思い起こせば半年前、チームは「中国大会」を目標に動き出した。
その時点での可能性は男子も女子も1%程度だった。それでもみんなで目指す目標として掲げた。男子は11秒台が1人、12秒前半が1人、12秒中盤が2人、13秒後半が1人。女子は64秒9、67秒4、72秒5が2人。無理かもしれない目標だが、できると信じてやるしかない。
みんなで初詣に行き、絵馬に「みんなで中国大会に!」と書いた。誰かが強制したわけではなく、自然とそうなった。純粋な部分があってみんながそれを信じていた。だから「信」をチームのテーマに掲げ、「自分を信じる 仲間を信じる 未来を信じる」という言葉を書いてチームノートを始めた。
何度もすれ違った。kanekoの求めるものと選手の向かう方向が違っていた。時間をどのように使うかを何度も話した。気持ちが切り替えられないことで何度も怒られた。大事な練習の日の意味を見失ってしまう時もあった。逃げ道を知らず知らずのうちに作ってしまっていた。kaneko自身も「このままでいいのか…」と思う事があり、様々な方からアドバイスを頂いた。チームはその度に少しずつ前に進んでこれた。
厳しい練習だった。何度も逃げようと思ったんじゃないだろうか。乳酸の痛みと苦しさと毎日のように戦った…。質も量もかなりのものだった。かなりの時間をこのキツイ練習に使ってきた。
もう少しでシーズンインというある日、突然みなみが入院した…。あまりにも突然の出来事だった。「もう運動はできないかも…」という状態に置かれ「走れなかったらマネージャーになってみんなと中国を目指す」と言ってくれた。1週間の寝たきり生活を余儀なくされて、灯は消えかけた…。そんな中で残されたメンバーは「みなみの分まで」と一致団結した。女子だけでなく男子も「同じ3年生のために」と想って強くなった。男子はその気持ちが強くなりすぎてしまった感がある。必要以上に追い込んでしまいおーたは膝の痛みを悪化させ動けない日々が続いた。
みなみが退院した。少しだけなら運動しても良いと言われ、走ってみたら入院前と同じくらいで走れた。これもきっとみなみの「中国に行きたい」という気持ちが強かったからだと思う。
1年生が入って来て、練習は工業と一緒になった。男子は飛躍的に力が上がった。つぼうちは昨年に比べてスピードが鈍っていた。男子は全体的に調子が上がらない状態だった。おーたやいしべの気持ちの空回りが目立った…。それと同時期にともが体調を崩した。みなみと互角の力を出し始めていた矢先、持続力が一気に低下した。貧血検査を受けたが異常なし。理由が分からないまま少しずつの回復を期待するしかなかった。思った以上に1年生の2人が走れる事がわかった。
少しずつ調子が戻ってくるなかで地区大会を迎えた。結果は「中国」とは程遠い惨敗…。おーたは自分の走りが全く出来ず4位、いしべはレースミスで2位、みなみは自己ベストを更新するも8位で総体に進めなかった。男子4継は3位、女子のマイルは4位。厳しい現実が突き付けられた。
少し上がり調子になって県選手権を迎えて女子マイルで勝負をかけようと思った矢先、ハルが体調不良のため動けない状態になった。またトラブル…。急遽ともが走って4分22秒9のチームベスト。悪い中でも少し光が見えた。
最後の数週間は必死だった。テストもあったが各自が頑張れた。なかむらが女子の練習を引っ張ってくれた。自分のためではなくチームのために練習してくれた。それがチームをまとめてくれた。男子も飛躍的に調子を上げてきた。
そして総体を迎えた…。いしべは自分を見失ってしまった。それが全てのレース。その分4継にかける事ができた。おーたはきっとその気持ちを汲む事ができたんだと思う。動きがいきなり良くなった。綱渡りで決勝へ。そして最後の戦いで敗れた…。たった20cmだが大きな20cmだった…。涙が流れた…。止まらなかった。男子の気持ちを考えたら、いや、チームのみんなの気持ちを考えたら手に入れた瞬間に消えてしまった「中国」は大き過ぎた…。
でも男子は強かった。みんなの前で涙を見せなかった。自分達から女子に声をかけて盛り上げてくれた。本当に強くなった。
その気持ちが女子のマイルの準決勝につながった。全員が男子の悔しさを女子が力に変えた。4分11秒70の大幅なチームベスト。
可能性を大きくして決勝を目の前にしてまた神様は試練を与えた。おーまちが歩けない。目の前にある「中国」にまた試練が与えられた。
女子だけの目標ではなくなっていた「中国」。みんなの思いが通じた。おーまちが激走した。そして6位入賞。
男子の想いと女子の想いが重なって大きな力になった。チームで目指した目標が現実のものになった。全員涙が止まらなかった。
ドラマのような波乱が重なり、劇的な結末を迎えた。今のうちのメンバーがいたから届いた「中国」。
きっと全てのチームにオリジナルのドラマがあった。勝負出来る力がついてきたからここまでの涙を流せる。
まだ終わってない。目指すものは変わってもきっとやり残した事がある。それを感じているのは男子。女子はまだ全員が力を出し切っていない。全ての選手が力を出し切り4分10秒を切ろう。そして準決勝に進もう。夢であったインターハイを目標にするために、準決勝に進もう。みなみに1本でも多く今の仲間と気持ちを共有できる時間を与えよう。
まだ終わってない。やることはたくさんある。同じ方向を向ける幸せな時間をまた共に過ごそう。新しいドラマを作ろう。
