわく、「今では三十歳を少し出たところで、才能はあるのだが無精者である。頼まれ仕事の雑文で暮しを立てており、創作も少しは手がけているが、このほうはできるだけ少しにしている」作家。
背は低いけど、やせ型で均整のとれた体格で、髪は金髪で、妖精のようにかど張った面だち、ジュウドウが得意。
で、話のしょっぱなで、部屋に住まわせてもらってた女性から、あんたぢゃないひとと結婚するんだから出てってくれって追い払われて、相棒といっしょにむかし仲良くしてた歌手と女優の姉妹を訪ねてったりする。
前にクスリの試験のバイトかなんかで知り合った旧友がいて、そのちょっと変わった知性との会話を本にして出版したんだが、それはあまり売れないし、その男とも会いたいんだが勝手に本にしたしでちょっと気おくれしたり。
その友だちを探して夜通しロンドンの街で飲み歩いて、明け方近くに突然テムズ川で泳いだりとか、不思議な行動をとるひとだ。
そのうち自分の手がけたフランスの翻訳を、ほかのひとが勝手にアメリカの映画会社に売っちゃおうとするトラブルから、関係者の家から犬を盗みだしたりとか、変わった展開になる。
それほど特別おもしろいとは思わなかったけど、まあ読み進んでいくのに退屈させられることはなかった。
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綾とりで天の川

2018-05-20 18:02:45 | 丸谷才一
丸谷才一 2008年 文春文庫版
ことし1月にリサイクル書店で買った、文庫エッセイ。
今頃になって改めて読んでみて何なんだけど、著者のエッセイは、なんたっておもしろいので、持ってないものはボチボチ集めちゃいそうな気がする。
例によって謎のようなタイトルなんだけど、冒頭まえがき代わりに小文があって、由来が紹介されている。
>『あやとり入門』といふ文庫本を大事にしてゐる。(略)
>「天の川」はパプア・ニュー・ギニア。うんと長い紐で。くりかへしが多くてむづかしい。
パプア・ニューギニアの綾とり? ホントかね、読んでみたいな、その本。
こればかりぢゃなくて、このエッセイ集を読んでると、参考にしてる文献、引用してる文献の多さと広さに気づかされて、感心する。
しかもそのへん、「~の受売りですよ」とか「~によりかかつて書く」とか「~で知つたばかりのことを紹介するのですが」とか偉そうにしないで、サラッと書くとこがカッコいいし。
知識量の多さだけぢゃなくて、批評のスタンスもいいし。
>そして世の中には、他人の悪口を聞きさへすれば喝采するたちの人がかなりゐるけれども、批評で肝心なのは、中身のあることを藝のある言ひ方で言ふことなのである。(p.154「二つの業界」)
と言ってるが、それが自身で実現できている。ちなみに、これ永井荷風のやたら悪口を言いたがるって性格への批判で、「明治のころはあの手の人物が多く、小言爺と呼ばれたさうです。」なんて言ってる。
話題の内容は、ほーんと多岐にわたってて、どこからどう採りあげる題を選んでたのか、初出は「オール讀物」2003年から2005年だそうだが、レベル高い対象を想定してたんぢゃないかという気がする。
どうでもいいけど、印象に残った引用があって、
>そこで精神分析学者マリー・ボナパルトは、
>「神話は、花と同じやうに萎れ、しかし別のところで、季節と風土を同じくする環境のなかで、花のやうに再生する」
>と、うまいことを言つてゐます。(p.192「風評、デマ、流言」)
だなんていうのは、世界のあちこちに、似たような神話とか昔話が存在する、それって人類共通の心理があるからだって、河合隼雄さんの本を読んで以来、私が気になってることにつながるものがある。
ちなみに、これ、1938年に出回った「自動車のなかの死体」という噂話が、1914年に流行した「馬車のなかの死体」という話とそっくりだって話をうけて出てくるんだが、ありがちな物語が何度もよみがえることを、
>これを別の言ひ方で説明すると、風聞はつまり文学なのだといふことになりますね。(同)
って結論づけてる、おもしろい。
トリビアっぽいのも、あちこちにあるけど、なかで私が知らなかったのでオッと思ったのは、プロ野球の猛打賞を命名したのが詩人の清岡卓行さんだという話。
>簡にして要を得てゐますね。
>さすがは言葉のプロ。(p.338「野球いろは歌留多」)
って紹介のしかたが、また良かったりする。
コンテンツは以下のとおり。
・牛肉と自由
・スターとは何か
・自転車屋の兄弟の伝記作者
・吉田兼好論
・生のものと火にかけたもの
・ミイラの研究
・二つの業界
・ある婦人科医の考古学的意見
・君の瞳に乾杯
・風評、デマ、流言
・贋作の動機を論ず
・舟歌考
・批評家としての勝海舟
・『ギネス・ブック』の半世紀
・シャーロック・ホームズの家系
・野球いろは歌留多
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定年入門

