テルヒ・エーケボム著・稲垣美晴訳「おばけのこ」を読んで
照る日曇る日 第1910回
フィンランドの作家に拠る不思議な童話絵本。こころに痛手を負うたひとりの女性が人跡稀な森の中の隠れ家に暮らし始めると、いくつもの怪異な現象が起こる。
その森に遺棄された死体の亡霊たちは、成仏するために一条の光を求めてさまっているのだが、主人公はその手伝いをしているうちに、亡くした自分の子供のような亡霊と知り会い、共に暮らすようになる。
失われた時空を取り戻そうとあがく魂が繊細な感覚で描きだす、現代人の孤独の世界だ。
名も知らぬ黄色い花にとまろうかそれともよすかとキチョウは迷う 蝶人