こんにちは、事務局(23期生)の曽我です。今回は、障害者雇用について書きたいと思います。以前のブログでも障害者の雇用状況を取り上げましたが、最近の状況と新しく知った制度について書きたいと思います。
従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。民間企業の法定雇用率は2024年年4月に2.3%から2.5%に引き上げられました。さらに2026年7月には2.7%に引き上げられる予定です。
厚生労働省発表の2024年の障害者雇用状況の集計結果によると、障害者の実雇用率は、常用労働者数が40.0~43.5人未満規模の企業では2.10%、43.5~100人未満で1.95%、100~300人未満で2.19%、300~500人未満で2.29%、500~1,000人未満で2.48%、1,000人以上で2.64%となっています。法定雇用率を上回っているのは、1,000人以上の規模の企業のみで、1,000人未満の規模の企業にとって、障害者雇用を増やすことの難しさが見えてきます。
障害者雇用に関して、「特例子会社制度」というものをご存じでしょうか。特例子会社制度は、親会社が一定の条件を満たす子会社を設立し、障害者を雇用することで、その子会社で雇用された障害者を親会社の障害者雇用率に算入できる仕組みです。特例子会社は、障害者に合わせて設備や制度を整え、また障害者が占める割合も一般の企業より高くなります。業務内容も定型業務が中心で、チーム単位でこなす分業型の場合が多いです。障害に対する配慮も一般企業より手厚いことから、定着率が高い傾向にあります。この制度を活用している大手企業は多く、2024年6月現在、614社の特例子会社が存在します。しかしながら、特例子会社制度の要件をクリアするには、中小企業の中でも一定以上の規模が無いと厳しく、大半の中小企業では活用が難しい状況です。
最近、「事業協同組合等算定特例」という制度があることを知りました。この制度は、中小企業が事業協同組合などを活用して共同事業を行い、一定の要件を満たした場合に、厚生労働大臣の認定を受けることで利用できます。この認定を受けた場合、事業協同組合とその組合員である中小企業(特定事業主)の障害者雇用率を通算することが可能になります。例えば、特定事業主Aは障害者が2人不足し、特定事業主Bは1人不足しているとします。AとBが認定された事業協同組合に加入し、組合内の障害者福祉事業者から商品やサービスを定期的に発注することで、障害者雇用を新たに生み出すことができます。組合全体で障害者雇用率を通算して計算できるので、福祉事業者で3人分の雇用余剰が生まれれば、その分をAとBの不足分に充当できるため、AとBは法定雇用率を達成できるのです。
先日、この制度で認定を受けている「ウィズダイバーシティ有限責任事業組合(LLP)」の発起人であり、組合の中核企業である株式会社ローランズ 代表取締役の福寿 満希さんの講演を聞く機会がありました。この組合は、中小企業と障害福祉事業者が連携し、障害者雇用を一緒に増やすことを目指しています。2024年7月現在、14社が参加しています。
この組合の参加企業は、障害福祉事業者に一定額以上の業務を発注し、その発注を通じて新たな障害者雇用を生み出しています。企業はその対価として成果物(商品やサービス)を受け取るだけでなく、共同で障害者雇用を推進していることから、法定雇用率を満たしつつ、障害者雇用促進事業にも参加できます。これまでにウィズダイバーシティを通じて創出された新たな障害者雇用は24人にのぼり、組合全体の実雇用率は7.51%(2024年7月時点)となっています。
ウィズダイバーシティの素晴らしいところは、この組合で通算して障害者の法定雇用率を守るだけにとどまらず、福祉的サポートなしで一般企業で働ける障害者を増やすことを目指しているところです。2019年の組合設立からこれまでに32人が一般企業に就職しました。それを可能にした要因は、福祉事業所でサポートを受けながら、企業から発注された多様な案件に取り組むことで経験を積みスキルを伸ばせるからです。中小企業1社では事務や清掃など仕事が限られがちですが、ウィズダイバーシティでは60種類以上(花のアレンジメント、植栽の管理、ケータリングなど)の様々な業務があり、障害者が自分に合った仕事に出会えます。その結果、多くの参加者が自信をつけて一般就労(直接雇用)へ移行できるのです。またウィズダイバーシティの中では、今まで障害者雇用の実情を知らなかった方も障害者が働く現場や成果を見ることで、障害者雇用への不安が軽減され、自社雇用を増やす企業も出てきたそうです。
「事業協同組合等算定特例」という制度は、制度や手続きがやや理解しづらいのが難点ですが、中小企業1社単独では難しい障害者雇用を増やしていくきっかけになってほしいと願っています。ウィズダイバーシティの取り組みを今後も応援していきたいです。
先日、人を大切にする経営研究会で、株式会社こんの 紺野代表取締役社長のZoom講演があり、障がい者雇用について「特別扱いはしないし給与体系も同じ。それが自然な流れ。おかげで社内の雰囲気も良くなった。」とのお話があり感動しました。得意不得意は誰しもあって、それを見出し、活かすのが経営者なんだなと思いました。私もこの分野、掘り下げてみたくなりました。またいろいろ教えて下さい。
ウィズダイバーシティのように多様な職業に出会える組合制度が広がり、多くの企業で活用できたらと思いました。