蝶人物見遊山記第369回&鎌倉ちょっと不思議な物語第446回
「風景の音 音の風景」という副題がついたこの展覧の主役は、70年代の初めから環境音楽家として活躍した吉村弘(1940~2003)である。
会場では、五線譜がうねって海や空や鳥になってしまう図形楽譜やラジオ放送録音、タージマハール旅行団とのコラボレーションなどの、多面的な活動がレポートされているが、なんというてもその中心は、エリック・サティの「家具の音楽」の影響を受けた、数多くの施設会場で使われている環境音楽作品で、わいらあ、それらを映像と共に楽しく鑑賞できました。
吉村選手は、この鎌倉館とお隣の葉山館の館内音楽も作っているのだが、それは会場の開始と終了時点でしか聞けない、というので、「なんと勿体ない、アホらしい話かあ!」と、絶句した。
ちなみにわが鎌倉駅では、以前は「七里ガ浜の磯つたい」で始まる文部省唱歌「鎌倉」をフルートで放送していたのだが、いま、電車の発着時に耳を弄せんばかりの音量でけたたましく鳴り響いているのは、どこかで誰かが録音してきた野鳥の鳴き声だ。
この気狂いじみた騒音放送が終わると、線路の近くで飛んでいるスズメやツバメや時々はウグイスの本物の鳴き声が聴こえてくるのだが、はたしてこの駅の駅長や職員は、そのことを知っているのだろうか? きっと、耳に栓でもしているに違いない。
なお本展は9月3日まで同館でひっそり開催ちう。
「お父さん大好きですお」と言うだけの息子の電話が33本 蝶人