原田俊治 1993年 サラブレッド血統センター
ここにあげていない本をなにか、と思って本棚を再検索してたんだが、わりと目に付くところに置いてたのに、長年さわってもいなかった本が、これ。
しかたないねえ、本ブログにおいては、生きている乗馬に比べて競走馬の本なんてのは扱いが低かったからねえ。
1970年出版の『世界の名馬』(これをブログ記事にしたのは、調べたら10年前の2010年だった…)の続編ってことになるが、とりあげられるのは必ずしも新しい馬ってわけではない。
なんたって、エクリプス出てきますからねえ、1764年生まれ、伝説の部類だもん、「Eclipse first,the rest nowhere.」1着エクリプス、その他は見えず。
私が好きなのは、やっぱ、キンツェムとかってことになる、1874年ハンガリー生まれの牝馬、生涯成績54戦54勝。
競走成績だけぢゃなく、汽車旅行が好きでさっさと貨車に乗り込んだとか、でもお気に入りの猫が見当たらないとパニックになって乗ろうとしなかったとか、自身の畑の麦と井戸の水ぢゃなきゃ見向きもしなかったとか、傍に寝ている厩務員に自分の馬衣をかけてやったとか、そういう逸話がいい。
しかし、今回きっちり読み返してないんだけど、パラパラとページめくってみただけで、やっぱおもしろいな、これ、個々の馬の話だけぢゃないから。
1865年にグラディアトゥールが史上二頭目の三冠を達成したときに、まだ三冠馬という言葉はなかったらしい、って話とか。
当時「トレブル・イベントを制した」と記載されてはいるが、トリプル・クラウン・レースって言葉は使われていなかったらしい、いつどこで使われ始めたのかはよくわからんが、どうも正式の用語ではないと。
ほかにも、1965年のダービー・凱旋門賞馬シーバードは、フランスで種牡馬生活をしていたが12歳の若さで腸閉塞で急死したんだけど、種馬場にも生まれた牧場にも埋葬されたんぢゃなくて、業者に引き渡されて食肉になったとか、読んだはずなのに忘れてた。
イギリスの関係者からは非難されたが、フランスではそういうことになることが多いとか、やっぱ馬の肉を食べる習慣があるかどうかの違いだという。
この話のおまけには、この世紀の名馬の死の二日後にはある剥製業者が法外な値段で頭だけを買い取ったんだけど、傷んでて使いものにならないとわかるや、その業者は腹を立てて頭を焼却炉の中に放り込んだ、っていうのがあるんだけど、はー。
イギリスやアメリカだったら、せめて骨だけは標本ということで残したかもしれないね。
(人間が何を食べて何を食べないのかについては、『食と文化の謎』が詳しい。)
コンテンツは以下のとおり。
二百年前の伝説の馬――エクリプス
永遠のヒーロー――レキシントン
ワーテルローの復讐――グラディアトゥール
空前絶後の記録 ハンガリーの奇跡――キンツェム
希代のスピード馬――ザテトラーク
戦時下の英雄――ゲインズボロー
古き良き時代の象徴――ブラウンジャック
レッド・テラー/赤毛の恐怖――ファーラップ
名門カルメットの寵児――サイテーション
南十字星の下に築いた王国――スターキングダム
灰色の幻影――ネイティヴダンサー
西のスワップスと競った東の英雄――ナシュア
さすらいの賞金王――ラウンドテーブル
世界を席巻した大種牡馬――ノーザンダンサー
世紀の名馬――シーバード
凱旋門賞の風雲児――ヴェイグリーノーブル
華麗に舞う35年ぶりの三冠馬――ニジンスキー
ターフにきらめく珊瑚礁――ミルリーフ
圧勝の連続、豪脚一閃!――ブリガディアジェラード
アメリカ生れのパリジェンヌ――アレフランス
ザ・ビッグ・レッド/赤毛の英雄――セクレタリアト
その日、悲劇は待っていた――ラフィアン
凱旋門は2度我を迎える――アレッジド
競馬は夢、金の卵を生む三冠馬――シアトルスルー
闘いは果てしなく――アファームド
ビバ!アメリカ――ジョンヘンリー
闇に消えたダービー馬――シャーガー