錦秋特別公演2023 「女伊達」「桑名浦乙姫浦島」 (10月13日・刈谷市総合文化センター「アイリス」 大ホール)
秋の中村屋の巡業「錦秋特別公演2023」で刈谷市総合文化センター「アイリス」へ。こちらの施設への訪問は初めてのはず。やっと過ごしやすい季節になり、歩いていても快適。金木犀の香りが漂う市内をウロウロと散策した後に会場へ。さすが中村屋、客入りは上々。2回公演でどちらもほぼ満席のようだ。
まずはトークコーナー。兄弟2人が登壇し、司会者を交えてざっくばらんなお話。勘九郎が中日ファンになったとは知らなかった(ご愁傷さま…)。ちなみに七之助は阪神ファンらしい。名古屋の話になって「御園座」の不甲斐無さを熱弁するのが印象に残った。確かに中村屋は名古屋に縁があるにも関わらず(初代中村屋は名古屋の中村区出身)2人を呼んだのは今年4月になってやっと初めてだったし、名古屋駅を降りてもポスターも何も無く、歌舞伎をやっているかどうかも全然分からないと。これは本当にその通りだと思う。伏見を通っても、御園座周りだけで全然”祭り”になっていないものなァ。御園座の客入りは悪いらしいが、さもありなんといった感じ。
次は舞踊の「女伊達」。主演の鶴松は一般人から部屋子になった、この世界では珍しい役者。それでも最近は歌舞伎座で主役を演じたりと活躍がめざましい。濃い血が何よりも物を言うこの世界で、猿之助のああいう事が起きたりすると、今後はこういう役者も増えていくのかもしれない。背の高くない鶴松の演じる女伊達が、男伊達との対比で強く強調されていい感じ。鶴松の女形は初めて観たかもしれないが、顔立ちとかからは意外にも線の細い感じではないんだな。
最後は勘九郎演じる浦島太郎と、七之助演じる乙姫の「桑名浦乙姫浦島」。こちらも舞踊だが、誰でも知っている浦島太郎の話。舞踊としては156年振りに演じられるのだとか。もちろん音楽や衣装の資料が残っていないので新作のように作り上げたらしい。シュッとした浦島太郎と美麗な乙姫の品のある舞い。竜宮城での踊りには”鯛やひらめの~”という訳で、鯛、平目、蛸が出てくるのだが、これはもう完全に笑わせにかかっていて、アクの強いこと、強いこと。特に一門のいてう(いちょう)のタコと、澤村國久の鯛は衣装も舞いも独創的過ぎて、浦島や乙姫の姿や舞いが頭に入ってこない。卑怯だなァ(笑)。お馴染みの話だけれどお笑いになるとは思っていなくてそれだけで楽しめた。
公演が終了した帰り道。刈谷駅のコンコースを歩いていると人だかりで歓声が上がった。ふと見ると七之助が。え、名鉄で帰るの?
1、トークコーナー
中村 勘九郎
中村 七之助
2、女伊達 長唄囃子連中
女伊達 中村 鶴松
男伊達 中村 仲助
男伊達 中村 仲侍
河竹黙阿弥 作
竹柴徳太朗 補綴
杵屋五吉郎 作曲
田中佐 幸 作調
中村梅 彌 振付
天日坊五十三次より
3、桑名浦乙姫浦島 長唄囃子連中
百五十六年ぶりの復活舞踊劇
浦島 中村 勘九郎
乙姫 中村 七之助
鯛 澤村 國 久
蛸 中村 いてう
平目 中村 仲四郎
官女 中村 仲之助
官女 中村 仲 弥