H.G.ウェルズ/石川年訳 昭和四十一年 角川文庫版
先週だったかな、古本屋の均一棚で見つけて、そういやぁ俺ってこれ読んだことなかったななんて思ってしまい、買ってみて、すぐ読んでみた。
ウエルズって、「透明人間」とか「宇宙戦争」とか子どもんときにいわゆる児童向け版で読んだっきりなんだよね。
タイムマシンの映画は2つとも見たな、大昔のと、わりと近年のやつと、そんときに、こんな話だっけ、いやそういえば俺原作読んでねえや、って気になってたりしたもんで。
タイム・トラヴェラーって呼ばれる科学者が、時間旅行をするマシンを発明して、未来に行って帰ってきたばかりだって、そこでの経験を客人たちに語るというおはなし。
行ってきた未来ってのが、ちっとやそっとの先ぢゃなくて、西暦802,701年ってのがぶっ飛んでる。
未来人は二種類になってて、最初みたのが美しい小人たち「エロイ」で、基本なんもしてないというか、しなきゃならないこと何もない世の中なので、知能とか退化してしまった模様。
これについては、
>僕らが見のがしがちな自然の法則のひとつは、人間の多面的な知的能力は、生活上の変化、危険、困難によってみがかれるものだということだ。環境と完全に調和した動物は、完全に機械と同じだ。習慣と本能が役に立たなくなったとき、はじめて、自然が知能を動員するのだ。変化も、変化の必要もないところでは、知能も生まれない。さまざまな困難や危険に立ち向かわなければならない動物だけが、知能を与えられるのだ。(p.104-105)
って書いてあるのが、まあ著者の意見になるんぢゃないかと。
だから科学を発達させたせいかどうか、とにかくあらゆる苦しいこと危ないことを克服しちゃったあとの世代は、ひ弱に退廃しちゃった生物になったと。
で、このエロイたちが暗闇を恐れるんだけど、それがどうしてかっていうと、もうひとつの人類が地下に住んでいて、白っぽい猿みたいな生物「モーロック」がいるからで、モーロックは光を嫌うんだけど、暗いところでは地上人たちに襲いかかってくる危険がある。
おそらくはモーロックは地上人のために地下で労働をさせられてた人々の末裔で、地上人みたいに知能が退化しきらなかったんだけど、地上からの食糧供給がうまく行きわたらなくなった結果、獰猛になっちゃったんぢゃないかというのが主人公の見立て。
ということで、主人公は80万年後の世界に行って、乗ってきたタイム・マシンをどっかに隠されてしまい、帰れないかもって危機になり大変な目にあうんだが、無事マシンをとりかえして帰ってきたっていうんだが、聴衆には信じられない。
証拠はポケットに入っていた、変わった花、植物学上どんな分類になるのか誰もわからない、不思議な白い花だけってのがいい。
この文庫は「他六篇」となっていて、ほかの収録作は以下のとおり。
「盗まれた細菌」
「深海潜航」
「新神経促進剤」
「みにくい原始人」
「奇跡を起こせた男」
「くぐり戸」