その時点での可能性は男子も女子も1%程度だった。それでもみんなで目指す目標として掲げた。男子は11秒台が1人、12秒前半が1人、12秒中盤が2人、13秒後半が1人。女子は64秒9、67秒4、72秒5が2人。無理かもしれない目標だが、できると信じてやるしかない。
みんなで初詣に行き、絵馬に「みんなで中国大会に!」と書いた。誰かが強制したわけではなく、自然とそうなった。純粋な部分があってみんながそれを信じていた。だから「信」をチームのテーマに掲げ、「自分を信じる 仲間を信じる 未来を信じる」という言葉を書いてチームノートを始めた。
何度もすれ違った。kanekoの求めるものと選手の向かう方向が違っていた。時間をどのように使うかを何度も話した。気持ちが切り替えられないことで何度も怒られた。大事な練習の日の意味を見失ってしまう時もあった。逃げ道を知らず知らずのうちに作ってしまっていた。kaneko自身も「このままでいいのか…」と思う事があり、様々な方からアドバイスを頂いた。チームはその度に少しずつ前に進んでこれた。
厳しい練習だった。何度も逃げようと思ったんじゃないだろうか。乳酸の痛みと苦しさと毎日のように戦った…。質も量もかなりのものだった。かなりの時間をこのキツイ練習に使ってきた。
もう少しでシーズンインというある日、突然みなみが入院した…。あまりにも突然の出来事だった。「もう運動はできないかも…」という状態に置かれ「走れなかったらマネージャーになってみんなと中国を目指す」と言ってくれた。1週間の寝たきり生活を余儀なくされて、灯は消えかけた…。そんな中で残されたメンバーは「みなみの分まで」と一致団結した。女子だけでなく男子も「同じ3年生のために」と想って強くなった。男子はその気持ちが強くなりすぎてしまった感がある。必要以上に追い込んでしまいおーたは膝の痛みを悪化させ動けない日々が続いた。
みなみが退院した。少しだけなら運動しても良いと言われ、走ってみたら入院前と同じくらいで走れた。これもきっとみなみの「中国に行きたい」という気持ちが強かったからだと思う。
1年生が入って来て、練習は工業と一緒になった。男子は飛躍的に力が上がった。つぼうちは昨年に比べてスピードが鈍っていた。男子は全体的に調子が上がらない状態だった。おーたやいしべの気持ちの空回りが目立った…。それと同時期にともが体調を崩した。みなみと互角の力を出し始めていた矢先、持続力が一気に低下した。貧血検査を受けたが異常なし。理由が分からないまま少しずつの回復を期待するしかなかった。思った以上に1年生の2人が走れる事がわかった。
少しずつ調子が戻ってくるなかで地区大会を迎えた。結果は「中国」とは程遠い惨敗…。おーたは自分の走りが全く出来ず4位、いしべはレースミスで2位、みなみは自己ベストを更新するも8位で総体に進めなかった。男子4継は3位、女子のマイルは4位。厳しい現実が突き付けられた。
少し上がり調子になって県選手権を迎えて女子マイルで勝負をかけようと思った矢先、ハルが体調不良のため動けない状態になった。またトラブル…。急遽ともが走って4分22秒9のチームベスト。悪い中でも少し光が見えた。
最後の数週間は必死だった。テストもあったが各自が頑張れた。なかむらが女子の練習を引っ張ってくれた。自分のためではなくチームのために練習してくれた。それがチームをまとめてくれた。男子も飛躍的に調子を上げてきた。
そして総体を迎えた…。いしべは自分を見失ってしまった。それが全てのレース。その分4継にかける事ができた。おーたはきっとその気持ちを汲む事ができたんだと思う。動きがいきなり良くなった。綱渡りで決勝へ。そして最後の戦いで敗れた…。たった20cmだが大きな20cmだった…。涙が流れた…。止まらなかった。男子の気持ちを考えたら、いや、チームのみんなの気持ちを考えたら手に入れた瞬間に消えてしまった「中国」は大き過ぎた…。
でも男子は強かった。みんなの前で涙を見せなかった。自分達から女子に声をかけて盛り上げてくれた。本当に強くなった。
その気持ちが女子のマイルの準決勝につながった。全員が男子の悔しさを女子が力に変えた。4分11秒70の大幅なチームベスト。
可能性を大きくして決勝を目の前にしてまた神様は試練を与えた。おーまちが歩けない。目の前にある「中国」にまた試練が与えられた。
女子だけの目標ではなくなっていた「中国」。みんなの思いが通じた。おーまちが激走した。そして6位入賞。
男子の想いと女子の想いが重なって大きな力になった。チームで目指した目標が現実のものになった。全員涙が止まらなかった。
ドラマのような波乱が重なり、劇的な結末を迎えた。今のうちのメンバーがいたから届いた「中国」。
きっと全てのチームにオリジナルのドラマがあった。勝負出来る力がついてきたからここまでの涙を流せる。
まだ終わってない。目指すものは変わってもきっとやり残した事がある。それを感じているのは男子。女子はまだ全員が力を出し切っていない。全ての選手が力を出し切り4分10秒を切ろう。そして準決勝に進もう。夢であったインターハイを目標にするために、準決勝に進もう。みなみに1本でも多く今の仲間と気持ちを共有できる時間を与えよう。
まだ終わってない。やることはたくさんある。同じ方向を向ける幸せな時間をまた共に過ごそう。新しいドラマを作ろう。