町田康編・井上ひさし歌詞集「だけどぼくらはくじけない」を読んで
照る日曇る日 第1909回
素晴らしい戯曲を遺してくれた井上ひさしの歌の数々をスクープした落ち穂拾い集である。
その冒頭は、あの懐かしい「ひよっこりひょうたん島」。この歌には多少の思い入れがある。今から半世紀以上も大昔、おらっちは大学時代に内幸町時代のNHKでの美術部の道具係のアルバイトをしていたのだが、その時に「ひよっこりひょうたん島」のセットも担当していたのである。NHKの泊まりがけのバイトの身入りは抜群に良く、おらっちはここで夕方まで働いてから当時真夜中に突貫工事をしていた法務省の701号法廷の建設現場のセメント担ぎの掛け持ち肉体労働もやりながら早朝まで働き、高田馬場駅で餡パンと牛乳の朝食を摂ってから西武線の東伏見の安アパートに戻って昼過ぎまで眠る毎日でしたね。
さて急いで本書に戻ると、奇想天外、規模雄大なる「吉里吉里甚句」の物騙りも面白いが、「吉里吉里国歌」はもっと面白く、今すぐ「君が代」に取って変らせたいほどの出来栄えである。
吉里吉里人は眼はァ静かで 鼻筋と心はァ真っ直ぐで 顎と志はァ堅くて 唇と礼儀は
ァ厚えんだちゃ
吉里吉里人は眼はァ澄んで居で 頬ペたと夢はァ膨れでで 男性器と望みはァ大きくて
女性器と思慮は練れでえんだちゃ (引用終わり)
持たないでまでどこまで行けるかマイナカードあまりに些細なレジスタンスとして 蝶人