あまでうす日記

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川本三郎著「ひとり遊びぞ我はまされる」を読んで

2023-06-08 10:50:09 | Weblog

川本三郎著「ひとり遊びぞ我はまされる」を読んで

 

照る日曇る日 第1907回

 

雑誌「東京人」の最近の連載を1冊に纏めたものだが、時々面白い話柄にぶつかる。

 

著者がコロナ謹慎の徒然に米国の映画監督キング・ヴィダーのDVD10枚組を買ったら、その中に1932年の「シナラ」(原作は、ロバート・ゴーア・ブラウンの手になる小説「不完全な恋人」と同名のお芝居)があった。

 

倫敦に住む愛妻家の弁護士トナルド・コールマンが妻がヴェネチアに旅行中に知りあった若い女性フィリス・バリーと深い仲になり、板挟みになって苦悩するという映画だが、本邦では昭和8年に公開された。

 

私も敬愛する映画評論家の双葉十三郎氏が激賞したそうなので、私も改めって再見してみたが、それほどの名作とは思えなかった。

 

それはともかく、作者の筆は、当然この映画の題名「シナラ」から、映画の冒頭で引用されている英国の詩人アーネスト・ダウスンの同名の詩に及び、マーガレット・ミッチェルの小説そして映画の題名「Gone With the Wind」が、その詩から採られていると指摘する。

 

それからさらに作者の筆は進んで、我が国に原作者のダウスンを紹介し、小泉八雲作品集の編纂でも有名な英文学者の平井呈一について言及する。

 

平井選手は、作者の(そして私の)敬愛する永井荷風の名を騙った偽作を古本屋に売って怒りをかって短編「来訪者」で断罪されたが、その平井呈一をモデルにした小説「断弦」を書いた芥川賞作家の岡松和夫は、生前我が家のすぐ近所に住んでおり、2012年の岡松選手の死後、寡婦となった上品な老婦人(旧名瀬山梅子)とは、よく十二所のバス停で顔を合わせたが、彼女こそは平井呈一の姪なのであった。

 

   死ぬまでに読むべき本のリストなどどこかに忘れて別の本読む 蝶人

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