游珮芸脚本・周見信画・倉元知明訳「台湾の少年3 戒厳令下の編集者」を読んで
照る日曇る日 第1916回
いわれなき弾圧でおよそ10年間、白色テロの弾圧によって、政治思想犯収容所の緑島の生活を余儀なくされていた1930年生まれの主人公、蔡焜霖が、1960年ようやくシャバに出てきて、獅子奮迅の大活躍を演じる、60年9月から69年末までの暮らしぶりを活写している。
この「失われた10年」を取り戻すべく、われらが主人公は、まず日本製の漫画の翻訳と編集を手掛けた後に児童雑誌「東方少年」で働き、ついで漫画専門の出版社「文昌出版」を立ち上げ、その名を台湾中に知られるようになりますが、いったんスパイの嫌疑をかけられた蔡焜霖への当局の監視と干渉が止むことはありませんでした。
ついに漫画の検閲を開始した当局に抗すべく、主人公は講談社や小学館の学習雑誌を手本に漫画の比重が少ない隔週週刊誌「王子」を発売し、空前のベストセラーとなる。
それはある意味では、少年時代から国家権力に徹底的に抑圧された蔡焜霖の、ささやかな反撃であったともいえるだろう。
わが歌集を奥村晃作さんに読んでもらえこんなにうれしいことはなかった 蝶人