2018-05-19 18:16:51 | 読んだ本
高橋秀実 2018年3月 ポプラ社
サブタイトルは「イキイキしなくちゃダメですか」。
ヒデミネさんの古本を二つほど立て続けに読んだあと、書店でふと見たら新刊あるぢゃないですか。
正直、著者のノンフィクションについては、はじめて読んだころより、最近なんか慣れというか飽きがきちゃって、それほど素直に笑えないかもと思ってたところだけど、テーマが定年ってのが、なんとも興味ある。
きっと、定年なっちゃって、弱っちゃってる、ちょっとヘンなひとたちのインタビューが満載なんだろうなと期待大。
著者は1961年生まれだというので、ことし57歳か、フリーな作家には定年あるわけないけど、まあ同年輩をみて思うところあるんだろう。
読んでみると、それほどヘンなひとたちが出てくるわけぢゃなかったが、まあ、いろいろ。
私としては、近く迫った(そういうのは自分の思ってるよりアッという間に決まってるから)現実として、死ぬまでのあいだどう経済的に困窮しないで過ごしてくかってほうに関心があるんだが、そういう悲惨な話はない。
どっちかっていうと、みんな余ってしまう時間をいかに用事つくって埋めるかってほうに問題意識がある感じ。
そんな余裕があるんだったらいいんだけどねえ。
章立ては以下のとおり。
第1章 超法規的な風習
第2章 プライドのゆくえ
第3章 おはようおかえり
第4章 テイスト・オブ・定年後
第5章 特に何も変わりません
第6章 ただの人になれますか?
第7章 平等なカルチャー
第8章 問題ない問題
第9章 人生のマッピング
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古本屋台

2018-05-13 17:33:11 | マンガ
Q.B.B.(作・久住昌之 画・久住卓也) 2018年4月 集英社
書店のマンガ新刊コーナーの棚に表紙こっち向けておいてあって、作者名とタイトルみて、迷いもせずに即買った。
タイトルそのまんま、夜になると、街のどこかにでる屋台の古本屋が舞台。そのコンセプトがおもしろすぎ。
毎回見開きの2ページ、右も左も基本3段の6コマずつ、最初の右上のコマはタイトルだけだから、一話だいたい11コマ。
男が毎晩のように屋台に寄って、そこでオヤジとなんか会話して、おわり。それだけなんだけど、おもしろ。
「古本」って提灯が下がってる外見はまるで飲み屋だが、オヤジさんに頼むと焼酎を一杯だけ、100円で出してくれる。
んでも「ウチは飲み屋ぢゃないんだから」が決まり文句で、酔っぱらって寄ると「帰んなよ」とか言われちゃう。
いやー、いいわー、ホントにねえかな、こういう屋台。あこがれて妄想してしまう。
全然知らなかったんだけど、初出は2007年からという、けっこう歴史あるマンガのようで、近年では「小説すばる」に載ってるらしい。
しかし、よくこういうの単行本化したね、えらい、集英社。
いっしょに収録されてる4コママンガ、全部で27本のタイトルは「アネコダ」。
なんのこっちゃと思ったら、「あ、猫だ」のことで、猫好きが道を歩いてて猫を見かけると、思わず「あ猫だ」と言って近寄ってっちゃう習性を描いたもの。
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