16期生田代です。今回はピーター・ドラッカー教授からの学びとライザップの事業について述べさせていただきます。
マネジメントの父、マーケティングの祖父とも呼ばれるドラッカー教授、その著書は何十年も前に書かれたものですが、いずれも経営の本質を突いており、経営関連書籍の定番となっています。私が初めてそれらを手に取ったのは今から何年も前のことになりますが、その当時はあまりよく理解できなかったように記憶しています。
ドラッカー教授は著書において「あらゆる組織が、自らの事業についての定義を持たなければならない。」(チェンジ・リーダーの条件p.48)といい、「事業とは、市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである。」(創造する経営者p.144)と述べています。
これは最近手に取った「実践するドラッカー(事業編)」という佐藤等氏によるドラッカー関連書籍の編著からの引用です。なかなか「すうっと」頭に入ってきづらい文章ですが、佐藤氏の著書の中でわかりやすく説明がなされています。私自身は、「事業とは、人間の知識をフルに活用して、顧客に求められる価値を生み出す仕組みを構築すること」と理解しました。
「事業の定義は3つの要素からなる。第1は組織を取り巻く環境である。(中略)第2は組織の使命すなわち目的である。(中略)第3はそのような使命を達成するために必要な強みについての前提である。」(チェンジ・リーダーの条件p.53)
これらは自分たちが関わる事業において、①外部環境の変化に適合しているか(顧客が求めているか)、②その事業は我々が為すべきことか(社会的価値があるか)、③我々の強みに基づく事業であるか、という上記の3要素を満たしていることをいつも確認することが必要ということである思います。
さて、フィットネスジムのライザップ、一時期に大量に流されていたCMでみなさんご存知と思います。そのライザップが積極的なM&Aによる多角化を進めており、先日はカジュアル衣料専門店のジーンズメイトの買収を発表しました。衣料品事業以外にもゴルフ教室や英会話教室など、ジムとは一見関係のなさそうな事業もすでに始めています。
ゴルフや英会話の場合は、頼もしいコーチが励ましてくれることで挫折を防ぎ、成果を実感できるまで継続させることでモチベーションが高まり、さらに継続したくなるという好循環が想像でき、フィットネスジムのビジネスモデルの応用であると思います。しかし、衣料品事業はどのようなシナジー効果があるのでしょうか?
ライザップの瀬戸健社長によると、これらの事業は「自分への投資」というキーワードでつながっているそうです。自己研鑽に目覚めた顧客の消費意欲は一般消費者よりも高く、そこに求められる商品開発や品揃えをすることで消費を促すことが狙いのようです。元々は健康食品の通信販売から始まったライザップ(設立当初の名称は健康コーポレーション)は、昨年、婦人服や補整下着の会社も買収しました。今期業績予想は売上高1,000億円、4年後には3倍の3,000億円を達成するために、更なる多角化を進める計画です。
先行きの見通しが難しい近年において、何かに頼るのでなく自分への投資を強める消費者、そして実際に目に見える成果を出させることで期待に応えるライザップ、美容と健康分野に絞り込んだ戦略、ライザップの事業展開は、ドラッカーの事業定義の3要素を満たしているようにも見えます。「結果にコミットする」というコンセプトは、フィットネスジム以外の領域でも顧客の信頼を集め、成功するのか、今後も注目していきたいと思います。