ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

坂東玉三郎特別公演「口上」「壇浦兜軍記・阿古屋」「石橋」 @名古屋市・御園座

2021年10月12日 | 歌舞伎・文楽

坂東玉三郎特別公演「口上」「壇浦兜軍記・阿古屋」「石橋」 (10月6日・御園座)

とうとう玉三郎を観る機会が訪れた。今まで結構な数の歌舞伎観劇をしているが、どうしても坂東玉三郎の(舞踊以外の)舞台を観る機会が一度も訪れず、ひょっとしてこのまま…なんて危惧をしていた。そこに追い打ちをかけるようにコロナ禍が。歌舞伎公演の数自体が減ってしまい、地方に居る身としては待っているしか術がない。なので御園座で玉三郎の公演、しかも女形で一番の難役「阿古屋(あこや)」を演ると知って驚いた。老母は一度観たことがあるらしいが、その時はおかみさん役だったとかで華やかな衣装の玉三郎は観たことが無いとのこと。母の分のチケットも購入して公演日を待った。

母を連れて御園座入り。会場に入ってびっくりしたが、ひとつ置きの座席ではなく普通に全席に客を入れていた。まだ緊急事態宣言が解除されて6日目なので当初からそうする予定だったのだろうが、ご高齢の方の中には構わずおしゃべりする人も居るのでこちらもヒヤヒヤ。

まずは「口上」。玉三郎と、成駒屋の3兄弟、橋之助、福之助、歌之助が順に挨拶。玉三郎がここ御園座で1ヵ月の長期公演をするのは23年ぶりなのだとか。なるほど観られないはずだ。通常は挨拶のみで終わるのだが今回は趣向が異なり、挨拶の後、玉三郎が舞台に残って過去に使った衣装を3点お披露目するという。その衣装を使った経緯などの説明をしながら豪華で鮮やかな衣装が披露された。玉三郎が衣装を身につける度に客席からは「わぁ…。」というため息ともつかない声が沸き起こる。これはいい企画だ。

幕間を挟んでとうとう「阿古屋」の上演。”傾城(けいせい)”という遊女の最高位である阿古屋(あこや)が、追われている夫の居場所を詮議され3つの楽器の演奏を命令されるのだが、それを実際に役者が舞台上で演奏するという、女形ではもっとも難役とされる演目だ。舞台上で話が展開していく訳ではなく、その場面での心情を表現する演目なので、当然注目は玉三郎の演奏に集まる。そんな「さあ弾け」という状態で次々と3つの楽器(琴、三味線、胡弓)を生演奏するなんて、どれだけ恐ろしいことだろう。和楽器なのでどの楽器も弾く直前に舞台上で調子を合わせなければいけないし、しかも傾城だから打掛(うちかけ)や俎板帯(まないたおび)という(演奏に邪魔な)衣装を着たままというハンディキャップ付きだ。まさに至芸。眼福。その他にも自分は舞台で福之助が演じた岩永左衛門が、おそらく文楽からだろう人形の体(てい)で糸に操られたようにカクカクと面白可笑しく動く演出を残しているのもとても興味深かった。なぜ1人だけ? 

「石橋(しゃっきょう)」は歌舞伎ではお馴染みのいわゆる”獅子物”と呼ばれる舞踊。自分も「春興鏡獅子」「英執着獅子」「連獅子」などという演目で観たことがある。今回の見どころはは何といっても三兄弟の揃い踏み。息を合わせて若々しく毛振りする。長い時間、頭をぐるんぐるんと回し続けるので若ければ若いほどいいかというとそうでないのが歌舞伎の芸の難しさ。終盤になると歌之助は兄2人からだんだんと遅れてしまっている。でもまだ舞台は始まったばかり。これも一か月演じ続けるとどんどん上手くなっていくのだろう。都合で妻は日にちを変えて後から1人で観に行く予定だが、その頃にはどうなっているのかな(→後日談・実際妻が観た時には上手くやれていたらしい)。

 


 

一、口上(こうじょう)

坂東 玉三郎

 

二、壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)

阿古屋

遊君阿古屋          坂東 玉三郎
秩父庄司重忠        中村 橋之助
岩永左衛門          中村 福之助
榛沢六郎            中村 歌之助

 

三、石橋(しゃっきょう)

獅子の精          中村 橋之助
獅子の精          中村 福之助
獅子の精          中村 歌之助

 


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