蝶人物見遊山記第370回&鎌倉ちょっと不思議な物語第447回&闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3333
土曜日の午後、梅雨の晴れ間に開かれた映画鑑賞会に出かけてヴィム・ヴェンダース監督の「東京画」を見物し、その後の川喜多和子さんを偲ぶトークショーに出演された映画評論家の齋藤敦子さんと対面することができました。
齋藤さんはカンヌ映画祭とヒマラヤ登山の常連の優れた映画評論家であり、小説、戯曲等の翻訳家であり、ケン・ローチやキアロスタミ監督等数多くの映画の字幕製作者として著名な実力者ですが、むかし川喜多和子さんが宣伝部長を務める柴田駿社長のフランス映画社のスタッフだったのです。
思えば、今を去る1985年の大昔、柴田社長の厳命を受けた齋藤選手が、リーマン時代の私のデスクに「ゴダールのテレビCMを撮ったって本当?」という電話をかけてきたときこそ、我々の運命的な出会い?の瞬間でありました。
それはさて措き、ヴィム選手が崇拝する小津安二郎監督へのオマージュとして捧げられたドキュメンタリー映画「東京画」は、「東京物語」のタイトルから始まり、尾道のあの感動的なラストシーンで終わりますが、その実質は1983年に撮影され、1985年に完成したヴェンダース監督手作りの東京旅日記です。
そこには初代の新幹線、パチンコに嵌ったリーマン、ゴルフ場で練習する旧OL、代々木公園のローラー族などが、今は亡き亡霊のように立ち迷いながらコラージュされ、おらっち、その懐かしさと虚しさに、胸を衝かれるような思いが致しました。
さはさりながら、全篇を通じてもっとも感動的だったのは、小津映画とほぼ全航路工程を共にした名カメラマン厚田雄春の思い出噺で、私は彼の「小津命」の純情に、思わず涙したことでした。
「コウさんによろしくね」とサイトウさん コウ君も有名になったね 蝶人