こんにちは。塾長の鴨志田栄子です。
まもなく、独立して15年を終えようとしています。あっというまの15年でしたが、振りかえると、中小企業の社長さん方から学ぶことが多かったように思います。その中から、今日は、2人の社長さんについて取り上げてみます。
1.社長さんと二人三脚の販路開拓
販路開拓アドバイザーとして活動をしていたとき、ある社長さんから、新しく開発自社商品を都内のT店で売りたいという依頼がありました。
私にとって、商品を持って商談に出かけるのは初めての経験でした。まず、T店舗にどうやってコンタクトをとるか? それまでの私の人的ネットワークを伝手に、各店舗の売り場の担当者を紹介してもらえたのです。それからは、裏口から入店し、バッグヤードで立ち話での商談が始まりました。店舗から都度もらう宿題をすぐに社長に連絡をして、何度か通っているうちに、ついに、口座開設までこぎつけました。そして、社長にも上京してもらい、店舗にあいさつに一緒に行きました。業者専用の入り口で来訪者名簿にいつもは、私の名前を書いていたのですが、今日は、社長をたてて、社長の名前を書き始めたら、社長が、後ろから、私の頭を軽く小突きました。「何書いてんだ! 俺の会社の名前を書いたら、ライバル社にばれるだろう」と……。営業マンとして気配り・目配り・心配りがまだまだ足りない自分に気づかされましたが、10年以上経過した今でも、忘れられない出来事です。
その後、この社長さんとは、いろいろなところに販路開拓に出かけました。上京される前夜、「○○会社知ってる?」と短いメールが届きます。まったく知らない会社ですが、ネットで会社概要を調べ、翌日、時間を見つけて「ここから近くにあるので、行ってみませんか?」と、アポなしで訪問したことがありました。結果は、新規取引につながりました。新米独立診断士の時代の懐かしい思い出とともに、フットワークとは何かを教わった気がします。
2.尊敬する社長さんの人としての深み
つい最近、中小企業診断士の実務補習で、大学時代の先輩が社長をされている会社にお世話になりました。大学時代からよく知っているだけに、ここまで会社を大きくしてこられた過程は、それなりのご苦労が沢山あったはずと心底実感。いつも笑顔でおおらかなお人柄だけに、そのようなご苦労は、表には出てきません。
独立して15年が経過しますが、何人もの中小企業の社長さんとお会いしてきましたが、日本を支えている中小企業の社長さんとお話をしていると、その深みを最近になって、ようやく受け止められるようになりました。
今回、実務補習の最後に、中小企業の社長と向き合う上で大切なことは何かと実習生に問いかけてみました。「社長が言われていることをよく理解する」「社長の想いを受け止める」などの答えが戻ってきました。それも正しいです。でも、私からは、その他に「企業の沿革をただ文字として綴るのではなく、その過程で、社長がどのようなご苦労をされてこられたのだろうか?という想像をめぐらし、このような意識を持って、企業と向き合うことが大事である」と伝えました。短時間でのヒアリングを通じた表面的な会社の現状だけを鵜呑みにせずに、時代背景をさかのぼりながら、そういう時代とともに会社を大きくしてきた過程を眺めていくことで、妥当性のある提言につなげられるのではないでしょぅか?
中小企業の社長さんは、社員とそのご家族を背負っています。その覚悟は、並大抵のものではありません。私たち中小企業診断士も独立して働くということは、その覚悟が求められることを、15年が経過し、やっと人に伝えられるようになりしまた。これまで、多くの社長さんとお会いしてきましたが、尊敬する社長さんたちに共通していることは、お話をしていると奥の深さを感じる方が圧倒的に多いということです。人としての深さ、懐の深さ、心の大きさ、自分も身につけていきたいと思うこの頃です。