many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

小林恭二 五七五で いざ勝負

2009-08-13 20:06:29 | 小林恭二
NHK「課外授業ようこそ先輩」制作グループ 2001年 KTC中央出版
小林恭二関係の俳句の本がもうひとつあったので、追加。
テレビ番組(これは見ていない)で母校の猿楽小学校へ行き、生徒たちに俳句を教えたときの模様を収録したもの。
俳句を教えるといっても、小林恭二の場合は、当然「句会」である。
外へ散歩にいって見てきたもので俳句をつくったり、題を与えて子供たち同士の団体戦をやらせたりして、当然のことながらお互いにいいと思った句に点を入れ合っての勝負。
それにしても、子供との他愛もないやりとりとかぢゃないです、この本。おそらく俳句の教科書としては最高のものなんぢゃないでしょうか、ところどころ鋭く俳句の本質に迫っていると思います。
たとえば、俳句とは、もとは大勢で集まって句をつなげて長い詩を作っていくときの最初の句の五七五だった、だから、いい俳句というのは、これから長い物語が始まる、この先いったいどうなるんだろう、って想像させるものでなければならない。パッと見てそのまんまというより、ちょっと考えさせられるぐらいのほうがいい。
たとえば、選句こそが句会の醍醐味、自分がいいものを作るっていうのと同じくらい、自分が人のいいものを見つけるということは大事。だから選ぶときは「自分のものにしたいんだ」という気持ちで選ぶ。そして選ぶときには番号だけで指したりするんぢゃなくて、句を全部書き写すのが句に対する礼儀ということまで。
あと、俳句に関しては、必ずしも先生の教えることに正解はない、先生のいうとおりにしたら負けることもあるとはっきり言うし、実際に生徒に混じって投句したら票が入らず負けたりしてる。
そのほかにも、授業の前後のインタビューでも、俳句づくりのために大切なことをあげています。
句会のように限られた時間で数多くの俳句をつくることは、発想力の短距離走なものだと言っています。最初のうちは、つまらない発想のつまらない句しか出来ないけど、100もつくると後半では自分でも驚くような発想がでてくるといいます。『猿蓑倶楽部』で猫鮫流俳句の作り方として、いろんな発想といろんな組み合わせを考えて、アタマ朦朧としたところで出すって言ってましたが、これがそのことだと思われます。ちなみに、この本の授業でも、子供たちに投句締切時間を厳守させ、「あせるといいんだよ」とまで言っています。
それから、ただ外を歩くんぢゃなくて、俳句を作ろうと思って歩くと、もののとらえ方が違うということを挙げています。そうするといろいろな発見があるといいますが、授業で校庭に吟行に行く時も“今から言葉を集めに行くんです”と言って出かけていきます。やっぱり俳句とか短歌とかって、言葉で世界を切り取るわざなんですよねー。

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猿蓑倶楽部 激闘!ひとり句会

2009-08-11 15:36:16 | 小林恭二
小林恭二 1995年 朝日新聞社
1993年から1995年まで朝日新聞の夕刊に週一連載していたものの単行本らしい。らしいというのは、私が新聞では読んでなかったから(そのころ朝日読んでたかもしれないのに)。
冒頭に必ず自作の句をひとつ掲載したうえでのエッセイ(?)である。
『俳句という愉しみ』の句会も同時期にあり、そこで自分は俳句を詠まずに、あとで本を作るときに評をしていると、俳人たちに非難されていたが、この本でもそのことは触れられている。
各章とも、俳句づくりに苦労しており、創作の悪戦苦闘ぶりを自ら語っているところが面白いのである。
連載中には、アサヒネットに俳句を投稿するネット句会の会議室を作成し、そこでの句会での激闘ぶりも実況しているが、「妖怪しばり」=一句のなかに必ず妖怪を登場させること、などの珍ルールは遊んでいて楽しそうである。
そんななかで、猫鮫(著者の俳号)流俳句のつくりかたとして、思いつく限りの言葉の組み合わせを並べて試行錯誤し、アタマが朦朧となったとこでエイッと投稿するという技が披露されているんだが、それはやっぱりセンスのある人だからできることなんだろうと思う。

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首の信長

2009-07-14 22:59:12 | 小林恭二
小林恭二 2000年 集英社
帯の背には「日本史怪釈小説集」とありますが。
収録作は、
『筑波嶺日記』
『聖者伝』
『怨霊巌流島』
『首の信長』
『忍者の恋』
『新源氏物語』
『24人の稗田阿礼』
『妖異記』

織田信長であったり、幕末の薩摩・長州の志士と新撰組であったり、武蔵対小次郎であったり、日本の歴史上のできごとで遊んでいます。
最澄と空海の法力対決を描いた『聖者伝』が私のお気に入り。
ちなみに、『首の信長』は、桶狭間の戦いをはじめ、どうやっても負けて首を切られてしまう信長を、史実どおり生かすために、何度も何度もゲームをリセットするようにして歴史を書き換えないように守る話です。かなりスラップスティック。

以前、私が「好きな作家は小林恭二」と言ったところ、試しに一冊読んでみようと思ってくれた女性が最初に手にとっちゃったのが、この本で、えらい悪趣味と誤解されました。(面白いことは面白いと思うんだがねー)

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短編小説

2009-05-25 15:47:42 | 小林恭二
小林恭二 1994年 集英社
短編集。収録作品は
「光秀謀叛」
「豪胆問答」
「バービシャードの四十九の冒険 序章」
「家を見る」
「ヤスヨ」
「磔」
「鍵」
「シクラメンの陶酔」
「沢好摩伝」
「瓶の中の父」
著者あとがきにいわく、“おもちゃ箱をひっくりかえしたような小説集”。
なので、テーマというか傾向というかは、いろいろ。
そのぶんどれから読んでも面白いので気に入ってる一冊。
私が好きなのは、「磔」と「豪胆問答」。
自宅の窓から磔を目撃しちゃう話と、何物にも驚いたことがない武士の話。

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荒野論

2009-04-23 22:05:09 | 小林恭二
小林恭二 1991年 福武書店
収録作品は、
「荒野論」
「ゴブリン」
「記憶」
「夜景」
「霧について」
「斜線を引く」
「シャレーへ」

“第一短編小説集”と帯にありますが、そういうことになりますか。

なかでは、「荒野論」 けっこう好きです。

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