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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

忠臣藏とは何か

2016-04-27 20:23:45 | 丸谷才一
丸谷才一 1988年 講談社文芸文庫版
ちかごろ無性に読みたくなるときがあって、見つけて気になったものを読んでみてる、丸谷才一。
これは、小説でもエッセイでもなく、評論。
著者あとがきにいわく、
>これは忠臣藏といふ事件と芝居を江戸時代の現実のなかに据ゑながら、しかも、古代から伝はるわが信仰と関連づけ、さらには、もっと普遍的な(全世界的と言つてもいいかもしれない)太古の祭とのゆかりを明らかにした本である
ということで、そういう本。
信仰との関わりってのが、忠臣藏とは何かということの答えで、
>(略)浮びあがつて来るものは、呪術的=宗教的祭祀としての吉良邸討入りで、それ以外の何かではない。この御霊信仰こそは忠臣藏の本質であった。(p.74)
とズバリ言いきっている。
菅原道真をはじめとして、日本では古来、政治的敗者の霊に畏怖を抱くという信仰のようなものがあるんだけど。
浅野内匠頭ってのは悲運とかそんなんぢゃなくて、殿中で刃傷に至るという、どっちかっていうと自分が悪いはずなんだが、
>どう考えても納得のゆかない怒り、わけのわからない逆上、理由不明の取り乱し方だつたからこそ、かへつて逆に人々の畏怖の念を強めた(p.76)
と、その狂いっぷりから含めて、御霊をまつんなきゃと思う対象になってしまったという。
しかも、当時の綱吉の御時世は、生類憐れみの令をはじめとして暴政苛令に民は苦しめられてたんで、
>(略)大切なのは、『仮名手本忠臣藏』はかういふ仕掛けの呪術的演劇、政治的儀式だつたからこそ当時の日本人の精神風俗にきれいに合致してゐて、それゆゑあれだけ人気を集めることができた、あれだけの藝術的完成を待つことができた、といふ事情なのである。
>あれは当時の日本人の政治に対する関係をまことに正当に反映したもので、それを含めて、彼らの世界の見事な表現であつた。(p.226)
ということになったんだそうだ。
そういう時代背景みたいな大きいことは置いといて、どうでもいいけど、赤穂浪士がなぜ火事装束を着てるかなんてディテイルについて、あれは内匠頭長矩の祖父である浅野内匠頭長直が大名火消の名人だったというところから来てんぢゃないか、なんてとこがおもしろかったりする。
コンテンツは以下のとおり。
1 火事装束の男たち
2 十郎と五郎
3 劇的な事件
4 宝永六年正月のこと
5 再び火事装束の男たち
6 祭としての反乱
コメント
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